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助けて、逃げられ、追いかけて

 地図を持ったリンゴの先導でカノンたちはミネラ・ミコー(不思議な鉱山)に向かっていた。ユースティティア盗賊団はミネラミコーでの活動が最も多いと署長さんが言っていたからだ。途中、スライムやアルバウォルフに遭い、撃退しつつ進んでいた。

「盗賊団のくせにユースティティア(正義)ってなんなんだよ。良いやつらなのか、悪いやつらなのかはっきりしろよ。」

 とグリコは言ってるが、ユースティティアが正義の意味を持つことは当然リンゴからの受け売りだ。

 ユースティティア盗賊団は人数構成不明、目的不明という警察の能力を疑うような情報ばかりだった。わかっていることはミネラミコーでの活動が多いこと、4~5年前から活動していること、盗まれた後にユースティティア盗賊団とわかるカードが残されていることだけだった。グリコとリンゴの金貨袋を下げていたあたりにユースティティア盗賊団のカードが挟まっていたことが警察署に捕らえられた時に発覚したので、盗賊団が特定できたのだ。

「ミネラミコーってわかってるなら見つけるの楽だよね。」

 右手の中指に着けた指輪を眺めながらカノンは明るく言う。しかし、

「うちらで簡単に見つけられるようなら警察が見つけてるよ。」

 リンゴが苦笑いしながら言う。ミネラミコーと場所が限定されてはいるが、特定しているわけではない。あくまでミネラミコーでの活動が多いからそこにいるだろうという推測だ。

「大丈夫!すぐ見つかるよ!」

 なぜか自信満々にカノンは言う。

「えつ、カノン、まさかまだ危ないアクセサリー持ってるの?」

「カノン、その指輪本当にスージーさんから受け取ったものだよな?」

 本気で心配そうに聞いてくる2人にカノンは慌てる。まさかスージーさんも偽物つかまされてたとかなんとかグリコとリンゴは話し出す。

「いつも通りだよ!信じてよー。」

 カノンをからかい、笑いながら2時間半ほど歩き、一行は目的地に到着した。



「ここがミネラミコーか〜。なんだかノーステラとはぜんぜん雰囲気が違うね。」

 門の前でカノンが言う。ノーステラは人々が明るく、賑やかだったのに対し、ミネラミコーは工業町のように殺伐としており、建物から上がる煙や機械の音で賑やかな街だった。

「じゃあ、中に入ろうか。」

 リンゴが言って、中に入ろうとするのをグリコが止めた。

「おい、あれ。」

 グリコの指差す方を見ると鳥のような魔物たちがギャーギャー喚きながら舞っている。微かだが、人の悲鳴も聞こえるようだ。

「子どもが2人、襲われてる!」

 カノンがそう言って駆け出す。

「やっぱりか!」

 グリコもカノンに続いて走り出す。

「えっ、嘘?!待ってー。」

 リンゴも詠唱の準備をしながら追いかけていった。

 1番に辿り着いたカノンは剣を構え、襲われている子どもを背に魔物たちと対峙する。敵は白い体の大きな鳥で突然現れたカノンに怯みもせず怒りをあらわにしていた。


 アルバトロス

 白い体で翼の先が黒くなっている鳥型の魔物。翼を広げた状態は大人が両手を広げるよりも大きい。くちばしが大きく発達しており、旅人たちの荷物を攫っていく。アホーアホーと鳴く声がとても腹立たしい鳥である。


 カノンや後から追いついてきたグリコが剣を振るうが、空中を舞うアルバトロスに全く手が届かない。ひとまず、近づいてくる敵だけ切ろうとするが、ひらりとかわされ、かすりもしない。

「"アグニ ショット"」

 リンゴの火の玉も見事なまでにかわされていく。魔法使いの存在に気づいたアルバトロスは何体かリンゴに向かって攻撃態勢に入った。

「リンゴ、危ない!」

 カノンがリンゴの助けに入ろうとするが、別のアルバトロスによって道を塞がれる。

「えっ!えーと…。あっ!

 "ラファーガ スコール"」

 リンゴはなんとか風魔法で突風を出し、向かってきたアルバトロスの動きを鈍らせた隙にカノンと背中合わせになれるところまで走ってきた。

「どうしよう。攻撃が当たらない!」

 カノンは額に汗を浮かべながら言う。

「なぁ、成功するかはわかんないんだけど…。」

 とグリコが試したいことがあると言ってきた。3人は少し円陣を組みグリコの話を聞く。そして怯える子どもたちを背中に囲むようにしてもう一度アルバトロスに目を向けた。

「行くよ!」

 カノンが剣の持つ手に力を加えながら言った。リンゴが荷物から出した魔道書を手に詠唱を始める。グリコはカノンの方に向き剣を上段に構えた。

「おう、来い!」

 グリコの声を受けて、カノンはグリコに向かって走り、大きく跳んだ。そのまま、グリコの構えた剣の上に足を乗せると、カノンの動きに合わせグリコが膝を沈める。

「せーの!」

 グリコは掛け声に合わせて一気にカノンを上に打ち上げた。

 カノンが剣を振り回しながら空中に飛んできたことに驚き、アルバトロスはカノンから距離を取った。すると、グリコたちの上空が大きく広がる。

「"トルネード スパイラル"」

 リンゴたちが固まっているところを中心に3つの竜巻が螺旋を描きアルバトロスたちに襲いかかる。リンゴの魔法に巻き込まれたアルバトロスは羽を散らしながらさらに上空へ、それ以外のアルバトロスたちは散り散りに逃げていった。

