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第肆話 Written by 蒼音みるく

金成が霊刀・霧幻むげんを振るう。

ざん!!

羽蟲が一瞬にして塵と化した。

相変わらず、奴には無駄な動きがいっさい無い。

「てゆーかぁ、リュウは感心してる場合じゃないと思うんだけどぉ」

白銀しろがねが俺をシラーっとした目で見ている。

「へぇへぇ。じゃあ、お前はうるせぇクソウサギを黙らしとけ……それができれば、だが」

俺も負けずにシラーっと言い返すと、白銀の目に 久しぶりに光が灯った。


蟲が飛ぶ。俺も跳ぶ。爪が光る。羽が散る。

と、金成の刀が降ってくる。俺はそれを避けると、金剛爪こんごうそうを奴に向けた。

日光が「爪」に反射し、奴の目を射た。

一瞬、金成の目がくらんだのがわかった。隙ありとばかりに「爪」を振り下ろすと、霧幻がそれをギリギリで食い止める。

ガリッと嫌な音がして、双方の武器が離れた。お互いに睨み合うような位置取り。相手を伺いながらも、蟲をぶった斬る。ブンブンいうもんはそれだけで目障りなんだよ。

「一番目障りなんは、もちろんテメェだがな」

鬱憤晴らしに呟くと、地獄耳の奴はすぐさま反応した。

「モグリのお前から『目障り』なんて吐かれるとは、政府の部隊も落ちぶれたものだな」

「へんっ」

毎度毎度、金成のキザっぷりには反吐へどが出る。

「おい、それは自分で自分を嘲っていると見ていいのか?タカマル」

高円寺 金成の「高円」の部分を訓読みで“タカマル”。俺は別に文学少年ってわけじゃぁないが、時々言葉のアヤで遊ぶクセがあるのだ。まぁ、こんなことどうだってい……え?

「んだとおらぁっ!?」

次の瞬間、金成が 人を見下したような表情から一変、青筋立てて猛スピードで斬りかかって来た。

(もしや、名前からかわれてムキになったとか!?)

ふいに、前に爺が言っていたことを思い出した。


『よいか、竜介。政府の隠密部隊の奴らはプライドが高い。プライドは闘いに良くも悪くも影響するのじゃ』

『何が言いたいんだよ、爺ちゃん』

『つまりはな』

爺は偉ぶったようにコホンと咳払いをした。酒が回っていたのだろう、顔が少し赤い。

『相手の性格を上手く利用しろ、ということじゃ』


あのときの爺はちょっと酒が入っていたが、それでも言ったことは当たってた。俺がちょっと名前でからかっただけで奴は感情的になっている。脇も腹もすきすき。チャンスってもんだ。

「おもしれぇな、いつもは冷静な金成くんが」

斬りかかるとき、そう耳打ちしてやった。もちろんこの時はちゃーんと名前で呼んであげたぜ。



俺とは反対に、白銀の方はこてんぱんにやられていた。穂月の奴が、ビームのレパートリーを増やしたらしい。

羽蟲はすでに全滅。あたりには黒い塵が残った。

泡吹いた金成を背負った穂月(ウサギのくせして怪力なのだ)は、俺と白銀に恐ろしく笑えるアッカンベーをしたあと、やたらでっかい独り言を言いながら退散していった。

「キンちゃんも情けないね、あんなバカタレに負けるなんて。まぁ、今日のお夕飯はキンちゃんの分も食べれるから、いいとしますか」

夕日をバックに呟かれても、内容がこんなに腹黒いんじゃあ……なぁ。

「ホント、主人思いなのかそうじゃないのかわからないウサギだねぇ」

全身にビームを受けてフラフラの白銀も感想を述べた。お前だってアイツと変わんねぇけどな。

「あ、お帰り。へぇ、リュウが無傷で帰ってくるなんて、珍しいじゃない」

銀子が軒先に出てきた。冷たい出迎えだけど、俺としては嬉しい、と思っているのは秘密にしといてくれ。

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