婚約破棄してさようなら(666文字小説)
「私は公爵令嬢との婚約破棄を宣言する!」
「何か至らない点がございましたら、申し出ていただければなんでも直しますのでそこはなんとか……」
「はぁ……」
その答えに私は呆れている。何故かって?
彼女は成績優秀、容姿端麗なのは良いが、かなりのポンコツだからという理由。
屋敷内を二人で散策するとどこかに躓いて転び、すぐに処置してもらわなければならないし、礼儀作法(特にテーブルマナー)は自己流か? と言いたくなるくらいできていない。
彼女は自由人なのかは知らないが、この屋敷の使用人や家族は何を考えているのか私には全く分からない。
なので、早めに婚約破棄した方がいいと思い、現在に至る。
「わたくしはあなたとの婚約破棄はいたしませんわ」
「何故だ?」
「わたくしはいつもあなたに助けられ、感謝しています。転んでしまってもお姫様だっこしてくださるし、礼儀作法は教えてくれますし。何より……」
「何より?」
「他の誰よりも優しいところがあなたの良いところだと思ったからです」
顔を赤くし、もじもじしながら答える彼女。
私は優しいから? それが婚約破棄してほしくない理由なのか!? 単なる彼女の計算なのか!? それとも違うのか!?
頭の中でいろいろと考えを巡らせる私。
「……あら、難しい顔して? どうされたの?」
「どうもしないさ。そんな理由でめでたく結ばれるとは思うなよ? 私は婚約破棄を望んでいることは変わりない。何か問題でもあるか?」
「いいえ……ありませんわ。またいつかどこかでお会いするまでお元気で」
「そちらこそな」
こうして、めでたく婚約破棄した私たちは再会することはなかった。
最後までご覧いただきありがとうございました。
2025/09/05 本投稿
2025/09/05 タイトル変更(注・あらすじ参照。本編の改稿はありません)