第2章 第78話:名を求める影 ― 二体目の存在
ナリが生まれたことで、
境界は静かに変わり始めた。
そして現れた
二体目の影。
だがその影は
ナリとは違う。
まだ何も持たない。
名も、核も、
そして――
安定も。
森の奥。
月の光が
木々の間に落ちている。
そこに立つ影。
黒い輪郭。
だが
ナリのような安定はない。
揺れている。
まるで
水面の映り込みのように。
リナライが
小さく言う。
「……ナリ……
にてる……」
ナリは
影を見つめる。
核が
小さく光る。
どくん。
■ 不安定な影
二体目の影が
突然揺れた。
輪郭が
大きく崩れる。
地面の影が
波打つ。
セリスが低く言う。
「不安定」
リオナも頷く。
「核がない」
影は
ナリに近づく。
だが歩き方が
ぎこちない。
まるで
形を保つのが
難しいように。
■ 引き寄せられる
ナリが
一歩前へ出る。
影が
止まる。
二つの影が
向かい合う。
ナリの核が
光る。
どくん。
その瞬間。
二体目の影が
大きく揺れた。
まるで
共鳴している。
セリスが
驚いた声を出す。
「反応が強い」
観測装置の針が
大きく振れる。
■ 影の叫び
影が
突然広がる。
黒い輪郭が
膨らむ。
空気が震える。
そして――
かすかな音。
「……ナ……」
リナライが
息を呑む。
「……しゃべる……?」
だが
ナリの声とは違う。
荒い。
歪んだ音。
影は
さらに揺れる。
「……ナ……
……ナ……」
それは
言葉ではない。
求めている音。
■ 名を求める
リオナが言う。
「名前を求めている」
セリスが
驚く。
「そんなことが?」
リオナは
静かに言う。
「ナリが示したから」
影は
ナリを見ている。
ナリの核が
光る。
どくん。
影が
さらに近づく。
■ ナリの反応
ナリが
小さく言う。
「……ナ……リ……」
影が
止まる。
その瞬間。
揺れが
少し落ち着く。
セリスが
息を呑む。
「模倣している」
影は
もう一度音を出す。
「……ナ……」
だが
崩れる。
輪郭が
大きく乱れる。
核がない影は
長く形を保てない。
■ 危うい存在
影が
突然暴れる。
黒い輪郭が
広がる。
枝の影が
大きく揺れる。
村の方角。
リナライの胸が
強く鳴る。
「……まって……!」
ナリが
前に出る。
核が
強く光る。
どくん。
影の揺れが
少し止まる。
■ ナリの言葉
ナリが
ゆっくり言う。
「……ナ……
……リ……」
影が
震える。
そして
小さく音を出す。
「……ナ……」
完全な言葉ではない。
だが
初めての応答。
リナライが
静かに言う。
「……まだ……
なまえ……ない……」
影は
揺れながら
立っている。
名もない。
核もない。
だが
確かに存在している。
■ 新しい問題
セリスが
低く言う。
「このままだと
崩壊する」
リオナが頷く。
「安定させるには
核か名が必要」
沈黙。
全員が
同じことを考える。
ナリの時と同じ。
「……なまえ……」
リナライが
小さく言う。
影が
ゆっくり揺れる。
それは
答えを待つようだった。
二体目の影が現れた。
だがナリとは違う。
核を持たず、
名もない存在。
不安定な影。
それでも――
その影は確かに
“名前”を求めていた。
世界は
もう一体の影に
どう向き合うのか。




