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第2章:灯の歩み、影の芽吹き
影は、まだ名前を持たず、
姿も定かではない。
それでも
“ここでありたい場所”を見つけた。
リオナの庭、
水庭の光、
静かに息づく言葉にならない関係。
それが――
外の世界へ歩き始める。
小さな町、やさしい風、
人々の笑い声、昼下がりのざわめき。
影は初めて“自分の外”に触れたいと願う。
リオナも、そっと手を添える。
押さず、引かず、ただ並んで。
けれど世界は、
静かな心をそのまま受け入れるとは限らない。
影が揺れ、
心が震え、
名前のない存在が、名前の影を落とす。
それは恐れでも、渇きでもなく、
ひとつの夢のはじまり。




