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序章
あの子を預かって14年が経った。14年前のあの日、彼女がボロボロの姿で赤ん坊を抱え、私の元へ来たのは冷たい雨が降る夜だった。彼女は「この子は世界を救うの。だからお願い、この子を守って…」と赤子と一通の封書を託し逝ってしまった。
あの小さかった赤ん坊がもうすぐ15歳になる。いつかは旅に送り出さなければならないとわかっているのに、愛おしくて愛おしくて手放せなくなってしまう。今日もしっかり修行に励めたのだろうか。剣技や魔法は上達しただろうか。いや、心配しても始まらない。また明日も怪我なく、無事に、笑顔で過ごせますように…。