79話 伝説の都市――バビロンへの降臨
アッシリアの王都ニネヴェ。王宮前から続く壮麗な王門の前に、茜たちは整列した諸軍とともに立っていた。
今日、風の神アカーネ――すなわち茜は、ミタンニ・ヒッタイト連合軍を率いての遠征を終え、次なる目的地へと旅立つ。彼女を見送るために、ミタンニ王クルティワザ、ヒッタイト副王ピヤッシリ、そしてアッシリア王アッシュールが直々に王門まで足を運んでいた。
その背後には、遠征に参加したミタンニ軍・ヒッタイト軍の将兵たち、そしてアッシリア軍と王都の民たちの姿もある。各国の旗が風に揺れ、広場には厳かな空気と敬意の念が満ちていた。
まず、ヒッタイト王国のピヤッシリ副王が一歩前へ進み出た。
「……どうやら、これが本当のお別れになりそうですね」
彼は穏やかな笑みを浮かべながらも、どこか寂しげな眼差しを茜に向ける。
「私個人はもちろんですが、ヒッタイト王国としても、あなたによってアッシリア側国境の安定をもたらしてもらい、深く感謝しております。本来ならば“アカーネ様”とお呼びすべきなのでしょうが……あえてこの場では、茜様、よき旅を」
その言葉に、茜は少し驚いたように眉を上げ、柔らかく返した。
「こちらこそ、ありがとう。副王もそうだし、スッピルリウマ王にも……私は恩があるから。この恩は、絶対に忘れないよ」
続いてミタンニ王国のクルティワザ王が、ゆっくりと歩み寄り、深く頭を下げた。
「アッシリアとの国境を安定させていただいた功、心より感謝いたします。我が国は今後、復興という大きな課題を抱えますが……あなたのおかげで、その第一歩を踏み出すことができました」
茜は少しだけはにかんだ笑顔を見せる。
「これから、きっと大変だと思う。でも、復興……頑張ってね、クルティワザ王」
そして最後に、アッシリア王国のアッシュール王が前へ出る。その姿勢には、かつての高慢さはない。
「……多くの迷惑をかけたが、アカーネ様のおかげで、我々も目を覚ましました。戦いと変革、そして信仰の意味を――改めて感謝を申し上げます」
茜は小さく肩をすくめながら、苦笑まじりに呟いた。
「でもね、アッシリアとは、また違う時代で絡みそうなんだよね…。その時のアッシリア王国…いや…その時は新アッシリア帝国…かな?そこと私は、また戦う事になりそうなんだよね…」
それでも、アッシュール王はまっすぐな目で彼女を見つめ、静かに言う。
「アカーネ様。我が国がその後どうなるか……それは分かりません。ですが、少なくとも私は、あなたに出会えたことに感謝しています。その想いは、私の子孫にも必ず伝えていきましょう」
その真摯な誓いに、茜は言葉を返さなかった。ただ、短く頷くだけだった。
その場を締めくくるように、ピヤッシリ副王が再び声を上げる。
「なお、既にバビロニア王国の王都――バビロンには、アカーネ様が訪問される旨を伝えてあります。王も神官たちも、きっと温かく迎えてくれることでしょう」
「……ありがとう、ピヤッシリ副王」
茜は穏やかな声で礼を述べた。
そして――王門の外に向かって歩みを進める。その背に、大きな歓声と、三つの国からの敬意が重なって押し寄せる。茜は背を向けたまま、それに手を振って応えた。
王門を出て、ニネヴェの城壁が遠ざかる頃、リュシアがぽつりと呟いた。
「結果的に、主の思い描いた形になったようですが……この後も、アッシリアとはいろいろとありそうですね」
ガルナードはうなずきながら言葉を添える。
「主殿が行ったこの布石、将来必ずこの地の安定に効いてくると、私は信じておりますぞ」
アルタイは肩をすくめながら苦笑した。
「なんか……今回の主への同行は、色々と大変すぎだよな」
