第弐話 Written by アオ
豆腐を売るなんてつまらねえ。
でも金がねえんだよ。自由になれるくらいの金は。
金のため俺は、豆腐を売る。売り続ける!
―なんて
そんな莫迦な話があるものか。
もし豆腐を黙々と売るなんて芸当ができれば、俺が一文無しだなんてことにはならないだろう。
綺麗ごとばかりじゃ世の中は渡っていけない。
かといって、闇の中だけで生き続けるのも、なかなか難しい。
だから俺は両立する。
豆腐やの俺の裏で、もう一人の俺は…
「出たよ、アレ」
「妖怪か!?」
陰 竜介。
リュウとかリュウスケとか呼ばれる俺の本業は、何を隠そう『ヨウカイタイジ』。
世の中に昼夜関係なく現れやがる『妖怪』を退治するのが俺の仕事。
妖怪が現れたと、この金喰い虫のアバズレ女…銀子から報告された途端、豆腐なんかどうでも良くなる。
今日なんかは閉店してからの報告だったから、俺を豆腐屋に居候させてくれている爺さんも文句は言わない。
が一度、豆腐の入れ物を蹴飛ばして外に出たことがあり、その時の爺さんの制裁と来たら酷かった。思い出しただけで、胆の据わった俺も蒼ざめてしまう。
まあ今は、そんなもの思い出している暇じゃあねえか。
「銀子! どっちだよ!」
「はあ? なんでアタシがアンタにそんな面倒くさい説明しなきゃいけないのよ! アンタのペットに聞けば良いじゃない」
全く無責任だ。誰が俺を妖怪退治に向かわせているというのか?―テメェだ。
それなのに妖怪の居場所も教えねえとは。それが銀子の性格なのは重々承知し始めたけれど酷い。
「ちっ、しゃぁねえな。…白銀!」
俺は、『ペット』の名前を声を大にして呼んだ。するとすぐに『はぁい』という間の抜けた返事がし、俺の隣で小さな銀色の竜巻のようなものが起きる。
そしてその中から出てくるのは、とびっきり鼻と目の利く
「来たってよ。出陣だ、白銀」
「あいよ」
俺の、相棒。