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子どもだらけで大騒動

グリコとリンゴ、何やってんだよ。そして、カノン、一体どうした…。

 翌日、カノンたちは朝から旅に必要になるものを買い集めていた。

・詳細な道がわかる地図

・3日分くらいの食料

・途中野宿しても困らないよう火つけとやかんなどの最低限の調理道具

・ケガに対応できるような応急セットetc


「あっ、これ可愛い!」

 カノンはこうして露店に寄り道する。もうこれで5軒目だ。

「カノン、あんまり買い物したら出発前にお金なくなっちゃうよ。」

 心配したリンゴが声をかけるが、チャコに買っていくんだともう会計を始めてる。残金は銀2枚も残ってないだろう。

「チャコに会えるのいつだよ…。」

 グリコも呆れながら言うが、カノンは胸を張って言う。

「この町にね配達屋さんがあるんだよ。そこに頼んで運んでもらうの。」

 会計を終えたカノンが珍しく一本取れたみたいな顔をしているが、リンゴが現実を突きつける。

「配達ってお金かかるよね?しかも、今魔物多くて危険だから結構高いと思うよ。」

 大丈夫?と聞くと、カノンは金貨袋を確認して固まる。大丈夫と言っているが、大丈夫じゃなさそうだ。

 呆れながらグリコは金貨袋を出そうとする。

 ………ん?

 ついさっきまであった金貨袋がない。

「ねぇ、見て!いっぱい入ってるよ!これでアニキも褒めてくれるね!」

 カノンたちより少し年下くらいだろうか。女の子が金貨袋を手に興奮している。

「こっちもどっさり入ってるぜ!」

 もう一人の女の子も金貨袋を手に掲げ喜んでいる。

 リンゴも金貨袋を取り出そうとしたが、鞄の中に袋はない。

 3人は金貨袋のあったところと金貨袋を手に話している女の子たちを交互に見た。

 2人の女の子たちが一瞬カノンたちの方を見た。

 2組の子どもたちの目が合う。

 ………………。

「やべ、逃げろ!」

「おい、待ちやがれー!!」

 先に動いたのは金貨袋を持った2人組だ。近くの路地に逃げていった。次にグリコが追いかけ始める。カノンとリンゴも慌てて追いかけ始めた。

 逃げる2人は右に左に道を曲がりながら人のいない道を走っていく。慣れた感じでこの町の住民なのだろうか。

 足の速いグリコも必死で追うが、差を詰めても地の利に負けて捕まえきれない。

「くそっ、俺の金貨袋!」

 前の2人を追って走っていたが、急に人通りの多い道に出た。盗人は人に紛れどこにも見えなくなってしまった。

 少し遅れてハァハァ言いながらカノンとリンゴが追いついてきた。

「あの2人は?」

 比較的息の上がっていないカノンが聞く。

「ごめん、見失った…。」

 悔しそうにグリコは言うが、どうしようもない。付いていくことさえできなかったカノンたちは文句を言えなかった。

「カノン、いくら残ってるの?」

 少し息を整えたリンゴがカノンの残高を聞く。少し気まずそうな顔してカノンは、

「銀1枚と銅80くらい。」

 共通のお金として分けておいた分は一番無駄遣いしないリンゴの金貨袋に入っていたので、現在3人の全財産はカノンのお金ということになる。

「まじか…。」

 グリコがつぶやく。

「どうしようか…。」

 リンゴも考えるが、思いつかない。

 そんなとき、空を見上げカノンがいった。

「うん、返してもらおう。」

 …はい?

「ここの道にも慣れていたし、うちらが気づけないくらい盗み方も慣れていたし、きっと他にも被害者がいると思う。」

 えっ?なんかカノンが賢いんだけど。どうしたの?

「この町に被害者が多いならきっと警備員さんとか警察さんとか情報持ってるよね。よし、探そう。」

 グリコとリンゴがカノンの言葉に呆気にとられている間にカノンの中で自己完結されたらしい。カノンが動き出した。

「あっ、カノン、待ってよー。警察署はあっち!」

 リンゴがカノンの後を追う。警察署はあるが、カノンの進んだ方向は町から出る門の方であって、警察署とは逆方向である。

「えっ、ちょっと。えっ??」

 未だについていけてないグリコも慌てて追いかけていく。ひとまず、目的は警察署だ。



 警察署

「なぁ、なんで俺ら檻の中にいるの?」

 子ども3人なら大の字で寝られるくらいの四角い檻の中でグリコは問う。

「本当どうしてだろうね〜。」

 バツが悪そうにカノンは目をそらしながら言った。

「署長さん、話くらい聞いてくれてもいいのにね。」

 リンゴは手錠とにらめっこしながら言った。魔法で檻を壊されないようにと魔法使いには特製の手錠を使うそうだ。したがって、カノンとリンゴは今魔法が使えない。

 何があったかって?それは30分くらい前に遡る。


 〜30分前〜

「ここが警察署か〜。大きいね〜。」

 リンゴはほわわ〜んと言った。盗人を追いかけ走った後、ひとりで突っ走り道を間違えるカノンを抑えながらここまで案内して、グリコもリンゴもヘトヘトだった。あの場所から15分もかからないはずだったのに、カノンに振り回され1時間も遠回りしたのだ。

