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57話 戦車を砕く――嵐の迎撃戦

 早朝のカルケミシュ――。


 まだ朝靄の残る空の下、都市の大通りにはヒッタイト兵たちの足音が鳴り響き、甲冑のきしむ音と戦車の車輪が石畳をきざむ。出陣の気配に、町の人々も家々の前や市場の縁に出てきて、黙って兵たちを見送っていた。


 この都市がヒッタイト王国の支配下に入って、まだそう年月は経っていない。人々の顔には緊張と警戒、そして新たな支配者への複雑な感情が滲む。声援を送る者もいるが、その声にはいくらかぎこちない響きがあった。


 ――だが、その先頭を進む副王ピヤッシリの姿は堂々としていた。


 王族としての矜持を纏ったその佇まいは、彼自身がこの土地の人々からの視線を真正面から受け止める覚悟を持っていることを物語っていた。青と赤の王族の紋章を肩に刻み、視線はまっすぐ前を向いたまま。


 「……だいぶ、無理をしていますね」


 小声で呟いたのはリュシアだ。いつも通り無表情ではあるが、その眼差しには若き副王への憂いが浮かぶ。


 「難しい立場だよねぇ、王子様も」


 その隣で、茜がぽつりと返す。彼女の声音には、同情とも、共感ともつかぬ柔らかさがあった。


 そんな彼女も、今日はいつものシュメールの大巫女の装束ではない。王宮で贈られたばかりのヒッタイトの高位巫女装束――濃藍の生地に金糸の唐草模様、そして胸元にはラピスラズリとカーネリアンの宝玉がきらめく、まばゆいばかりの神殿衣。まさに神話のようなその姿に、通りの人々の視線が自然と引き寄せられる。


 「……あれは……どこの神殿の巫女様だ?」


 「こんな立派な装束、カルケミシュじゃ見たことがないぞ……」


 人々はささやき合いながら、行列の中で茜にだけは明確な関心を向ける。巫女の名も知らずとも、そこにいるだけで神威が満ちるような――そんな存在感があった。


 「……本当は私の方が神格が高い神なのに……」


 ぽつりと、行列の後ろのほうでミラナがぼやいた。その呟きに、隣を歩いていたユカナがふふっと笑って小声で言う。


 「大丈夫だよミラナさん。ちゃんと私には分かってるから。ね?」


 ミラナは口を尖らせつつも、それ以上何も言わず、少しだけ視線を逸らして前を見つめた。茜は民たちの視線に気づいているのかいないのか、にこやかに軽く手を挙げて応える。けれども、その足取りは常に隊列の流れに合わせ、乱れはなかった。


 やがて、城門が見えてきた。


 その門の脇で、衛兵たちが整列し、出陣部隊の通過を見守っている。その中のひとりに、茜の視線がふと止まった。


 「あら……あの人……」


 ふとした笑みを浮かべて、茜が一歩だけ列から抜ける。そして軽く右手を掲げた。


 「隊長さん、私たちの留守の間、この街をよろしくね」


 声をかけられた衛兵隊長は、一瞬目を見開いた。だがすぐに、彼女が誰であるかを確信する。あの時、市場を案内したシュメールの大巫女――その人物が、今や王子ピヤッシリと並び立ち、正式な高位巫女の装束に身を包んで戦列に加わっている。その姿に、彼は驚きと同時に誇らしさを覚えた。まさか自分が、あのような重要な方の最初の案内役を務めていたとは。