ユカナがにっこりと笑い、さらりと告げる。
「でも、私はこうやって信仰も増えてるし、茜には感謝してるんだよ?」
ミラナは満面の笑みで、手を広げながら声を上げる。
「私も感謝してる。この後、少しでも楽に神界で暮らすために!茜が一緒にいる今のうちに、しっかり信仰稼がないとねー」
エンへドゥアンナは厳かに言いながら、小さな巻紙を懐から取り出した。
「ちなみに、今回私が書いた神話……ここを去る前に、アッシュール王に託しました。アッシリアが続く限り、風の神アカーネ様の神話は残り続けるでしょう」
それを聞いた茜は顔を引きつらせながら、頭を抱える。
「自分から頼んだこととはいえ……うへぇぇ……」
神として、人として、歩み続けた日々に、少しばかりの苦笑いを添えて――茜は、バビロニアへと旅立っていった。
****
旅の途中、一行は広野に張った簡素な野営地で夜を迎えていた。焚き火の炎がパチパチと音を立てる中、リュシアが手元の記録を確認しながら報告を始めた。
「どうやら、あの戦いが今回の時代における最終戦だったようですね。全軍の消耗は完全に回復しましたし、生き残った部隊の練度と武装度も一段階上昇しています」
その言葉に、茜は大きく伸びをしながら唸った。
「やっと、この時代が終了か……ヒッタイト王国で3戦、ミタンニ王国で3戦……合計6回も戦ってるんだよね。マジでブラック職場」
「ご安心を。今回の最終戦の神力収得について報告いたします」
リュシアは淡々と読み上げた。
「まず、初期勝利で250神力、勝利評価Sで150神力。合計で400神力が主に加算されています」
「400!? けっこう来たなぁ」
「さらに、ミタンニ王国の都市アラプハでの信仰発生によって、主に20、ユカナ様とミラナ様に10ずつ。そしてアッシリアの王都ニネヴェでは、主に30、ユカナ様とミラナ様に10ずつの信仰が発生しています」
リュシアは札を閉じ、手元の火にかざして光を照らす。
「よって、新たな信仰による加算は、主に50、ユカナ様とミラナ様に20ずつ。これにより、主の神力は271、ユカナ様は290、ミラナ様は75となっています」
茜は目を丸くした。
「ニネヴェでも信仰が発生したんだ……マジで?」
ガルナードが顎を撫でつつ頷く。
「おそらく、アッシリアに変革をもたらせた“神”としての印象が強烈に刻まれたのでしょうな」
「この時代だと、私達より茜への信仰が絶対的な形になってるよね~」
ユカナがにっこりと微笑む。ミラナも隣でにやりと笑った。
「私はこれでも満足してるよ? ある程度楽して、しかも恒常的に神力入ってくるって分かったし。コスパ最高って感じ!」
「神がコスパとか言い出したら世も末だよ…!」
思わずツッコむ茜に、リュシアがさらに報告を重ねた。
「よろしいですか? 一つの時代が終わったため、恒常的に得られる神力も更新されます。主は270、ユカナ様が260、ミラナ様が90となっています」
「茜が一番信仰されてるって感じだね。でも私は、目立たない方が気楽でいいかも」
ユカナは肩をすくめて言い、ミラナがそれにかぶせる。
「上位神の私の三倍の信仰……! でも今まで恒常神力ほぼゼロだったからね、90でも万々歳。夢のニート生活が目前に……!」
茜はあきれたように二人を見た。
「あんた達、一応中位神と上位神だよね? もうちょっと真面目にやってよ!」
「ほどほどが一番」
「ユカナいい事言うじゃん。そそ。ほどほどに神力入って、ポップコーン片手にノンビリできれば、私も満足」
まったく響いてない様子の二柱に、茜は机を叩く勢いで叫んだ。
「この怠惰神に残念神がっ……絶対に働かせてやる!」
その瞬間、焚き火の向こうから優雅な声が響く。
