表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/132

第2章 第68話:揺らぐ信頼 ― 村に広がる不安の声

ナリが笑った日。


子どもたちは少しだけ距離を縮めた。


だが村は一つではない。


見守る者。

受け入れようとする者。

そして――恐れる者。


夜、村の集まりが開かれる。

集会所。


灯りがいくつも吊られ、

大人たちが円を描くように座っている。


ざわめきは低いが重い。


リナライはリオナの隣に座る。


ナリは外で待っている。


「……りおな……

   ナリ……

    ひとり……」


「大丈夫。

 あなたの光が届いているわ」


だが胸は落ち着かない。


■ 不安の声


村長がゆっくり口を開く。


「川の裂け目は閉じた。

 だが、影が一体残った」


静かなざわめき。


「危険はないと言うが、

 本当に保証できるのか?」


別の男が言う。


「子どもたちが近づいている。

 何か起きてからでは遅い」


女性の声。


「昨日、笑ったように見えた。

 でも、それが何を意味するの?」


不安は、

敵意ではない。


理解できないことへの恐れ。


リナライの胸がきゅっと締まる。


(……わたしも……

 はじめは……

 こわかった……)


■ リオナの説明


リオナが立ち上がる。


「ナリは名を持っています。

 固定され、こちら側に存在している」


「名?」


ざわめきが広がる。


「名は錨。

 境界を越えて暴走することはありません」


村長が問う。


「それはあなたの責任か?」


「ええ」


迷いのない答え。


だが、

それだけでは足りない。


■ リナライの声


リナライは立ち上がる。


膝が震える。


「……ナリ……

   こわくない……」


視線が集まる。


「……ナリ……

   さびしかった……

    わたし……みたい……」


ざわめきが止まる。


「……わたし……

   むかし……

    なまえ……なかった……」


村人の何人かが息を呑む。


「……なまえ……もらって……

   ここに……いられた……」


胸の名の核が、

静かに光る。


「……ナリも……

   ここで……

    えらんだ……」


“選んだ”。


その言葉が、

場の空気を変える。


■ 分かれる意見


「だが影だ」


低い声が響く。


「境界の存在だろう?」


別の者が言う。


「けれど、襲ったか?

 誰か傷つけたか?」


沈黙。


「……今は、な」


疑念は消えない。


だが、

完全な拒絶でもない。


村長がゆっくり言う。


「猶予を設けよう」


全員が顔を上げる。


「一定の期間、様子を見る。

 異変があれば、即座に対処する」


それは、

完全な受け入れではない。


だが、

排除でもない。


■ 外で待つ影


集会が終わる。


リナライは急いで外へ出る。


ナリは、

集会所の壁際に立っている。


揺れていない。


逃げていない。


ただ待っている。


「……ナリ……

   まってた……?」


ナリが小さく揺れる。


リナライの胸が温かくなる。


「……まだ……

   ここに……いられる……」


ナリは、

ゆっくりと近づく。


二つの影が重なる。


■ それでも消えないもの


だが遠くで、

まだ視線がある。


完全な信頼ではない。


猶予。


試される時間。


リナライはナリを見る。


「……ゆっくり……

   いこう……」


ナリが小さく頷く。


それは、

恐れではなく、

受け入れようとする強さ。

村は完全には受け入れていない。


だが、排除もしなかった。


それは小さな前進。


共存とは、

全員が同時に頷くことではない。


時間をかけて、

少しずつ重なること。


だが境界の揺らぎは、

まだ終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