 驚きの中に敬意を込めて、彼は胸に手を当て、深く頭を垂れた。


 「巫女様も、ご武運を。街はお任せください」


 そのやり取りに気づいた周囲の兵たちが、そっと目を見交わし、口元に笑みを浮かべる。


 そのまま、ヒッタイト軍は鼓動のような足並みで門を越えていく。青空の下、カルケミシュの地を背に、東へ。ミタンニ王国との決戦に向けて――。


****


 それから数日後、進軍の道中にて。


 夕暮れの帳が落ちた野営地では、焚き火の炎が静かに揺れていた。幕舎の中央には地図と駒が並べられ、各部隊の将が集まっている。茜もその輪の中にいた。


 「今回の遠征は、父王スッピルリウマ陛下自らが本隊を率いておられます。すでに王都ハットゥシャを発っており、我らの部隊はその補助として進軍中です」


 ピヤッシリ王子が指を地図上の点に置きながら語る。その声は冷静で落ち着いていたが、内には明確な自信がにじむ。


 「ミタンニ王国の主力軍は現在、アッシリア方面に出払っています。つまり、王都ワシュカンニは手薄です。これを好機とし、我々は一気に王都ワシュカンニに急襲を仕掛ける手筈となっています」


 「相手の留守を狙う作戦だったのね……」


 茜は小さく呟き、頷いた。周囲の誰にも聞こえぬような声だったが、戦略の意図を即座に読み取ったその目には冴えが宿っていた。


挿絵(By みてみん)


 「これなら、それほど大きな損害も出ずに済むかも。さすがに今回は、戦略的に勝ちが決まってる……そう、“ボーナスステージ”ってやつだね」


 軽く笑いながら言ったその言葉に、すぐさま隣のリュシアが反応する。


 「主、油断は禁物ですよ。敵は戦上手。状況に乗じた逆襲の可能性も捨てきれません」


 「とはいえ、今回はヒッタイト王国の戦略勝ちですからな。よほどのことがない限り、負ける要素は少ないかと」


 と、ガルナードが落ち着いた口調で言葉を添える。


 「そうそう。こっちは騎兵も揃ってるし、向こうの戦車なんかには負けないって」


 と、アルタイも自信たっぷりに笑う。茜はそんな一同のやり取りを聞きながら、焚き火の向こうを見つめる。


 「まあ、勝てるときに勝っておくのが一番。ね、みんな」


 炎の揺らぎの中、彼女の目はどこか楽しげで、それでいて静かな覚悟を秘めていた。翌日、ヒッタイト軍がハッラーン平原に差しかかろうとした頃、北方から戻ってきた斥候が急報をもたらした。


 「報告します! ミタンニ王国の戦車部隊、およそ400台が北方よりこちらに向かって接近中とのこと!」


 ヒッタイト軍の空気が一瞬で張り詰めた。


 「……やはり動いてきましたか」


 ピヤッシリ王子は地図上を指でなぞりながら小さく呟いた。敵の機動力を考慮すれば、接触のタイミングは目前に迫っている。


 「戦車部隊を放置すれば、たとえ小部隊といっても側面や後方を突かれ、こちらの損耗が避けられなくなりますね。ならば……」


 「ここで止まって迎撃するべきだ、という考えね?」


 茜の言葉に、王子は頷いた。だが彼女はそこで、別の提案を口にする。


 「でもね王子、これだけの規模の軍が足を止めると、再度進軍するのに時間も労力もかかる。それに、全軍の進行が滞ることで、せっかくの急襲計画もずれる可能性がある。だったら、ここは私たちの部隊だけで迎撃するわ」


 言葉を止めることなく、茜は続ける。


 「だから王子の軍は予定通り進軍を続けて。私たちはあとで追いつくから」


 その場に居合わせた将たちはざわめいた。一人の将軍が声を上げる。


 「巫女様だけで、戦車部隊と戦えるのですか?」


 どこか侮るような声音だった。それを受けて、茜はあえて笑みを浮かべてから視線を王子に戻す。


 「王子、私は新参者。まだ将軍たちからの信頼が十分じゃないのも分かってる。でも、だからこそ、今ここでしっかり仕事をしてみせれば、皆が“王子の軍”としてまとまれると思うの」