「はぁー。なんとか上手くいったな。」

 満足げにグリコがつぶやく。グリコの提案はカノンがアルバトロスたちをリンゴの魔法攻撃圏に追いやり、竜巻で撃退するというのが主な計画だった。リンゴによると大きな竜巻を出すことは大変なので、竜巻を小さくして数を増やしてみたのだ。

「作戦成功だね。みんな大丈夫?」

 上空からもどり着地したカノンも笑顔を見せ、改めて助けた子どもたちに顔を向けた。

「…………。」

「…………。」

 お互いの顔を見たとき、全ての時間が止まったように静かになった。カノンたちが助けた子どもたちはノーステラで会った盗賊の少女たちだった。

 先に沈黙から脱したのは少女たちの方だった。

「えーっと、助けていただきありがとうございました。」

「ありがとうございました。…それでは!」

 と2人の少女はお礼を言ってダッシュした。が、

 ガシッ

 グリコとカノンによってそれぞれ首元を引き止められた。

「わぁー離せー!人さらいー!」

 グリコに捕まった子、質素な服で短く切った髪にはちまきを巻いた少女が暴れながら言う。

「誰が人さらいだ!盗人のガキ捕まえて何になる!」

 グリコが突っ込む。そもそも子どもが子どもに捕まって人さらいと騒いでも助けなど来ないだろう。じゃれ合ってるだけにしか見えない。

「セブン、ちょっと落ち着こうよ。この人たちバカだから逃げるチャンスはたくさんあるよ。」

 カノンに捕まった子、質素な服で後ろ髪を三つ編みでまとめた少女がなだめる。

「誰がバカだ!てか、逃げ出すんじゃねぇ!」

 グリコは忙しくもしっかり突っ込む。手を離したら逃げ出しそうなので、手の空いてるリンゴが2人の前に行き質問をした。

「えーと、髪が短い方がセブン?あなたは?」

 セブンは警戒心を全面に出しながら少女を止める。

「ペンペン、名前を教えちゃダメだ!呪われるぞ!」

 いや、セブンが言っちゃってるじゃんと呆れながら言う。ペンペンという名前で間違ってないようだ。

「呪われるってなんだよ!まぁ、それは置いといて。

セブン、ペンペン、俺らの金、どこやった?」

 捕まえた手に力を込めながらグリコは言った。

「教えるわけねぇーだろ。べー!」

 舌を出して挑発するセブンをペンペンがやめなさいとたしなめる。そして、いつものあれやればいいじゃんと提案した。あっ、そうかと納得したようにセブンは頷く。自分の首襟を捕まえているグリコを睨みながらセブンは言葉を続けた。

「よし、そんなに教えて欲しいならジャンケンしよう。ジャンケンで勝ったら教えてやるよ。最初はグー、ジャンケン…。」

 セブンの掛け声にセブンとペンペンは拳を隠すようなジャンケンの構えをする。つられてカノンとグリコもジャンケンの構えをした。

「ポン!」

 ポンと同時にカノンとグリコは手を出す。セブンとペンペンはポンと同時にミネラミコーの門と反対方向に走り出した。

「えーーーーー!」

 カノンたちは面食らいながらも2人を見失わないように追いかける。どうやら、ジャンケンの構えを取ったときに手を離してしまったようだ。少し距離が開いてしまったが、障害物などないので、姿は見失ってない。

「なんで、手を離したのさー!」

 走りながらリンゴがグリコに文句を言う。

「いや、ジャンケンしようって言うから…。なんで、俺だけなんだよ。カノンも同罪だろ!」

 カノンに罪をなすりつけながらいうが、

「カノンは素直だからいいの!しかたないの!」

 とリンゴが言う。いや、いいのか?

「前見て走って!見失っちゃう!」

 カノンの言う通りだ。あまりくだらない言い合いしていると見失ってしまうので、前を見て走る。

 前の2人はミネラミコーの防壁に沿って進んでおり、山に向かって走っているようだ。ミネラミコーの防壁は緩やかな円を描いているので、いつのまにか前方の2人は少し壁に見え隠れしてしまっている。

「あっ!」

 突然セブンとペンペンの姿が消えた。カノンたちは急いで2人の消えた辺りに行くと、そこは山に入りこめる入り口のような小さな洞窟があった。

セブンとペンペンがやった引っ掛け、私もやってみたい…笑


さてさて、楽しくなるのはここからですよ!(多分)

次回もお楽しみに\(^o^)/

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