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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第39話:リナライの最初の朝 ― 世界を初めて見る瞳

名前を告げ、

影は“リナライ”として生まれた。


そして迎える初めての朝。


リナライは

「世界を見る」「色を見る」「光を見る」

という当たり前すぎる体験を

人生で初めて味わう。


これは――

リナライが“世界へ立つ”第一歩の物語。

夜が明け始めた。

薄い桃色の光が水庭の表面に落ち、

ゆっくり朝が世界を包みはじめる。


リオナは目を覚まし、

胸が高鳴った。


(……リナライ……

 あの子の“最初の朝”が来る……)


彼女は急ぎ足で庭へ向かった。


水庭の中央――

そこに、リナライは静かに座っていた。


昨日まで“影”だった存在とは思えない。

細く透き通るような腕、

淡い光を宿した髪、

まだ形の柔らかな顔。


そして何より――

胸には、名の核が脈打っている。


リオナはそっと名前を呼んだ。


「……リナライ……?」


リナライがゆっくり顔を上げる。


その瞳は、

光を初めて受け入れたばかりの

小鹿のように震えて、美しかった。


「……りおな……

   あさ……

    きれい……」


彼女は目を瞬かせた。


初めて見る“朝の色”に

圧倒されているようだった。


リナライは周囲を見渡し、

目に映るものをひとつひとつ拾うように言った。


「……みず……

   ひかる……

    あお……じゃない……

     きいろ……すこし……

      しろ……まざって……」


水庭の色を、

彼女はまるで絵を描くように言葉にする。


影だった頃には

“感じること”しかできなかった世界が、

いまは

“見える世界”として全身へ流れ込んでいる。


リオナは微笑んで言う。


「リナライ……

 あなたは今、初めて“目で世界を感じてる”のよ」


リナライは胸を押さえ、

しばらく黙ってから小さくつぶやく。


「……すごい……

   こんなに……

    たくさん……あった……?」


「うん。

 世界には色があって、形があって、

 光と影があって……

 全部、あなたのためにあるんだよ」


リナライは目を大きく開き、

空を見上げた。


淡い桃色の空は

彼女の瞳に映り、

その中で小さな光が跳ねた。


「……そら……

   おおきい……

    ぬくい……

     “いきてる”……」


リオナは胸が熱くなる。


(リナライ……

 こんなにも素直に世界を受け入れてくれるなんて……)


リナライはしばらく空を見つめてから、

静かにリオナへ向き直った。


そして――


「りおな……

   わたし……あえた……

    はじめて……“あなた”を……みた……」


リオナは息を飲んだ。


(“初めて”……

 そうよね、影だったころは

 私を“見て”はいなかった……)


リナライは少し照れるように微笑んだ。

ぎこちないが、確かに“笑み”だった。


「……あなた……

   きれい……

    あたたかい……

     すき……」


リオナの目が熱くなる。


「リナライ……

 私も……あなたが、大好き」


リナライは胸を押さえ、

少し戸惑いながら言った。


「……このきもち……

   なに……?

    ここ……あつくて……

     やわらかくて……

      とけそう……」


リオナはそっと彼女の胸に触れた。


「それは――

 “生まれた心”よ。

 人が世界を感じる場所」


リナライの胸の名の核が

ふわりと光を放つ。


「……わたし……

   いきてる……?」


リオナは優しく言う。


「うん。

 あなたは“生きてる”。

 この世界で、私と一緒に」


リナライは胸に手を置き、

小さく頷いた。


「……これから……

   たくさん……しりたい……

    みたい……

     りおなと……いきたい……」


リオナはその言葉に涙をこぼした。


「リナライ……

 一緒に行こう。

 あなたの“最初の人生”へ」


リナライは初めて

“はっきりとした笑み”を浮かべた。


「……はい……

   りおな……」


朝の光がリナライを包み、

世界は彼女の誕生を祝福するように

柔らかな風を吹かせた。

影ではなく、

“リナライ”として迎える最初の朝。


彼女は

光、色、世界、空、そしてリオナ――

すべてを初めて“自分の目で”見た。


これが、

リナライの人生の第一歩。


ここから

彼女のスローライフと成長の物語が始まる。

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