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青い騎士との出会い

第2章突入です!


冒険の始まりはワクワクですね(((o(*゜▽゜*)o)))

 道中、5回くらい戦闘をこなし、カノン一行は暮らしていた村から一番近い町ノース・テラに辿り着いた。ノーステラは周辺に点在する15の村が利用する商業町で、この国の最も北に位置する町である。

「ご…飯…。」

 グリコとリンゴに引きづられるようにして町の門をくぐったカノンはもう動けないと倒れこんだ。

「仕方ないなぁ。何か買ってくるからちょっと待ってて。」

 そう言ってリンゴは小走りで町に入っていった。

「せめて、ベンチまで歩こうぜ。ここじゃ人通りの邪魔になる。」

 グリコはもう一度引きづるようにしてカノンを木陰の下にあるベンチまで連れて行く。しゃべる元気もないカノンはされるがままに引きづられて行った。

 ここはずいぶん賑やかなところだ。道行く人はみな笑顔で行き交い、どこかの村の出稼ぎなのか時折大きな荷物を運ぶ馬や馬車が通る。カノン達の目の前が静かになることはなく、腹の虫の声も人の耳に届くことはなく、カノンは1人で良かったと思っていた。

 やっとリンゴが買い物カゴをもって戻ってきた。焼きたてのクロワッサンと小さめの果物が3人分ずつ入っていた。

「リンゴ、おかえり!お腹すいたなぁ。ほら、カノン、飯だぞ。」

 時刻は昼ご飯の頃である。

「めし!!」

 生き返ったような目をしてカノンは飛び起きた。犬みたいとリンゴがつぶやくが、そんな言葉は耳に届かずカノンはクロワッサンにかぶりついた。

 しばらく無言で食事をした後、リンゴが口を開いた。

「ところで、これからどうするの?」

 カノンはポプラからもらった地図を広げる。

「この印のあるどれかに行こうと思ってる。」

 そう言ってカノンが指差したところを見て、リンゴが言う。

「この地図…。昼の国だけでなく、夜の国まで描かれてるみたい。」

 ほとんど地図なんて見たことのないカノンにはわからないが、リンゴが言うのだから両方の国が描かれているのだろう。

「あれ?夜の国って結界とかで入れないんじゃなかった?」

 講義の内容も少しは役に立つものだ。その通りだとリンゴは言う。

「どうやって夜の国の印のとこまで行くんだ?」

 グリコが聞くが、答えられるわけがない。

「そもそも、なんでこの地図の印のとこまで行くんだ?」

 今更すぎる質問だが、カノンは

「うーん、よくわかんない。謎を解いたら伝説の武器が手に入るんだって。」

 ………。そんなんで大丈夫なのだろうか…。

 心配ごとは多いがひとまず、腹ごしらえも終わったし、カノンの着替えのためにも宿屋を探すことになった。


 無事、宿も見つかり、荷物を置いたカノンたちは町へ繰り出していた。

 着替えを済ませたカノンは淡い黄色の服に緋色の半袖で太ももくらいまで長さがある服を武道服のように着て、淡い黄色の紐で結んでいた。裾や襟に黄色の唐草模様が刺繍してある。下も淡い黄色のゆったりめのズボンで、膝くらいまで折って履いていた。背中に担いだ剣の柄にはポプラからもらった赤いリボンが結ばれていた。

 着替えてみてわかったことだが、この服はとても軽いのに、丈夫な繊維が組み込まれており、防具としての役割も担っているようだった。

 旅の資金として受け取った金貨袋には銀50枚ほど入っていた。グリコたちが聞いた話だとリングベアの毛皮と肉合わせて金一枚と少しくらいになり、服や武器を調達して、村の維持費として少し取り分けて残ったお金ということらしい。リンゴの提案でそれぞれ銀10枚ずつ持ち、残りは宿の荷物と一緒に預けてきた。

「えーと、改めてだけど。カノン、この旅の目的って何なの?」

 早速買ったドリンクを飲みながらリンゴが尋ねる。グリコもリンゴもポプラに荷物を渡され、カノンをよろしくと言われて追いかけてきたのだ。付いて行くとは言ったが、目的のない放浪に付き合うほどお人好しではない。

「理由はよくわからないけど、私、命狙われてるらしいんだ。」

 これを聞いてグリコとリンゴは同時にドリンクを吹き出す。

「命狙われてる?!」

「なんで、カノンを?!」

 驚くのは無理もないが、話はしっかり聞こう。

「いや、それがわかんないんだって。だからその理由を突き止めたい。それに関わる予言の内容も詳しく知りたい。だから王都に、お母さんたちの育った町に行こうと思ってる。」

