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1グラム2万円の金脈は、本当にこの国に眠っているのか? 古代のロマンと最新の科学が、霧島の地底で交差する。

『黄金の国、再来』に寄せて

古来より、日本は「黄金の国、ジパング」と呼ばれ、世界を魅了してきました。しかし、その輝きは遥か昔のロマンとして語られることが多く、現代の私たちの生活とは遠い存在のように感じられます。

本当に、この火山列島の地底に眠る黄金の夢は、もう潰えてしまったのでしょうか?

この物語は、一本のダウジングロッドが示した“予感”と、1グラム2万円という現実の金の価値が交差した時、その夢を追いかける探鉱プロジェクトの軌跡を描いたものです。

科学では解明しきれない古代の知恵。世界最高水準の技術。そして何よりも、「自然との共存」と「故郷の未来」を願う人々の熱い思い。

これらの要素が一つになったとき、私たちは単なる資源以上の、永遠の価値を持つ『黄金の国』の再来を目撃することになります。

ぜひ、ロマンと科学が導く、現代の黄金伝説の始まりを、最後まで見届けてください。



プロローグ


第一話:ダウジングの閃きと黄金の笑い

テレビ局の薄暗い会議室に、一台のモニターが点滅していた。映し出されているのは、ローカルニュースの映像だ。


真新しいヘルメットを被った地方局のアナウンサーが、キラキラと輝く砂金が混じった皿を手に、興奮気味に語っている。


「――まさに、黄金の国ジパングの再来か! 霧島ジオパーク周辺で発見された新たな金鉱脈は、日本が未だ秘める莫大な金の可能性を物語っています!」


会議室の奥で腕組みをしていた男が、ふっと鼻で笑った。敏腕プロデューサーの佐々木だ。隣に座る若手ディレクターの田中が、恐る恐る口を開く。


「佐々木さん、これ……本当に、特番になりますかね?」


「バカ言え、田中。なるに決まってるだろう。」


佐々木はニヤリと笑った。


「あの徳川埋蔵金発掘番組が、どれだけ世間を熱狂させたか知らんだろう? あのロマンを、今度は現代のテクノロジーと、そして人力で掘り起こすんだよ!」 


MCには、知的好奇心と親しみやすさで視聴者を惹きつける、博識なタレント、朝倉あさくら けい

そしてアシスタントには、明るさと行動力で人気の若手タレント、橘 あかり(たちばな あかり)が抜擢された。


ロケバスが到着したのは、霧島ジオパークの一角、うっそうとした木々が茂る山道だった。


「まさか、こんな山奥に金脈があるなんて信じられないですね!」


橘あかりが目を輝かせながら周囲を見回す。


「だろ? あかりちゃんもそう思うだろ?」


朝倉啓はにやりと笑い、おもむろにリュックから細長い金属棒を取り出した。それはまるでL字型に曲げられた針金のような代物だった。


「ジャーン! さて、これなんだか知ってる?」


あかりは首を傾げる。

「えーっと……ただの針金?」


「甘いな、あかりちゃん。これはな、ダウジングロッドというんだ」


朝倉は、まるで手品師のようにロッドを構えた。


「古くから、地下の水脈や鉱脈、はては行方不明の人まで探し出すと言われている、神秘の道具さ。このロッドが、水の流れや金属のエネルギーを感じ取って、磁石みたいに反応するんだよ」 


