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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第48話:手を離す練習 ― 一人で歩く小さな勇気

市場の中でリナライは、

少しずつ“世界の広さ”に慣れ始めた。


そして胸の奥で生まれたのは――

“自分ひとりで歩いてみたい”という気持ち。


これは

リナライの“自立”の最初の一歩。

市場のざわめきにも、

さっきより少しだけ慣れてきた頃。


リオナとリナライは

果物屋の前から、香草屋へと歩いていた。


ずっと、

リナライはリオナの手を握っていた。


その手は温かく、

安心のしるし。


でも――

その温かさの中で、

リナライは不思議なざわめきを感じていた。


胸の名の核がぽうっと灯り、

小さく脈を打つ。


「……りおな……」


リオナは優しく振り返る。


「どうしたの?」


リナライは少し戸惑い、

言いにくそうに視線を落とした。


「……あの、ね……

   わたし……

    すこしだけ……

     あるいてみたい……」


リオナは微笑む。


「歩いてるじゃない。

 ほら、今も手をつないで――」


リナライは首を横に振った。


「ちがう……

   “わたしだけで”……

    あるく……!」


リオナは目を丸くした。


(……リナライが

 自分ひとりで歩きたいと思うなんて……)


胸が熱くなる。


成長の証。

勇気の一歩。


しかし同時に、

リナライが不安で震えていることも

リオナにはわかった。


リナライは自分の指先を握ったり開いたりしながら、


「……こわい……

   でも……

    やってみたい……

     ここ……(胸を押さえ)

      ずっと……ゆれる……」


リオナは優しく手を握り返し、

小さく頷いた。


「リナライ。

 あなたは……とても強い子よ。

 やってみる?」


リナライは少し迷って、

でもしっかりと頷いた。


「……うん……

   やってみたい……!」


■ 手を離す瞬間


リオナはリナライの手をそっと持ち上げ、

ゆっくりと離していく。


リナライの指が、

名残惜しそうに震える。


ふ、とつながりが消えた瞬間。


リナライは胸に手を当てて

大きく息を吸い込んだ。


(りおな……いない……

 でも……いる……

 うしろに……ちゃんと)


市場のざわめきが戻ってくる。


しかし、

さっきより少しだけ静かに感じた。


「……いく……ね……」


リナライは

ゆっくりと右足を前へ出した。


地面と靴が触れる小さな音。


——コト。


それだけなのに、

胸が高鳴る。


次の一歩。


——サクッ。


そして三歩目を踏み出そうとしたとき――


ざわめきの中から

子どもの笑い声が走り抜けた。


リナライは驚き、

身体がぐらりと揺れる。


「っ……!」


転びそうになる。


リオナは手を伸ばしかけた。


「リナライ……!」


でも――

リナライは転ばなかった。


両腕でバランスをとり、

ぎゅっと足を踏ん張った。


そして――

ゆっくりと体勢を戻す。


「……だいじょうぶ……

   わたし……たてた……!」


リオナは

胸が熱くなって、

思わず拍手した。


「すごい……!

 すごいよ、リナライ……!」


リナライは

少し照れながら、

でも誇らしげに胸を張る。


「……わたし……

   ひとりで……

    たてた……

     あるけた……!」


■ “ひとりで歩ける”という実感


リナライは三歩、四歩と

ゆっくり進み始めた。


リオナは後ろで見守るだけ。


リナライは振り返る。


リオナの姿が少し遠くに見えた。


胸の名の核が

ふわりと輝く。


「……りおな……

   みえてる……

    だから……

     こわくない……」


そしてもう一歩。


自分の意思で、

自分の足で、

自分の重さで。


「……わたし……

   ひとりでも……

    あるける……」


その言葉は、

リナライの“自立”の芽だった。


■ 手をつなぐ理由が変わる


リナライはゆっくり戻ってきて、

リオナの前に立った。


そして――

自分からそっと手を伸ばしてきた。


「……りおな……

   て……つないで……?」


リオナは微笑む。


「こわかった?」


リナライは首を横に振った。


「ちがう……

   こわくない……

    でも……

     いっしょが……すき……」


リオナの胸がじんわり熱くなった。


「……うん。

 じゃあ、つなごう」


二人の手が再び重なる。


でもさっきとは違う。

“依存”ではなく、

“選んで”手をつないだ。


リナライは嬉しそうに笑って言った。


「りおな……

   わたし……

    ひとりで……

     あるけた……!

      でも……

       あなたと……いっしょが……いい……」


リオナは涙が出そうになった。


「私も、リナライが隣にいてくれると嬉しいよ」


リナライは胸に手をあて、

名の核の温かさを感じながら言った。


「これから……

   もっと……できる……

    みたい……」


その言葉は、確かな“成長”だった。

リナライは今日、

初めて“自分だけで歩く勇気”を持った。


手を離すことは怖い。

でも一歩踏み出せば――

世界はちゃんと支えてくれる。


そして彼女は、

“手をつなぐ”意味が

少しだけ変わったことを知る。

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