 そして一歩前に出て、静かに言い切った。


 「大丈夫。シュメールの風の大巫女って、意外と強いんだから」


 ピヤッシリ王子は一瞬目を伏せ、思案の色を浮かべた。そのとき、彼の脳裏にはバビロニアの神官から聞いた話がよみがえる。


 ――シュメールの風の大巫女は、神託を操り、神力をもって敵を討ち果たし、ついには神すらも討った、と。


 それがどこまで史実かは分からぬ。だが、今目の前に立つ巫女は、確かにその“伝説”に名を連ねる存在だった。


 「……分かりました。風の大巫女様に、任せましょう」


 その一言で、茜の部隊は本軍から分離され、北方への迎撃へと向かう。本隊はそのまま進路を変えることなく、ミタンニ王国の王都ワシュカンニへの進軍を継続していった。茜の部隊がヒッタイト軍の本隊から分離され、北方に向けて動き出す。その進軍の途中、木立の陰に野営を整えると、茜はすぐに息を吐き出して言った。


 「ふぅ……これで監視もなくなったから、自由にやれるよ」


 「呆れた……最初からそれが目的で単独で戦おうとしてたの?」


 とミラナが半眼で睨みながらぼやく。


 「茜らしいよね。そういうとこ嫌いじゃないけど」


 とユカナは笑って応じた。茜はすぐさまアルタイの方を向き、軽く顎をしゃくる。


 「アルタイ? あんたの出番作ってあげたから任せるけど、大丈夫よね」


 「ったりまえだろ。俺を誰だと……じゃなくて……お任せください」


 「いや、今更取り繕わなくっていいって」


 「主、本当にアルタイに任せるのですか?」


 とリュシアが懸念をにじませながら問う。その表情は冷静だが、内には明確な危惧があった。


 「彼は時折、戦場で鉄砲玉のように突っ走る傾向があります。主の近くで戦わせた方が、暴走の抑止にもなるのではと……」


 その言葉に、アルタイはむっとしたように口を開いた。


 「おいおい、俺だって指揮官なんだぜ? 無計画に突っ込んで全部ぶっ壊すなんてこと、するわけねぇだろ。今回はちゃんと任務として動く」


 そして胸を張って続ける。


 「第一、鈍重な戦車相手に、この時代に騎馬隊が負けるわけがない。こっちは機動力と判断力で完全に上を行ける。俺が指揮する以上、絶対に大丈夫だ」


 とアルタイは自信満々に胸を張った。


 「たしかにアルタイが言うとおりではありますが、一応初戦ですからな……」


 とガルナードも慎重に補足する。それを聞きながら、茜は少しだけ顎に指を当て、考えを巡らせた。


 「じゃあ、少しだけ作戦を修正しようか」


 茜の作戦はこうだった。アルタイに敵戦車隊を背後から襲わせ、戦闘の中でこちらの陣地へと誘導させる。そして、ガルナード率いる歩兵とリュシアの弓兵が迎え撃ち、敵を挟撃して一気に殲滅する。


 「アルタイ、相手の後背から回り込んで、攻撃しながらうまくこっちに誘導できる?」


 「仰せのままに」


 と、いつになく真面目な返事をして、アルタイはすぐに自身の部隊――鉄槍騎兵3部隊、軽弓騎兵3部隊、あわせて480騎を率いて北方へと駆け出していった。


 茜はその背を見送ると、ガルナードに命じて鉄槍歩兵6部隊と鉄斧歩兵3部隊、計900人の歩兵を前線に展開させる。さらにその背後には、リュシア率いる複合弓兵4部隊(400人)を配置。そして茜自身の周囲には、神殿戦士、祈祷巫女長、そして親衛隊であるスパルタのポプリタイを布陣し、敵戦車隊が南進してくるであろう道を見据えた。


 「これで、準備は整ったね」


  陣形が整ったその光景を見つめながら、エンへドゥアンナは深く息を吸い込み、静かに感嘆の吐息を漏らす。彼女の目に映るのは、並ぶ兵の鎧に輝く鉄の光、緻密に計算された陣形、そして命令一下に迷いなく動く兵たちの姿だった。かつてアラッタの戦で見た茜の軍も、既にこの世のものとは思えぬ強さを備えていた。だが、今目の前にある布陣は、それをさらに洗練し、確信に満ちた姿へと昇華させている。


