王子との関係、弟との関係 ③
「うーん、居ないなぁ」
初めて足を踏み入れる離宮の中を歩き回りながら、ノゼルドの姿を探す。部屋の中は老朽化が進んでいて、掃除があまり行き届いてないのが分かる。メイドと執事の2人だけ、だからしょうがないか。
〈私、知ってたら対処してたのに、、、、本当に、やり切れない〉
〈これに関してはユイリアは悪くないよ。知らなかったんだから〉
「知らなかった、ってだけで許される訳じゃないよ、神様。ノゼルド達からしたら助けてって願いを何度も向けてたんだから」
〈!、そ、そうだよね。ごめん、優衣〉
「別に怒ってないよ、神様。ごめん、俺もちょっと気を張り過ぎてた」
俺は少し気が立っている。自分の性格、なのか身内を大切に思うし身内がそれも家族が酷い目に遭っていると、感じると容赦無くなってしまう。ノゼルドはユイリアの家族だけど、今は俺の家族でもある。だから、助けたいし守りたい。
「!(居た!)」
そう考えながら廊下を歩いていると、離宮内の中庭にノゼルドとメイド2名の姿が視界に入った。
俺は急いで柱で隠れる。どんな会話をしているのかを知りたいから、魔法で聴覚と視覚を強化する。すると、
「ノゼルド様、また王宮に足を踏み入れるたのですか?無断で」
「!、ご、ごめんなさい」
「本当に他の殿下達に姿を見られて居たら、どうなって居たか。こんな汚らわしい姿をしているノゼルド様を」
「、、、、」
「メイド長、申し訳ございません。ですが、今日はこれぐらいで」
王宮のメイド長がノゼルドと、ノゼルドのメイドであるメーリンさんを叱って居た。まさかメイド長だった事に俺は驚きが隠せず、手を口元に持っていく。
確かに、ファンブックの設定の中にメイド長は、血筋主義な人だって書いてあった。お母様は公爵家の出、それでノゼルドのお母様は庶子、、、、そのせいか。それに様呼び、俺達には殿下、陛下って呼ぶのに、それは王族と認めてないって言う現れで、可哀想だから様を付けているんだって分かった。
そのまま、様子を観察するがメイド長の叱責は止まらない。
「メーリンさん、これはノゼルド様の為に叱っているのですよ!!、、本来庶子の子であるノゼルド様の為に離宮を開放していると言うのに、勝手に許可を取らずに王宮に踏み入れるなんて、流石庶子の子ですね。教育が行き届いてませんね」
「!、それはそっちが」
「何ですか?業帝の意見に文句でも?」
「ッ、いえ」
「メーリン、僕の為に怒らなくて良いから。僕が悪いから」
「ノゼルド殿下」
「、、、、フンッ、兎に角今後無断での王宮に足を踏み入れた場合、もっとノゼルド様へ渡すお金を減らしますからね。では」
「はい、、、、」
そう言って立ち去るメイド長にバレない様に姿を消し、それはその場にしゃがみ込む。そして中庭からはノゼルドの泣き声が俺の耳に届く。
そして段々と俺は怒りが全身を包み込む。無意識に手を力強く握りしめてしまった。それはユイリアと神様の2人もだった。上から、怒った声が聞こえてくる。
〈、、、、ちょっとメイド長、殺してくる〉
〈俺もそうしたけど、ユイリア、天使がそんな事しちゃダメ。地獄に堕ちちゃう」
〈チッ、天使になるんじゃなかった〉
〈それは俺が悲しいから辞めて〉
「(それにメイド長は一応は侯爵家の血筋だから、無闇矢鱈に殺しなんて出来ないし、俺殺しは嫌いだから)」
俺は何とか怒りを抑えるが、許せなかった。何故なら俺達もノゼルドを迷惑だと思われてるって、ノゼルドに思われている事だ。助けたい、守りたい、そんな気持ちが支配される。
どうせ死ぬ命だから、容赦ない対応にして良いとかそう言うんじゃない。俺は、1つの命でも助けたいし、それが家族なら尚更だ。死んで良い命はないし、それを故意に人を殺してる奴だって、殺すなんて出来ない。