「これで、風の神アカーネ様が上位神になる日も近いということですね? 私の筆にも、ますます力が入るというものです!」
そう言って満面の笑みを浮かべるエンへドゥアンナの手元には、また新たな神話詩の草稿が広げられていた。
茜は両手で頭を抱えながら絶叫した。
「いや、もうそれいいからっ! あんたへの依頼は終了っ! これ以上はやらなくっていいってば!」
そのひと言に、一同はどっと笑いに包まれた。野営地の火が静かに揺れる中、リュシアが記録札を閉じて顔を上げた。
「ところで、この神力、どう振り分けますか?」
茜は焚き火越しにリュシアを見ると、ぽつりと答えた。
「どうせこの時代が終わったら、一旦会議スペースに戻るんでしょ?だったらそこでゆっくり考えるよ」
「それがたしかに、最も無難な選択でしょうね」
リュシアがうなずいたとき、アルタイが興味深げに首を傾げる。
「それで、これからどうするんだ? もうこの時代の戦いは全部終わったんだろ?」
「うん、終わったね。でも……」
茜は少し遠くを見るように目を細めて、言葉を続けた。
「せっかくだから、バビロニア王国に寄ってみたいんだよ。あそこって、もともとシュメールがあった場所でしょ? 私たちが暮らしていたシュメールの今の姿を、この目で見ておきたくて」
その言葉に、ユカナがすぐに笑顔で応じた。
「茜が好きなようにしてくれていいよ。私は茜のおかげでここまで神力もらってるし、少しくらいの寄り道なら歓迎だよ」
「ユカナ、ありがと」
茜が少し照れたように微笑むと、ミラナが隣でにやりと笑った。
「信仰も稼げそうだしねぇ~。バビロニア、神殿いっぱいありそうだし、都市規模もかなり大きいはず。これは楽しみ」
「まーたその顔……」
呆れたように見つめる茜の向こうで、エンへドゥアンナが厳かな口調で口を開いた。
「私としては、シュメール時代に私が記した《風の書》が、どのように後世に保管されているのか非常に興味があります。千年以上の時を経て、なお語り継がれているのですから」
その言葉に、茜は肩をすくめて小さく笑った。
「ほんと奇跡だよね……。だって、私が解決した“あんたの不始末”を神話にでっち上げたのが始まりだったのに、よくもまぁ1000年以上も残ってたもんだわ」
「ということは、今回アッシリアに残した私が書いた話も1000年以上残る可能性が高いということですね。ああ、感慨深い……!」
「うへぇぇ……」
頭を抱える茜の声に、また焚き火の周りに笑いが広がる。
こうして、茜たちは新たな目的地――バビロニア王国へと歩みを進めていく。シュメールの面影を求めて、そして神としての自分と、信仰の記録がどこまで人々の中に生きているのかを確かめるために。
翌朝、日の出とともに茜は静かに身支度を整えていた。身に纏うのは、かつてシュメールで過ごした頃の、大巫女としての装束。白と青を基調にした長衣には風を象徴する文様が織り込まれ、背には金糸の刺繍がきらめく。彼女の肩にかかるその衣は、時の流れを超えてもなお威厳を宿していた。
それを見たリュシアが、微笑む。
「主、やはりそちらの服装でバビロンに入られるのですね?」
「うん。やっぱり、ここは“シュメールの大巫女”の恰好のほうが雰囲気出るでしょ」
茜は軽く肩をすくめながら、少し照れたように笑った。
一行は野営地を出発し、バビロニアの平原をゆっくりと進んでいた。空は晴れ渡り、遠くにかすかに城壁の影が見えてくる。
そのとき、遠方から馬蹄の音とともに、バビロニア兵の一団が近づいてきた。先頭の隊長格が馬を降り、膝を折って一礼する。
