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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第54話:仲直りの約束 ― 本音を伝えるという勇気

嫉妬を知ったリナライは、

それが悪い感情ではないと理解した。


だが心の奥に、

まだ小さなざわめきが残っている。


それを抱えたまま笑うのは、

少しだけ苦しい。


今日は――

本音を言う勇気を持つ日。

広場へ向かう足取りは、

昨日より少し重かった。


胸の名の核は穏やかに光っている。

けれどその奥に、

まだ小さな曇りがある。


(……いわないと……

 でも……こわい……

 きらわれる……?)


広場にはもう、

ミルたちが集まっていた。


「リナライ!」

「今日も遊ぼう!」


その笑顔は変わらない。


それが逆に、

胸を少し締めつけた。


■ 言葉にするまでの時間


遊びがひと段落したあと、

リナライはミルを呼び止めた。


「……ミル……

   すこし……いい?」


ミルは首をかしげながら頷く。


「うん、なあに?」


風が草を揺らす。


リナライは胸に手を当て、

ゆっくりと言葉を探した。


「……きのう……

   わたし……

    ちょっと……いや……だった……」


ミルの目が丸くなる。


「え? なんで?」


リナライは震える声で続ける。


「……ミル……

   ほかの……ひと……と

    わらってた……

     わたし……いなくても……

      たのしそうで……」


言い終えた瞬間、

胸がどくんと強く鳴った。


(……いった……

 ほんとう……いった……)


ミルは少し驚き、

そして考え込んだ。


「……ああ……」


少しの沈黙。


リナライの胸がぎゅっと縮む。


(……だめ……?

 へんな……こと……いった……?)


だが次の瞬間、

ミルはにこっと笑った。


「リナライ、それって……

 わたしのこと大事に思ってくれてるってことだよね?」


リナライは目を瞬かせる。


「……だいじ……

   うん……

    すごく……」


ミルは一歩近づいて言った。


「ありがとう。

 でもね、リナライ。

 わたしは、リナライとも笑いたいし、

 ほかの子とも笑いたいんだ」


その言葉は優しく、

責める色はなかった。


「でも、リナライが来たら

 ちゃんと嬉しいよ。

 昨日もね、

 “リナライもいたらよかったな”って言ってたんだよ?」


リナライの胸の曇りが

少しずつ溶けていく。


「……ほんとう……?」


ミルは力強く頷いた。


「うん。

 だって友だちだもん」


その瞬間、

胸の名の核が

透明な光を取り戻した。


■ 嫉妬を越えた一歩


リナライは小さく笑った。


「……わたし……

   しっと……してた……」


ミルは首をかしげる。


「しっと?」


リナライは説明しようとする。


「……だいじ……だから……

   すこし……さびしい……」


ミルは一瞬考え、

そして笑った。


「そっか。

 でもね、リナライ。

 友だちは“ひとりじめ”するものじゃないよ」


その言葉は、

まるで新しい窓を開く風のようだった。


リナライは目を見開く。


「……ひとりじめ……

   しなくて……いい……?」


「うん。

 たくさんで笑うのも楽しいよ。

 でも、リナライが特別じゃなくなるわけじゃない」


胸の奥で、

なにかが柔らかくほどける。


(……ともだち……

 わかれる……わけじゃない……

 ひろがる……だけ……)


リナライは、

はっきりと笑った。


「……ありがとう……ミル……

   わたし……

    すこし……つよくなった……」


ミルも笑う。


「じゃあさ、約束しよ」


「やくそく?」


「もしまた寂しくなったら、

 ちゃんと言うこと。

 黙らないこと」


リナライは力強く頷いた。


「……うん……

   いえる……

    わたし……

     ちゃんと……いえる……!」


二人は小さく手を合わせた。


その瞬間、

嫉妬は“影”ではなく、

“絆を深める光”へと変わった。


■ リオナの見守る視線


少し離れた場所で、

リオナはその様子を見ていた。


リナライが自分の力で

本音を伝え、

受け止めてもらい、

また笑い合う姿。


(……リナライ……

 あなたは、もう一人で

 ちゃんと関係を築けるのね)


胸が温かくなる。


リナライは遠くから

リオナへ向かって手を振った。


「りおなー!

   わたし……だいじょうぶ!」


その笑顔は、

昨日よりもずっと自由だった。

リナライは今日、

初めて“本音を伝える勇気”を持った。


嫉妬は消えたわけではない。

でもそれを言葉にしたことで、

心は軽くなった。


友だちは“ひとりじめ”ではなく、

“広がるもの”。


リナライはまたひとつ、

人としての深さを手に入れた。

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