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病の箍、二夜目。お茶会

2014/08/28加筆修正

「…………」


「…………」


「…………」


「!!」

 ビクッと、音が立ちそうな程あからさまに肩を跳ねさせるイヲン。



「…………なんだ?」

「うん。……なに思案してるのかなぁ、って思って。」



 不覚にも、「ワッ」と声をあげそうになったのを寸でのところでのどの奥に追い返した。


 気付けば俺から数十センチの位置で、テーブルに頬杖をつきながら眉根を寄せ怪訝(けげん)な表情を俺にむける、パサの顔。


「パサ」とは、脚の悪いこの女の名だ。


 父さんと住んでいた頃見てきた父さんの同僚の女達は、もっと、なんというか 変な匂いのするクネクネとした者が多かった。


 俺はあまり相手にしも、されもしなかったが、キョウダイのイロォンはそいつらによく絡まれてたな。

 イロォンはキョウダイの仲では人当たりの良い方だったから。

 イロォンの顔の造りも女たちにとって好みだった様で、彼女らはよくすれ違いざまの挨拶後なんかに

「キャアー」だの「ヒィー」だの奇声を発していた。



 ————ともかく、パサ、彼女は初めて見る型だ。



 彼女の瞳に視線を合わすと、すぐにやさしい、というか……そう、さっき外で見た、ふにゃりとした……、そのような表情に変わった。


 俺は彼女の家の中で席に着かされ、目の前には嗅いだことの無い匂いを放つ食料らしきモノと、飲み物が用意されていた。



「ねえねえ、どこから来たの?」

 少々の気まずくはない沈黙の後、パサが口を開く。


 俺は食べる合間に彼女の質問に答えることにした。


 カリカリ、サクサク……。

 サク、サク。


 サクサクとした歯ごたえに反して、咀嚼(そしゃく)するごとにホロホロととける、不思議な食感。

 焼き菓子の香ばしさに塩みのお陰で締まった、俺には丁度良い甘さ。

 塩みの元になっているだろうこの独特の風味はなんだろう?

 この地特有の、調味料の類だろうか。

 どちらにしても、食べるほどにこのコクと風味は癖になるかもしれないな。


 ああ、忘れかけてた。パサの質問に答えないと。


「ここより北の、外は緑よりも白い時が多い国だ。」



 この国の北方にはいくつかの国があるが、俺の故郷の具体的な国名は言わないほうが良いだろう。

 父さんから、この国は嫌われてるからあまり話にするなと別れ際に言われた。


「そっかぁ、寒いトコなんだね。 ……ああ、それっぽい、イヲン、肌も白いし!」


「寒いのは、関係ない。黒っぽいヤツもたくさん居た。」


 そんな風に自己紹介も兼ねた他愛ない会話をパサと続ける。

 パサの俺を見る目は、そのクネクネとした女たちとはやはり違うようだ。あのまとわり付く感じが少ない。


「それでね……そのときの○○が□□でね♪」

「やっぱりこの……は☆☆なんだよ!! あっ、☆☆って、イヲン知ってる?」

 パサは俺が応答する/しないに構わず話題を尽かさない。




 パサの話を全て聞き流している訳ではないが、ふと、意識を自分に戻す。

 かすかに飢えのような感覚が明滅しながら、、しかし徐々に自分の中で湧き上がってくるのに気付いた。


 この感覚は……。


 ああ また、この感覚が。


 そうだ、マズイ、このままだと…………………………。



 ————その時、

「ねぇ、イヲンっていい名前ね。」パサが俺の名を発音すると、自分を完全に”うつつ”へ取り戻せた。


「あっ…………当たり前だ。父さんがつけてくれた」


「お父さん! お父さんは……町(ここ)にいるの?」

 俺に視線を向けたまま、首を傾げてみせるパサ。


「どこにいるのかなんて、……なんにも分からない。俺は、父さんに造られた……人の形をした”兵器”だと聞いた。一般人からは見つかりにくい他の用途の建物に偽装した、研究所地下に家があった。ある日突然逃げろ、とかいわれて……そこを追い出された」


『父さん』と聞いて、俺はあまり周囲に話すなと父さんから言われていたのも忘れて”俺の中の事実”を話した。




「お父さんにつくられた、兵器…………?? あの……戦争とかで、使う?」

 一瞬、パサの表情が曇ったように見えた。


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