表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
151/216

第2章 第100話:四つ目の影 ― 名前を持つ者

森の奥で生まれた小さな影は、ゆっくりと村へ向かっていた。まだ形も不安定で、言葉も持たない存在。しかしそれは確かに歩いている。ナリ、ノア、レンの三体の影はその気配を感じ取り、同じ方向を見つめていた。境界の残響から生まれた新しい影。それは偶然なのか、それとも必然なのか。村にとっても、影にとっても、新しい時代が静かに始まろうとしていた。

夜の森は静かだった。


村の灯りは遠く、森の奥は深い暗闇に包まれている。


その暗闇の中で、小さな影が歩いていた。


まだ形ははっきりしない。


頭のような影。

腕のような影。

足のような影。


だが完全な形ではない。


影はよろよろと歩く。


岩の影を越える。


水の影を越える。


そして森の中をゆっくり進んでいく。


それは生まれたばかりの存在だった。


境界の残響。


ナリの核の光。


ノアの吸収した影。


レンの走った影の流れ。


すべてが重なり、この存在を作った。


影は森を抜ける。


村の入口が見える。


その瞬間だった。


レンが最初に動いた。


影が地面を滑る。


黒い線のように森へ飛び込む。


次の瞬間。


レンはその小さな影の前に立っていた。


小さな影は止まる。


レンも止まる。


二つの影が向かい合う。


レンは静かに揺れる。


小さな影も揺れる。


まるで互いを確かめるようだった。


そこへノアが近づく。


柔らかく揺れながら影を整える。


小さな影の周りをゆっくり回る。


影の流れを確かめている。


そして最後に、ナリが現れる。


核の光が静かに輝く。


どくん。


小さな影が震える。


ナリの光に反応している。


ナリはゆっくり近づく。


核の光が少し強くなる。


どくん。


その光が小さな影に触れる。


影の輪郭が少し安定する。


ぼんやりしていた形が、少し整う。


レンが一歩下がる。


ノアが影を広げる。


三体の影が、新しい影を囲む。


その頃、リナライも森へ来ていた。


ミル、トオマ、ユルクも後ろにいる。


リナライは小さな影を見る。


「……ちいさい。」


ミルが驚く。


「ほんとだ。」


トオマも言う。


「影の子どもみたい。」


ユルクは首をかしげる。


「でも影って子どもとかあるの?」


リナライはゆっくり近づく。


小さな影は逃げない。


ただ揺れている。


ナリの核が光る。


どくん。


リナライの胸の奥も震える。


ラナリエ。


境界の名前。


影の名前。


だが今は違う。


リナライは小さく言う。


「……だいじょうぶ。」


小さな影が揺れる。


リナライは続ける。


「……ここ……むら。」


ナリの核が光る。


ノアが影を整える。


レンが静かに見ている。


小さな影はゆっくり一歩近づいた。


そしてリナライの前で止まる。


その瞬間。


影の輪郭が少しはっきりする。


小さな体。


丸い頭。


細い影の腕。


まだ不安定だが、形になっている。


ミルが小さく言う。


「かわいい……。」


トオマが笑う。


「ほんとに子どもみたいだ。」


リナライは少し考える。


影は名前を持つと安定する。


ナリ。


ノア。


レン。


それぞれ名前がある。


リナライは小さな影を見る。


「……なまえ。」


小さな影が揺れる。


まだ意味は分からない。


だが待っている。


リナライは静かに言う。


「……ルア。」


影が揺れる。


「……ルア。」


もう一度言う。


「ルア。」


その瞬間。


影の輪郭が少し安定した。


小さな核のような光が、ほんの一瞬だけ生まれる。


ミルが驚く。


「光った!」


セリスの観測装置も反応していた。


彼女は息を呑む。


「……名前固定。」


リオナも森へ来ていた。


「本当に……生まれたのね。」


ナリが小さく揺れる。


ノアが影を整える。


レンがルアの周りを一周する。


ルアはゆっくり歩く。


リナライの隣へ来る。


そして静かに止まる。


四つの影が並ぶ。


ナリ。

ノア。

レン。

ルア。


村の夜は静かだった。


だがその夜、影の物語は新しい形へ変わった。

森の奥で生まれた小さな影は、リナライによって名前を与えられた。ルア。それは四体目の影だった。ナリ、ノア、レン、そしてルア。境界の残響から生まれた新しい存在は、影の物語がまだ始まったばかりであることを示していた。王国は影の力を知り、世界はゆっくり動き始めている。静かな村で生まれた小さな影は、やがて大きな運命の中心へ歩いていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