「よーし!あの子達のこときいてみよー!」

 元気にカノンは進み出す。

「なんでそんな元気なんだよ…。悪いものでも食ったのか?」

 なんとなくいつもと違うカノンの様子にグリコは首をかしげる。

 すでにカノンは警察署の門番さんと言葉を交わしていた。

「中に入れてください!」

 カノンの言葉に門番さんは目を丸くする。

「えー、どんな御用ですか?」

「子どもの盗人にお金を盗られました!取り返すので情報をください!」

 人見知りはどこ行った…。カノンは非常にハキハキと答えていた。

「署内の情報は一般人に教えられないんだ。ごめんな。」

 子どもをあやすように門番さんは言った。ここまでは良かったんだ。

「そうですか。じゃあ、強行突破します!」

「「えっ??」」

 満面の笑顔でカノンは言う。門番さんもグリコもリンゴも耳を疑う。今なんて言った…?

 次の瞬間。

 ドーン!

 門を閉めていたはずの格子がなくなっていた。

「…は?」

 グリコとリンゴには目の前で起きたこの現象が理解できなかった。カノンはそのまま中へ入っていった。

「なんだ?敵襲か?」「子どもが侵入してきた!至急捕えよ!」「わー、A班敵襲により退避いたします!」「門前で仲間と思われる子どもを2人確保!」

 気づいたら荷物全部とられて、檻の中に入れられていました。



「いや〜、本当何があったんだろうね〜。」

 カノンは首をかしげる。

 檻にカノンが連れてこられたのはリンゴたちが入れられてから10分後くらい経ってからだった。その時、カノンは気を失っており、目が覚めたとき、警察署に行こうと言ってからここまでの経緯をあまり覚えていなかった。

 コツコツコツコツ…

「もう盗まれるなよって言ったのに、また盗まれたんだって?しかも、おとなしい顔して警察署襲撃なんてすごいことするんだね、君たち。」

 そう言って現れたのは酒場で会ったクールな変態、スージーだった。

「スージーさん!!」

 3人は喜びの声を上げるが、自分たちの状況を思い出して押し黙る。

 そんな様子にスージーは笑いながらブレスレットをポケットから出した。

 あっ、とカノンは声を出す。

「このアクセサリーね危険な魔法がかかってたんだよ〜。よく無事だったね。」

 カノンの顔が白くなっていく。その様子を見てリンゴが尋ねた。

「まさかだけど、あのブレスレット、カノンが着けていたの?」

 カノンは頷き、話し始める。

「チャコに買ってあげようと思って立ち寄った店で、チャコのとお揃いになるし、着けると前向きになれるって言われて買ったの。店出る前に店員さんが着けてくれたんだ。」

 カノンは今にも怒られるのではとビクビクしながら答えた。

「どこで買ったか教えてもらえるかな?」

 スージーの質問にカノンはいつ買ったか答え、それを聞いてリンゴが地図で場所を示した。すぐにスージーは近くの警備員に指示を出し、警備員は慌ただしく出て行った。

 スージーの話によると、このブレスレットは装着者の思考を短絡的にし、その代わり精神エネルギーを吸い取ってしまうものらしい。最近、このようなアクセサリーが増えて困っているらしいのだ。販売店を取り締まってはいるが、一向に減らないらしい。

「まぁ、こんなに被害出たって聞いたのは初めてだけどね〜。」

 あははは〜とみんなで笑う。

「えーと、精神エネルギー吸い取られたらどうなるの?」

 グリコは質問してみる。

「魔法のレベルにもよるけど、これは強い魔法がかかっていたから一日でほとんどの精神エネルギーが吸い取られちゃうだろうね。弱い人は1〜2時間くらいで気分が悪くなったりするかな〜。精神エネルギーはほっとけば回復するからアクセサリーを外して休めばいいんだけど、その後も着けていると…。」

 スージーが言葉を溜めるので3人は緊張して息を飲む。

「心が死んで廃人になっちゃうんだ〜。」

 あははと笑いながらスージーが言うが、カノンたちの間にとても静かな空気が流れる。グリコがカノンにいつから着けてたんだっけと聞く。

「一番最初に買ったお店で着けてもらったんだ。」

 大雑把に計算して装着時間約4時間。

「えっ、途中気分悪くなったりしなかったの?」

 驚きを隠せない顔でリンゴが尋ねる。うーん、よく覚えてないとカノンが頷くとますます驚いた顔になる。よく事情が飲み込めてないスージーにも装着時間の話をするととても大きなリアクションをしてくれた。

「きっと、強い精神力の持ち主なんだね〜。でも、記憶がないって言ってたから少し危険な状態だったかもね。他にもいくつか危ないものあったから回収させてもらったよ。」

 ほら、とスージーの手のひらには4種類くらいのアクセサリーが乗っていた。全部カノンの買ったものらしい。

「おい、いくつ買ってんだよ!まさか、これ買ってお金ほとんどなくなったなんて言わないよな?」

 グリコが言うがカノンは目を合わせない。リンゴとグリコによる説教はひとり1時間、合計で2時間ほどかかった。

そういえば、前回の少し長かったですよね(^_^;)

今回もちょっと長かった。

楽しく読んでいただけていたら幸いです。

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