 カノンはポフラから聞いた話、その夜にあった不審者の話をグリコとリンゴに説明をした。

「人見知りのカノンがよく1人で立ち向かったね。」

 一通り話を聞いた後、感心したようにリンゴが言う。確かに、あの時は声もしっかり出して話していた気がする。

「うん、私でもびっくり…。必死だったから…かな?」

 リンゴに言われて初めて気がついたようで、カノンは照れ隠しのように横を向きながら答えた。

「とりあえず、まずは王都の城下町でカノンのお母さんを襲ったやつを探すんだな。」

 納得したグリコは頷きながらまとめる。

「あと、メルが話してた魔物たちが活性化している原因も気になるの。調べられたらいいな。」

 少し欲張りすぎたかなと上目がちにカノンは言う。たしかに、それも気になるとグリコとリンゴは頷いた。

「じゃあ、最初の目的地は?」

 リンゴは尋ねてカノンの地図を見ながら言葉を続ける。

「昼の国にある印の位置は全部で2ヶ所。ひとつはここから南に進んだ王都に近く。もうひとつはここから東に行ったところにあるよ。」

 なるほど。王都の方へ行けば襲われる理由に近づけるが、結局印を全てまわるのなら東に行ってから王都でもいいかもしれない。

「いきなり敵の本拠地に突っ込むのは危険だよな…。」

 グリコは慎重な発言をする。そもそも敵が誰なのか、王都にいるのかもわからないのだ。リンゴがそれならと提案をだす。

「情報収集の拠点、酒場に行ってみようか。ちょうど夕飯時でお腹も空いてきたし。」

 カノンたちはこの町にある大きな酒場を探すことにした。



 ノーステラは様々な村人と旅の商人たちが集まる商業町であるため、情報交換の場である酒場が発展した町でもあった。

 その中でも人が多く活気のある酒場にカノンたちは来ていた。

「ビール3つ!」「おつまみ追加で!」「ディナーAセットお願いします!」

 賑やかな声が飛び交う酒場にカノンたちは驚き見入っていた。そこへ店員と思われる服を着こなした美人な女性が近づいてきた。

「かわいいお客さん、いらっしゃい。空いてる席に案内するわ。」

 店の雰囲気に圧倒されながら、カノンたちは店員に促され中に入る。お店の少し奥の方にある円卓のテーブルに案内された。

「おーい、サンチュちゃん、おいちゃん寂しいよ〜。慰めて〜。」

 酔っ払いたちの笑いが巻き上がる。カノンたちを案内してくれた女性が呆れながら酔っ払いたちの方へ向いた。

「今はかわいいお客さんの接待中なんだよ!酔っ払いじじぃどもが邪魔すんな!ここは酒呑みのじゃれ合い場じゃなく、情報交換の場だよ!場所をわきまえな!」

 今度は違うとこから"さすがサンチュちゃん"と声が上がる。サンチュのよく通る声に叱られた客はしゅんとなっていたが、賑やかなのはいつものことのようだ。

「うるさい所でごめんね。少ししたら注文聞きにくるから、それまでに決めとくんだよ。」

 サンチュと呼ばれた店員はカノンたちの前にメニュー表を置き、喧騒の中へ戻っていった。

「すごい音だね。」

 リンゴは言うが、隣にいるグリコにさえ届かない。3人は一言もしゃべらずメニュー表を見ていた。サンチュが注文を取りに来たときも指差しで注文し、しゃべることはほとんどなかった。

 周りを眺めながら食事をして、食べ終わる頃には客は半分くらいに減っていた。どうやら、カノンたちはもっとも忙しい時間に入ったらしい。カノンたちはお互いの声が聞こえるくらいの環境に少しホッとした。

「やぁ、ここに座ってもいいかい?」

 そう言って、ビールとともにカノンの隣の席に着いた人物がいた。

「あら、スージー。ついに子どもまでナンパするようになったの?」

 サービスにとカノンたちの前にフライドポテトを置きながらサンチュは言った。

「いや〜、子どもの客なんて珍しいじゃん。でも、私はサンチュ一筋だよ〜。」

 スージーと呼ばれた人物はサンチュの尻を撫で、コラッとサンチュにお盆で頭を叩かれる。またかと周囲から野次が飛んできた。これも日常茶飯事らしい。

 スージーはこの酒場ではよく目立つ羽根つきの青い帽子を被り、貴族騎士のような青い服を着ていた。

「スージーは変態だから気をつけてね。」

 とサンチュはカノンたちに笑いかけると、えー 変態じゃないよー クールだよーとスージーは答えた。周囲からは自称クールだろと笑いが起きる。

 カノンたちはスージーたちの展開に全くついて行けてなかった。3人とも人見知りだったからかもしれない。この酒場が村よりずっと賑やかだったからというのもあるだろう。しかし、何より大きな要因は『スージーが女性である』ことだった。