 「風の大巫女アカーネ、その軍、嵐を呼びて地を鎮めり……」


 エンへドゥアンナは自らの記録帳に、まるで詩のような文句を記し始めた。その頃、北方へ展開していたアルタイの騎兵部隊では、ミタンニ王国の戦車隊との戦が始まろうとしていた地平線の彼方に、うっすらと砂煙が立ち上るのを見つけると、アルタイは手綱を引きつつ鼻を鳴らした。


 「来たか……あれが噂の戦車隊ってやつだな」


 そしてちらりと後方を見やる。


 「……今回は、主の指示どおり動かねぇとマジでやばそうだ。今は穏やかにしてるけど、あの姉ちゃん、たぶん本気でキレると手がつけらんねぇタイプだろ……」


 気配を引き締めると、部下に命じて隊列を散開させ、敵の進路を読むように敵の後方に展開する。


 (まぁ……この時代の戦車部隊は機動力がある方だが、うちの騎馬隊とは比べものにならねぇな。しかも、あの姉ちゃんが俺に騎兵使わせてくれるってことは、もう勝ちは確定してるようなもんだ)


 思考を断ち切るように、アルタイは手を掲げる。


 「鉄槍騎兵、突撃準備! 目標は敵戦車の後背! 一気にかかれ!」


 号令と同時に、鉄槍騎兵たちが蹄の音を轟かせて突進していく。


 ミタンニ戦車隊は完全に不意を突かれた。重装の戦車は前面には強いが、背後からの攻撃には脆い。後方から突き上げられた戦車の搭乗兵たちは、次々と槍に貫かれて倒れていく。


 「ぐっ……なんだ、この速度は……! あれは……戦車ではない、馬に乗って戦う兵か……!? そんな兵科、我らの戦場には存在しなかったはず……!」


 敵指揮官が叫びながら、部隊を分離しての離脱を命じようとする。しかし、アルタイの目はその動きを見逃さなかった。


 「おいおい、逃げるなって。俺が怒られるんだからよ……」


 アルタイは、あらかじめ分けておいた軽弓騎兵に指示を飛ばし、後方から半包囲の形を完成させる。疾駆して展開した騎兵たちは、馬上から短弓を引き絞り、的確に戦車の御者や搭乗兵を狙って射撃を開始する。革製の張り出しに身を隠そうとした敵兵も、容赦なく放たれる連射の矢に倒れていく。


 矢雨を受けた戦車は次第に速度を失い、後続の車輪と衝突して混乱が広がる。脱輪して横転した一台から、兵が投げ出されるように飛び出すと、それも馬上の矢に討たれた。


 逃走を封じられたミタンニ戦車隊は、仕方なく南方――茜の布陣する方角へと追い込まれていく。


 「……これは、かなり拙い。このまま後方から攻撃され続ければ……戦車の旋回は遅い。対処が間に合わん。進むしか……ない!」


 ミタンニの指揮官は、わずかな兵を犠牲にして、主力を南へ向かわせる。


 「まぁ、そうするしかないよな」


 アルタイは離脱する主力には一切手を出さず、あえて足止めに残された戦車隊に攻撃を集中させた。前に向かっていた車輪がきしみを上げて反転し、最後の意地とばかりにこちらへ迫ってくる。


 だが、その動きはあまりに鈍かった。


 「その程度の機動で届くと思ったか?」


 アルタイの騎兵隊は、左右から弧を描くように展開し、戦車の死角に入りながら距離を詰めていく。馬上から放たれる矢が、戦車の御者を狙って正確に突き刺さり、御者を失った車体は制御を失って横転する。