朝倉はダウジングロッドの使い方を実演してみせた。掌でロッドの柄を握り、ゆっくりと歩き出すと、ロッドの先がまるで意思を持っているかのように、ゆらゆらと揺れ動く。


「これはな、集中力と感性が大事なんだ。さあ、我々はこの古代の英知で、この地のどこかに眠る金鉱脈の“気配”を探すぞ!」


そう言って、朝倉とあかりは、それぞれダウジングロッドを手に、山の斜面をゆっくりと歩き始めた。しかし、数時間が過ぎても、ロッドはぴくりとも反応しなかった。


「うーん……やっぱり、そう簡単にはいかないか」


朝倉がため息をついた。


「お腹も減ってきたし、そろそろお昼にしようか。せっかく用意したんだ、あかりちゃんの大好物の握り飯」 


持参したレジャーシートを広げ、朝倉はリュックから握り飯を取り出した。


あかりは少しがっかりした顔で、「ですね……」と答え、自分の分のお握りを受け取る。


朝倉が、大きく口を開けてお握りを頬張ろうとした、その瞬間だった。


「見て!!!」


あかりの甲高い叫び声に、朝倉は思わずお握りを落としそうになった。


大きく見開かれたあかりの目が、一点を指し示している。


あかりの指差す方を見ると、近くの木の枝に立てかけてあったはずの、朝倉のダウジングロッドが、まるで生き物のように、カッと両側に開いて、強く反応していたのだ。


その先端は、地面の奥深くを指し示しているように見える。 




【スタジオ解説:黄金の国の秘密】

スタジオに場面が切り替わる。


スタジオには、ゲストコメンテーターの女性タレントと男性お笑い芸人、そして解説役の大学の准教授を名乗るタレントが座っている。


モニターに映し出されたロッドの映像を見て、皆、大騒ぎだ。


女性タレント:

「きゃー! すごい! 何かありますよ! 億万長者!」


男性芸人:

「朝倉さん、早く掘ってくださいよ! もう掘ってる体で見てるんですから!」


興奮冷めやらぬスタジオを前に、MCの朝倉が、カメラに向かってにやりと笑いかけた。


朝倉 啓(MC):

「いやぁ、スタジオには欲の皮が突っ張った人たちが勢ぞろいですねぇ!」

(スタジオ、大爆笑)


朝倉 啓(MC):

「落ち着いてください。さすが『黄金の国、再来』、期待を裏切りません。ここで、この騒ぎの背景にある、今の金の価値についておさらいしておきましょう。」


(スタジオ中央に、日本の金価格の時系列グラフが映し出される)


朝倉 啓(MC):

「VTRの霧島ジオパーク周辺は、日本有数の金鉱山・菱刈鉱山が近くにあり、金脈のポテンシャルを秘めた土地です。専門家も、火山国である日本にはまだ多くの金が眠ると指摘しています。」


解説タレント

中洲産業大学地質学准教授 田守 耕平


「驚くべきは、金の価格ですよ。最近、日本の店頭小売価格は1グラムあたり2万円を超えました。これ、私たちが子どもの頃なんて、千円台でしたからね!」


朝倉 啓(MC):

「そうなんです。この歴史的な高騰の理由は大きく三つ。一つは、世界的なインフレによる資産防衛の動き。二つ目は、地政学的な緊張による『有事の金』への需要。そして最も強烈なのが、円安です。」


女性タレント:

「円安、本当にすごいですもんね。私のお財布の中の円が、どんどん目減りしてる気がして……」


男性芸人:

「つまり、円の価値が下がってる分、金が高いってことですね! よし、あの金脈さえ掘り当てれば、僕らの未来は明るいぞ!」


朝倉 啓(MC):

「(笑顔で)さあ、その明るい未来が待っているのかどうか。ロケ先の私朝倉とあかりちゃんは、ダウジングロッドが示す場所を前に、今、何を思うのでしょうか?」


「この続きはまた来週! さあ、来週は、いよいよ発掘機を導入し、このロッドが指し示す先を掘り起こします!」


コマーシャルに入った。


夢の結実と、その先の責任

この物語は、テレビのドキュメンタリー特番という形を取りながら、現代における「豊かさ」とは何かを問い直す旅でもありました。

もし、私たちの足元から莫大な富が湧き出したら、私たちはそれをどう使うべきでしょうか。

採掘会社のテクノロジーがどんなに進化しても、最終的にプロジェクトの成否を決めたのは、地元の住民が示した「未来への要望」でした。目先の利益ではなく、ジオ・センターという形で地域の未来に投資するという決断は、「金」という物質的な価値を、「共存と希望」という精神的・持続的な価値へと昇華させました。

ダウジングから始まり、1トンあたり50グラムという奇跡の品位の発見に至るまで、私たちは大きな夢を見ました。しかし、本当の物語は、採掘が始まり、センターが完成し、「共存」という約束を守り続ける、その道のりの先にあります。

この物語が、読者の皆様にとって、身近な場所にも眠る「ロマン」と「未来」について考える、ささやかなきっかけとなれば幸いです。


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