 そんな3人の様子を見てなのか見てないのか、スージーは空気を壊すように質問を投げかけた。

「君たちは何しにここに来たのかな?お母さんと一緒かい?」

 なんとか硬直状態から脱したグリコが答える。

「俺ら、これから3人で旅を始めようとしてるんです。ここへは今後の行き先の情報収集のために来ました。」

 あっ、と思い出したようにそれぞれの自己紹介もした。

「えっ、君たちだけで旅するの!?すごいね。ワクワクだね!」

 意外なほどプラスな捉え方にカノンたちはまた驚く。

(やっぱり、この人よくわからない。)

 カノンは思う。

 うんうんとスージーは頷きながら言葉を続けた。

「ここに来たのは情報収集のためなんだよね。任せなさい!このスージーがなんでも答えるよ!」

 よくわからない人だが、悪い人ではないようだ。というわけで、リンゴからひとつめの質問。

「スージーさんは何者なんですか?この辺りに住んでる人ではないと思うのですけど…。」

 この質問に店中がシーンとなる。

「いい質問だね!その答えは…。」

 その答えは…?

「秘密かな!」

 店の静けさが一瞬で元の賑やかさに戻る。

「なんでも答えるって言ったじゃん!」

 グリコがつい立ち上がり突っ込む。答えられるものならなんでも答えるよ〜とスージーは緩やかに言う。まぁ、答えられないのは仕方ない。

「スージーさんは王都に行ったことありますか?」

 続いてカノンも質問をしてみた。

「行ったことあるよ〜。」

 おっ、これはいい情報があるかも。カノンは続ける。

「…………。」

 何聞けばお母さんを襲った人の手がかりになるのだろう。手がかりを知る手がかりさえ見つけられないままカノンは言葉を失ってしまった。

 助け舟を出すようにリンゴが尋ねる。

「王都ってどんなところなんですか?」

 カノンの様子を気にしながらスージーはリンゴの質問に答える。

「王都は大きくて明るくて賑やかなところだよ。地方からの旅人も多いから定期的にお祭りなんかもやってる。君たちは王都の学校に通うのかい?」

 …学校?フライドポテトを食べながら3人とも首をかしげる。

「王都には大きな学校がいくつもあって、剣術学校、魔導学校、鍛冶専門学校とか総合王立学校って言っていろんな知識を総合的に学べる学校とかがあるんだよ。わざわざ親元を離れて学びに来る子もいるから、君たちもそうなのかと思って。」

 学校なんて初めて聞いたと3人は素直に答える。しかし、何のためにと聞かれても本当のことは言えなかっただろう。だが、スージーが続けた言葉は、

「あっ、じゃあお祭りを見に行くのかい?祭りはいいよ〜。かわいい女の子いっぱいいるし!」

「テメェと一緒にするな!」

 お祭りは興味あるが、最後の言葉はどうなのだろう。やっぱりこの人は変態なのだろうか。グリコが突っ込み、カノンたちだけでなく、店中が笑っていた。

 ガヤガヤとした店内で笑いながらスージーとたくさん会話して時間が流れていった。

「ちょっと待ちな。」

 突然、スージーがよく通る声で言った。一斉に店内が静かになり、スージーに注目が集まる。

「このスージーの前で子どもの金貨袋を持っていくとはいい度胸じゃないか。」

 カノンたち3人は慌てて自分の金貨袋を確認する。スージーの向かい側に座っていたグリコの金貨袋が見当たらない。

「あと一歩でも扉に向かったら切りに行くよ。おとなしく金貨袋を返しな。」

 カノンたちは店内を見渡し、スリの存在を見つけようとする。一体、誰が…。

 その時、3人の前を青いものが通り過ぎた。

 ガシャン!カラカラカラカラ。

 大きな物音がしてそちらを見ると、スージーがレイピアを床に刺し、仁王立ちをしていた。そのスージーの前には尻もちをつき、驚愕の顔で青い騎士を見上げる小男がいた。左手には硬貨のぶつかる音がする金貨袋が握られていた。スージーはゆっくりレイピアを引き抜き、小男に向けた。

「盗ったものおいて出ていきな。」

 小男は情けない悲鳴をあげて店を飛び出していった。

 ほら、とスージーはおいていかれた金貨袋を拾い、グリコへ投げた。

「もう盗られるんじゃないぞ。」

 グリコは上手にキャッチして礼を言った。一応、中を確認してみると9枚の銀貨と何枚もの銅貨が入っている。間違いなくグリコの金貨袋だ。

「スージーさん、すごい!」

 目を輝かせてカノンが言う。周りの客もスージーのスリ撃退に歓声をあげていた。

「サンチュ、また来るよ。これお勘定。王都はここよりも物騒だよ。気をつけていきな。」

 そう言ってスージーは扉を開けて出て行く。青いマントを翻しながら歩くその後ろ姿はとても勇ましく、クールなものだった。

 クールな変態スージーが何者なのか。そんな謎を心に浮かべながらカノンたちはスージーを見送った。

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