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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第41話:はじめての言葉 ― 伝える喜び、伝わらないもどかしさ

歩けたリナライは、

次に“伝える”ことを学び始める。


世界には色があり、音があり、

気持ちがある。


それらを言葉に変えて

誰かに渡すのは、とても難しく、

そしてとても楽しいこと。


今日は、

リナライが人生で初めて

「言葉のむずかしさ」と

「言葉が通じる喜び」を知る日。

朝の光が庭に差し込むころ。

リナライは小さな石を拾い、

リオナのもとへ駆けてきた。


ぎこちない走り方だけれど、

昨日よりずっと安定している。


「リオナ……!

 これ……!」


彼女は石を差し出す。

白くて、丸い、ただの小石。


リオナは微笑んだ。


「きれいな石ね。どこで見つけたの?」


リナライは胸を押さえながら

一生懸命言葉を探す。


「……あの……みず……うみ……

   そこ……ひかる……ころ……

    みて……あった……!」


リオナは一瞬考えた。


「ああ、水庭の端で見つけたのね?」


リナライはぱっと顔を明るくした。


「うん! そう!

   いえた……!

    わたし……つたわった……!」


リオナは優しく頭を撫でる。


「上手よ、リナライ。

 ちゃんと伝わったわ」


リナライは胸に両手をあて、

小さく震える声で言った。


「……あの……ね……

   いえたとき……

    ここ……ひかる……

     よかった……!」


胸の名の核が淡く輝く。

言葉が通じた喜びとつながっているのだろう。


しかし――

その後すぐ、リナライは別の言葉で詰まった。


庭の花を指さして、

何かを伝えようとするが……


「えと……これ……あか……ある……

   きいろ……なに……えっと……

    んー……つたわらない……!」


眉を寄せて、困った顔をする。


リオナは優しく問いかける。


「どうしたの?」


リナライは必死に言葉を探しながら、


「この……はな……

   りおな……すき……?

    わたし……しりたい……

     でも……ことば……なくて……!」


気持ちを持っている。

伝えたいこともある。


でも言葉が足りない。


その“もどかしさ”が胸いっぱいに広がり、

リナライは涙がこぼれそうになった。


「……いえない……

   わたし……かんがえ……ある……のに……

    でてこない……!」


リオナはすぐに抱き寄せた。


「リナライ、大丈夫。

 言葉はね、ゆっくり覚えるものなの。

 焦る必要なんてないよ」


リナライは顔を埋め、小さく震えた。


「りおな……わたし……

   りおなに……たくさん……いえたい……

    でも……いえない……

     つたわらない……!」


リオナはリナライの背中をさすりながら微笑む。


「伝わってるよ。

 あなたが“伝えたい”って思ってること。

 それだけでね、半分以上届いてるの」


リナライは顔を上げ、涙を拭いながら言った。


「……ほんと……?」


「もちろん。

 そして、少しずつ言葉を覚えれば

 もっとたくさん伝えられるようになるわ」


リナライはしばらく考え、

花をもう一度指さした。


そして――


「りおな……このはな……

   わたし……すき……

    りおなも……すき……?」


リオナはぱっと笑った。


「ええ、私もその花好きよ」


リナライは胸に手を当て、

ほっとしたように言った。


「……つたわった……!」


リオナは頷く。


「そう。

 “伝わった”のよ。

 あなたの言葉で」


リナライは花をそっと触りながらつぶやく。


「ことば……むずかしい……

   でも……できたら……うれしい……」


リオナは優しく答える。


「リナライは上手にできてるわ。

 今日はいろんな言葉を使ってみよう」


リナライは嬉しそうに笑った。


「……うん!

   もっと……つかう……!

    りおなに……おはなし……したい……!」


その姿は

世界に生まれたばかりの子が

初めて言葉を覚える瞬間そのもの。


庭の風がふわりと吹き、

リナライの髪をやさしく揺らした。


リナライは今日、確かに言葉の第一歩を踏み出した。

リナライは

「言葉が伝わるよろこび」

「言葉が伝わらないもどかしさ」

の両方を初めて味わった。


これが人としての成長の始まり。


ここからさらに、

リナライの語彙は増え、

気持ちも深く育っていく。

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