第2章 第80話:二つの影 ― ナリとノア
二体の影。
ナリ。
そしてノア。
同じ境界から来た存在。
だが――
その成り立ちは違う。
核を持つ影。
名だけで存在する影。
その違いが、
少しずつ見え始める。
朝。
森の霧が
ゆっくり晴れていく。
ナリとノアは
川辺に立っていた。
二つの影。
形は似ている。
だが
よく見ると違う。
ナリの中心には
小さな光。
核がある。
ノアには
それがない。
ただ
名前があるだけ。
■ 動きの違い
ナリは
ゆっくり歩く。
影の足が
地面を踏む。
安定している。
だがノアは
少し違う。
一歩進むたび
輪郭が揺れる。
地面の影が
少し広がる。
リナライが
心配そうに言う。
「……ノア……
だいじょうぶ……?」
ノアが
小さく揺れる。
「……ノ……」
まだ
言葉は弱い。
■ 核の力
セリスは
観測装置を見ていた。
「データがはっきり出ている」
隊員が言う。
「ナリは内部エネルギーを持つ」
セリスが頷く。
「自己核」
そして
ノアを見る。
「ノアは外部固定」
リオナが
説明する。
「名前が錨になっている」
つまり――
ナリは
自分で存在できる。
ノアは
名前があるから存在できる。
■ 共鳴
ナリが
ノアに近づく。
核が
光る。
どくん。
その瞬間。
ノアの輪郭が
少し安定する。
揺れが
止まる。
セリスが
目を見開く。
「……共鳴補助」
ナリの核が
ノアを安定させている。
■ 二体の会話
ナリが
ゆっくり言う。
「……ナ……リ……」
ノアが
小さく揺れる。
そして
答える。
「……ノ……ア……」
まだ
完全ではない。
だが
確かに会話。
リナライが
嬉しそうに笑う。
「……ともだち……」
ナリの核が
小さく光る。
■ 影の違和感
だがその時。
ノアの輪郭が
突然揺れた。
大きく
波打つ。
リナライが
驚く。
「……ノア……?」
セリスが
装置を見る。
針が
少し振れている。
「境界反応」
リオナが
森を見る。
「……また」
遠くの影が
揺れた。
■ 増える影
森の奥。
木々の影が
不自然に動く。
一つではない。
二つ。
三つ。
まだ形はない。
だが
境界の影が
増え始めている。
セリスが
低く言う。
「始まった」
リオナも
静かに頷く。
「境界の変化」
■ 新しい世界
リナライは
ナリを見る。
そして
ノアを見る。
二つの影。
大切な存在。
だが森の奥には
まだ影がいる。
「……まだ……
くる……?」
ナリの核が
小さく光る。
どくん。
それは
答えのようだった。
ナリとノア。
二つの影は
違う存在だった。
核を持つ影。
名前で存在する影。
そして――
森の奥には
さらに影がいる。
境界は
もう静かではない。