罪は、生きて償う。苦痛を与えて、死ぬなんて出来ない環境でしか、生き地獄ってのが1番だと思う。
そう思いながら、埃を払って廊下を歩くのを再開する。
「、、、、(建てられたのは確か200年程前、その頃は後宮の制度もあったが、無くなった事ノゼルドが生まれるまでは閉鎖されてた。改築したのは、資料によると50年前、そこから何もしてなかったらこの老朽化は納得がいく)」
〈それでもこれはあり得ないよねぇ〜。此処いつ壊れても良いぐらいだよ〉
〈メイド長が圧をかけて居るんでしょう。メイドの一部はメイド長には逆らえないし〉
〈ふぇぇ、神界ならそんなのないのになぁ〜〉
「(神様達の中であったら、気不味い過ぎますよ、神様笑)」
「そこ!何者だ!?」
「!、、えっと、、、、ぁ、メイルゥ、さん」
廊下を歩いて神様とユイリアと会話をして居たら、後ろから大きな声で話しかけられて思わず、ビクッて体を震わせてオドオドしながら振り返ると、、ノゼルドの執事であり同じエルフ族で黄緑色の髪をしたメイルゥさんだった。
警戒して不信感満載で敵意剥き出しの目で両手を腰に置いて、俺を見つめて居る。今の俺の外見はただのメイドだから怪しさ満載か。文句言われるか、冷やかしに来たかのどっちかだと思われてる??
「離宮に何の様だ!?ノゼルド殿下に何かするつもりか!!?」
「いや、そう言う訳じゃないんですよ。そn」
「じゃあ、何だ!?まさか暗殺か!?」
「話を聞けよ!!!!!!」
俺は思わずそうツッコんでしまった。しょうがないじゃん、話の途中で割り込まれちゃって馬鹿な勘違いされたら!
落ち着こうと深呼吸をする俺を見て、目を点にして叫ばれた事もあってビックリしているメイルゥ。その姿を見て少し笑ってしまう。
にしても、マジイケメンだよな、メイルゥ。闇堕ちしなきゃ、あぁはならなかったんだよなぁ。俺はそう思いながらメイルゥの顔をマジマジと見てしまう。
実はメイルゥもゲーム内の登場人物で、第一弾の俺が敵対するヒロインの執事をやってた。その時点で既にノゼルドは死んでて、闇堕ち寸前だったところをヒロインが唆して闇堕ちさせた、んだよなぁ。
と、最初にやった時の記憶を思い出しながら、メイルゥの方を見る。相変わらず警戒はしたままのメイルゥ。
「、、、、だ、だったらどう言うつもりなんだ?」
「まずは、本人であるノゼルド殿下に会わせて貰いませんか?」
「!、(殿下呼び、、、、こっち側か?、いやでも、、、、しょうがない)分かった。何かしたら容赦はしない」
「何もしませんよ」
俺の殿下呼びに反応して、少し警戒が落ち着いた。ノゼルドを殿下呼びするのってほんの一部の味方の使用人とメイルゥとメーリンさんの2人だけだもんなぁ。
それで信用する、ってのも可哀想な話だ。そう思いながらメイルゥの後をついていくと、少し豪華な部屋に通された。離宮内にしては、、そこにはビクビクしたノゼルドがメーリンさんの後ろに隠れて俺を見つめて立って居た。
メーリンさんは警戒しながら、メイルゥに話しかける。実は2人、血は繋がらないけど姉弟なんだよねぇ笑
「メイルゥ、その方は?」
「なんか、ノゼルド殿下に用がある、っぽい」
「用?何の御用で?手短にお願いします」
「分かってますよ、メーリンさん。実は、ユイリア殿下から頼まれ物がございまして」
「!、ユイリアお姉様から?」
俺の言葉に反応したノゼルドは、ピョコッと体をメーリンさんから出して、俺に話しかけてきた。そしてユイリアお姉様と言う単語に俺は萌えてしまった。思わず、よろけそうになってしまった。これがブラコン、って事か!?
