第1章 第3話:森の小道と不思議な葉
日常の中に潜む小さな発見。それは、誰も気づかない森の小道や、一枚の葉の色に宿る不思議な力かもしれない。今日もリオナは、ゆっくりと日常の奇跡に触れる。
朝の光が森の小道を淡く染める中、リオナは庭で育てた小さなハーブを持って外に出た。今日も街の生活に慣れる練習として、森を散歩しながら材料を集めるのだ。道端には色とりどりの花々が咲き、葉の一枚一枚が朝露に濡れて輝いている。
「不思議だ……葉の色が微妙に違うだけで、香りまで違って感じる」
リオナは独り言をつぶやきながら、手にしたハーブをそっと撫でる。すると、緑色の光が微かに揺れ、空気に甘い香りが広がった。小鳥たちのさえずりがさらに明るく響き、通り過ぎる人々の顔にも柔らかな微笑みが広がる。
森を進むうち、彼はふと不思議な葉を見つけた。通常の植物とは色や形がわずかに異なり、光の当たり方で青白く輝いている。「これは……見たことのない種類だ」
手に取ると、葉から微かな感覚が伝わってきた。それは喜びでも悲しみでもなく、まるで生き物そのものの意思のようだった。リオナはそっと葉を観察し、手のひらに置いたまま歩き始める。すると周囲の植物や木々が微かに反応し、葉の色に連動して光を揺らした。まるで森全体が、この葉を中心に息をしているかのようだ。
「この世界には、まだ知らないことがたくさんある」
リオナは胸の奥で思った。日常の小さな行動――葉を摘む、道端の水をかける、花を愛でる――それだけで世界が少しだけ変わる感覚は、現実では味わえない奇跡だった。
森を抜け、街に戻ると、パン屋の前で子供たちが笑い声を上げて遊んでいる。その笑い声に反応するかのように、葉から発した微かな光が街の空気に溶け込み、人々の顔を柔らかく照らした。リオナは立ち止まり、街の温かい雰囲気に微笑む。
「やっぱり、この世界での日常は面白い」
小さな発見が、日常に彩りを与える。リオナは今日も静かに、しかし確実に、自分の居場所を築きつつあった。
一枚の葉が、街全体に小さな影響を与えた。日常の中には、見逃してしまうほどの小さな奇跡が散りばめられている。
リオナは次に、どんな不思議に出会うのか――その期待を胸に、穏やかな日差しの中を歩き続けた。