「シュメールの大巫女様。我々はバビロニア王国の哨戒隊にございます。ヒッタイト王国より既にご降臨の知らせを受けております。時を超えし御方の訪問、誠に感謝いたします」
「そういうのはいいから、もっと気軽にしてよ……」
茜は眉を寄せながら、手を軽く振った。しかし、隊長は首を横に振って続ける。
「それはできかねます。我がカシュティリヤシュ王、ならびにイシュタル神殿のイシュメ・イシュタル大司祭より、シュメールの大巫女様を丁重に案内せよとの勅命を受けております。何卒、我々に先導をお任せくださいませ」
(この対応は予想してたけどさ……やっぱりここでも“マジ神扱い”か……)
茜は心の中で小さく嘆息しながらも、うなずいた。
隊長は即座に部下を伝令に飛ばし、一行を先導する形で再び進軍を開始する。その間、茜たちは徐々にバビロンの全容を視界に捉えていった。
茜の目に映るその都市は、想像を遥かに超えるものだった。高くそびえる城壁、複雑に連なる塔や建物――それは伝説として語り継がれてきた“都市バビロン”そのものであった。
(あれが……バビロン……! あのシュメールの末裔が作り上げたっていう、伝説の都市……)
胸が高鳴る。歴女としての本能が震える。
だが――その高揚は、すぐに冷水を浴びせられる。
城門の前には、王冠を戴いた王族らしき人物と、絢爛な衣装に身を包んだ神官たちが、整然と並び、明らかに式典の始まりを待ち構えていた。
茜の笑顔がぴたりと止まる。
(……これ、完全にセレモニーだよね? うわ、マジか……)
城門前の荘厳な光景を前に、茜はこっそりとリュシアに顔を寄せ、ひそひそ声で囁いた。
「ねぇ? 今すぐ会議空間に帰らない? いまならまだ間に合うよね……」
だが、リュシアは茜の訴えを完璧にスルー。目線一つ動かさず、冷静に前方の式典配置を観察していた。
「……無視⁉」
茜の呟きに、隣のガルナードが苦笑しながら言葉を添える。
「主殿、流石にこの状態で逃げ出すのは……問題でございますぞ」
言葉の通りだった。王門の前には、王冠を戴くバビロニアのカシュティリヤシュ四世が、豪奢な衣装に身を包み、整然と整列した神官たちと共に茜の到着を待っていた。その姿勢は、まさしく神を迎えるそれだった。
茜は大巫女の装束の袖をぎゅっと握りしめながら、渋々と足を進める。
背後では、ミラナが興味津々といった表情で眺めていた。
「今回も、光を降らせたら映えるよね~。どこがベストタイミングかな?」
「残念神、余計なことしないでよ?」
「はいはい、大丈夫ってば~」
茜の警告も空しく、ミラナの表情には既に“準備完了”の文字が浮かんでいる。
そして――茜が王門の目前に立つと、バビロニア王カシュティリヤシュ四世は膝を折り、深々と頭を垂れた。
「風の神アカーネ様、我がバビロニア王国へのご降臨、誠に感謝申し上げます。ここはアカーネ様が残したシュメールの光の地――その残光を胸に、我らはこの都を築いてまいりました。どうか、アカーネ様の栄光を、このバビロンの地にもたらしてくださいますよう……」
その隣では、イシュタル神殿を司るイシュメ・イシュタル大司祭もまた、慎み深くひざまずく。
「風の神アカーネ様――その伝承は、我らイシュタル神殿にて千年にわたり守り抜いてまいりました。今日、このようにご神威の主が自ら顕現されるとは……まさしく奇跡にございます。どうか、ここでは何も憂うことなく、ゆるりとお過ごしくださいませ」
茜はその姿に内心ドン引きしていた。
(マジ神扱いどころじゃないじゃん……どうしてこうなるかなぁ)
チラッと視線をずらせば、既にミラナがニヤニヤと笑みを浮かべながら指を空に向けている。今にも光の演出を発動しそうな雰囲気だ。
(ああもう、あの残念神、絶対にやる気だ……!)