 「落ちたぞ、囲め!」


 軽弓騎兵たちはそのまま包囲を強め、反転して突撃しようとした戦車の脇腹や後輪を狙って矢を打ち込み、次々と行動不能に追い込んでいく。中には怒りにまかせて突進してくる戦車もあったが、アルタイの騎兵はあざ笑うように回避し、すれ違いざまに搭乗兵の喉元を槍で突き、転がす。


 「戦車で騎兵に勝てるわけないだろ」


 戦車の軋む音と、兵士の叫びが消えるころには、残されたミタンニ戦車の影も、ひとつ残らず沈黙していた。


 「よし……あとは主に任せればいいよな」


 アルタイは風にたなびくマントを翻し、遠くに去りゆく本隊の塵煙を一瞥しただけで、再び騎兵たちに集結の号令をかけた。この時点で、ミタンニ王国の戦車部隊は既に400台のうち100台を切っていた。アルタイは、騎兵による攻撃でミタンニ王国の戦車300台近くを殲滅してみせたのだった。


 その頃、茜たちが待ち構える陣地にも、北方より押し寄せる砂煙が確認されていた。


 「……来たね。あれが残りの戦車か」


 茜は空を仰ぎ、ぽつりと呟く。


 「数が……思ったより、ずっと少ない。アルタイ、出来る子だったんだ」


 その声には驚きよりも、どこか満足そうな響きがあった。リュシアが静かに進み出ると、弓兵たちに簡潔な指示を与える。


 「目標は敵戦車部隊。進行速度と方位を予測し、未来の位置に照準を合わせてください。――第一射、放て」


 リュシアの合図とともに、複合弓兵たちが矢を空へと放つ。その軌道は見事に弧を描き、迫る戦車群の進路へと降り注ぐ。鋼鉄の矢が、吶喊する戦車に次々と命中し、木製の車体を貫き、搭乗兵を穿つ。


 「こ……こんなバカな……」


 ミタンニの指揮官が断末魔を漏らした次の瞬間、その命も尽きた。十数台の戦車が生き残り、混乱と恐怖に駆られて突進してくる。


 「第二射、照準を直接に。射て」


 リュシアの声が静かに響くと同時に、弓兵たちは矢を真っ直ぐに放った。強弓から放たれた矢は正確に戦車を貫き、突進の勢いを止める。最後の戦車が地に沈んだとき、戦場に静寂が戻った。


 「今回は私の出番はありませんでしたな」


 と、ガルナードが肩をすくめて言った。


 「被害がないのが一番だよ」


 茜は笑ってそう返す。戦いの余韻を残しながらも、その目には次を見据える光が宿っていた。


 ****


 エンへドゥアンナは、筆を走らせる。


 「風の大巫女アカーネ、天空より矢をもって敵を討ち果たす。天の神すら羨むほどの精妙なる一撃なり」


 その様子を見ていたミラナは、しばらく呆然としていたが、やがてぽつりと呟いた。


 「……私、あんなのとアラッタの時に戦ってたの? ムリゲーじゃん……」


 その声は誰に届くでもなく、風に流れていった。茜は少し歩みを進めながら、静かに言葉を発した。


 「ちゃんと任務も果たせたし、これでヒッタイト王国の中でも、もう少し動きやすくなるんじゃないかな。それと、こっちのやり方を誰にも見せずに勝てたのは、すごく大きいよ」


 リュシアが小さく頷いた。


 「……わざわざ部隊を分離したのは、それが理由でしたか。なるほど」


 「うん。派手に戦えば目立つし、疑われることもあるけど、結果だけ見せれば文句もないでしょ?」


 茜はにっと笑ってから、空を仰いだ。


 「さて、と。それじゃ、急いで本隊に合流しようか」


 ちょうどそのとき、北方の地平線に騎馬の蹄音が響いた。アルタイの騎兵隊が砂煙を巻き上げながら戻ってくる。


 「おーい、無事片付いたぞー!」と叫ぶアルタイの声に、茜は手を振って応える。


 そして、再集結した部隊は隊列を整え、再び東へ――ピヤッシリ王子との合流へと進軍を開始した。

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