それは、俺以外にももう1人居た。
〈我が弟可愛い!抱き締めたい、けど抱き締められないのが苦しい!!〉
〈ユイリアが限界オタクみたい〉
何とか踏み止まって、俺はアイテムボックスに似た効果の魔法を発動して、そこからある物を取り出す。その様子を見て怪しい物を見る目で見つめてくるメーリンさんとメイルゥの2人、そして少しワクワクした目で見つめてくるノゼルド。
可愛いな、って思いながら取り出したのは、ラッピングされた袋だ。そうこれは、
「ユイリア殿下の婚約者で有らせられる、アシェル殿下がノゼルド殿下の誕生日祝いとの事です」
「!、アシェル殿下が!?わざわざ!?」
「そんな馬鹿な。嘘じゃないでしょうね」
「嘘じゃありませんよ。確認して下さい」
「、、、、分かった」
俺の言葉に、まだ警戒したままのメイルゥはそう返事をして俺に近づいて、袋を手に取り綺麗にラッピングを外して中から出たのは、アシェルが言った通りのクマのぬいぐるみだった。
デザインも可愛いし、やっぱりアシェルセンス良いな、と心の中で呟いていると、ノゼルドの歓喜の声が耳に届いた。
「わぁ!クマさんのぬいぐるみだ!!それもおっきい!!」
「本当にアシェル殿下が、、、、疑ってすまなかった」
「私も、、、、ノゼルド殿下の為に感謝する」
「いえ、私はただユイリア殿下から頼まれただけですので。それと、これはユイリア殿下からです」
そう言ってまたまた魔法でとある物をメーリンさんに手渡した。それを見てメーリンさんは目を見開いた。その様子にメイルゥは不思議そうな顔をしながら、メーリンさんの持って居る物を確認する。
俺は反応が良いのが面白くて思わずニコニコしてしまう。
「!、これは靴、ですか?」
「はい。今履いて居るのは古いやつですよね?ユイリア殿下から「王都の街を歩いて居る時にたまたま良いデザインのものがあったけど男物だったから、ノゼルドにプレゼントするわ」と、言ってましたから」
「、、、、ありがとうございます。ユイリア殿下にそうお伝え下さい」
「俺からもお礼を言わせてくれ。情けかもしれないけど、それでも嬉しい、、、、ノゼルド殿下、ユイリア殿下から、靴貰いましたよ」
「!お靴!?ヤッタ〜!」
靴を貰った、その報告だけで嬉しそうな顔をするノゼルドと、俺がプレゼントを渡しただけでお礼を言って来たり、情けだしとしても嬉しがるメーリンさんとメイルゥの2人。
そう思ってしまうほどに、、メイド長達からそう思わされてた、って事だ。本当は違う、それなのに、、、、、、、、こんなのはない。お父様達はノゼルドを想っているし、ノゼルドだってお父様達と仲良くしたい、ってのが分かる。
それが叶わない、自分の身勝手な気持ちで作っているのは、正直気持ち悪い。
俺は3人にお礼を言われてから、離宮を立ち去って部屋に戻った変身を解く。
「ユイリア、神様」
〈なーに?優衣〉
〈どうしたの?優衣〉
「俺、ちょっとだけ、本気出すわ」
〈〈!!〉〉
今まで出したことの無いオーラを纏いながら、2人の方に視線を向けて、ニコッと目の笑ってない笑みを浮かべる。
初めてする表情を向けられた2人は、顔を引き攣らせてた。そんな酷い顔だったかな?
そう思いながら、俺は計画を立ち上げようと決めた。