しかし、ここで逃げ出すわけにもいかない。
茜は覚悟を決めると、そっと目を閉じ、静かに両手を空へと掲げた。
「……バビロニア王国の皆さま、心からの歓迎、誠にありがとうございます」
その声が、城門前の静寂に響き渡る。
「この地に住まうすべての民、そしてその歴史に――風の祝福あらんことを」
茜の祝福の言葉が空に消えたその直後だった。
「よ〜し、今だね♪」
ミラナが涼しい顔のまま、ぱちんと指を鳴らす。次の瞬間、神力が彼女の指先から解き放たれた。
今回は、なんと神力10。ワシュカンニでの5の倍――つまり、倍の気合である。
それは派手に決まっていた。
青く透き通るような光が天から降り注ぎ、バビロン全体を包み込むように輝き出す。城門、神殿、塔、城壁、街並み、広場、そしてその場に立ち尽くす人々までもが、金砂をまぶしたような幻想の光景に変貌していく。
「これは……!」
王カシュティリヤシュ四世が、思わず天を仰ぐ。イシュメ・イシュタル大司祭も瞳を潤ませ、何度も頭を垂れている。
城壁の上から見ていた民たちからも、歓喜と驚嘆が混じった大歓声が湧き起こった。
「うわぁぁああああっ!」
「アカーネ様だ……アカーネ様が来られたぞ!」
「神が――本当に神が、この地に……!」
歓声は波となって街を包み込み、バビロン全体にこだましていく。
茜はその中心でため息をついた。
(この残念神……マジで止まらなくなってる……)
顔を横に向ければ、ミラナはいつもの涼しい顔でニッコリ笑い、「コスパ最高♪」などとのたまっている。
その隣では、ユカナが苦笑まじりに肩をすくめた。
「今回は本当に派手だね、ミラナさん」
「だってねぇ、信仰も稼げて、美しくて、誰も損しないじゃない? 最高でしょ?」
茜は小さく頭を抱える。
(損してるのは、間違いなく私の胃なんだけど……)
そんな茜の気も知らず、エンへドゥアンナは陶酔しきった表情で紙片に筆を走らせていた。
「これは神話になります……バビロンを包む、風と光の祝福……“アカーネ神迎えの章”、完成間近でございます……!」
「だからやめろってばぁぁぁ……」
天からの光はなおも降り続け、幻想的な輝きが王都バビロンの全域を包み込み続けていた。王や大司祭、兵士や民――誰もが、その奇跡を信じ、讃え、心からの歓声を上げていた。
――茜は小さく肩をすくめる。
(仕方ない、こうなったら最後まで神様っぽく頑張るしかないか……)
民たちの歓声が一段落すると、王カシュティリヤシュ四世が茜に丁重に道を示し、イシュメ・イシュタル大司祭が深々と頭を下げる。整列していた兵たちと高官たちが道を開き、茜の一行は、ゆっくりとバビロンの城門をくぐった。
そして――その先に広がる光景に、茜は言葉を失う。
眼前に広がっていたのは、整然と並ぶ神殿と塔、壮麗な王宮、迷路のように張り巡らされた石造りの街路、鮮やかな陶器の装飾に彩られた建築群。そしてその背後には、かつて見たことのない巨大な人工丘がそびえていた。
空にはまだミラナの残光がほのかに舞い、神話と現実の境が曖昧になっていく。
茜は思わず、立ち止まった。
(……これが、バビロン……)
かつてシュメールの地で暮らした日々。粘土板に言葉を刻み、風の神として人々の祈りを受けたあの時代。まだこの地に都市など影も形もなかった頃、自分たちはここで何かを夢見ていた。
(シュメールの私たちの時代から見たら――これは確かに、奇跡の都市だね)
声に出さず、心のなかで呟く。
あまりにも遠い未来に、あまりにも美しい形で現れたこの都市に、茜はただただ圧倒されていた。
仲間たちも静かに見入っていた。誰も言葉を発せず、目の前の都市を見つめていた。
伝説の都市バビロン――その栄華と誇りが、今、確かに茜の前に広がっていた。




