表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第拾壱話 Written by 琥珀

さぁて、掛け軸か。


「どうすんの、リュウ」

「いや、見るっきゃないんじゃねーの?掛け軸」


白銀(しろがね)、お前が先導してくれないか?俺達じゃあ、あの気配は感じられない」

「おっけー!くれぐれも無茶はしない。リュウ達がいなくなったら、元も子もないからね」


 白銀は、本当に心配してるのかどうかは別として、そう言った。

 そして俺を見て、銀子を見て、前を向いた。


「行くよ」


 俺達は一歩踏み出した。


 蟲が居ると聞いたからか、否かは分からないが、空気が重たく感じた。

 普通だと思っていたこの部屋が、どんよりと薄暗く感じた。

 

 これは、普通の一般人だって感じることだろう。

そう、例え俺達でなくとも。


  澱んだ空気は生温い感触を全身に伝わせる。

 冷や汗のようなものが頬を伝って滴っていく。

 不気味――。それがこの事件やまの率直な感じだ。

 この建物自体の不自然さといい、風呂場で襲ってきた例の妖といい、この部屋から感じる空気といい、何から何まで何かがおかしい。


 今までの仕事でも何度だって妖と渡り合ってきたし、修羅場もくぐってきた。

 だけどそれとは何かが違う。何かがおかしい。

 それを口で説明しろといわれてもうまく説明などできない。こういうのは直感的、感覚的な物で具体的に洗わせるような代物ではないからだ。


 それでも後戻りする事は出来ない。進むしかない。

 この仕事、この世界に踏み込んだからにはそれは許されないこと。戻ろうとしたり、逃げようとすればそこにつけこまれ魂を侵される。それがこの“仕事”だから。


 だから俺は進む。

 たとえその先に闇が、地獄が待っていたとしても、生きるために俺は進む。

 進むしかない――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