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97話 神格と責任の凱旋

アニバの空は、乾いた風とともに抜けるような青を湛えていた。


石畳の王道沿いには、色とりどりの部族旗がはためいている。そこには南ヌビアの族長たちだけでなく、既にエジプトの恩恵を享受し始めていた北ヌビアの族長たち、さらにはナイル上流のクシュの一部族の長たちまでが並び立ち、神と王の凱旋を見送るべく列を成していた。誇らしげに胸を張る彼らの視線の先には、エジプト王ラムセス二世の姿。黄金に煌めく王衣をまとった彼は、ゆるやかに王笏を掲げ、アニバの丘に集った全ての者たちに向けて声を放った。


「余は、ヌビアの地に神殿を築く。風の神アカーネがもたらした平穏の地に、神々を祀る聖域を創ろう。さらに、南ヌビアに向けて灌漑工事を開始する。ナイルの恵みを、南ヌビアの奥地…いやクシュに至るまで届けるのだ。余はこれを必ずやり遂げる。南にも北と同様に富と繁栄をもたらすことを、ここに誓う」


その言葉に、族長たちは一斉に膝をつき、深く頭を垂れた。


「偉大なるファラオ――貴方の言葉、しかと受け取りました。北は既にエジプトの豊かさを知っております。今や我らの市場にも、王国の工芸品や穀物が溢れております。この富が、南へ、クシュの奥地へと流れ込む日も近いでしょう」


「アカーネ様の御旗のもと、我らの戦士をエジプト王国に送り出せることは、この上なき名誉。灌漑が実を結びましたら、さらなる兵を、第五軍団アカーネに加えましょう」


その声に呼応するように、見送りに来た兵や民たちから歓声が湧き起こった。


「第五軍団アカーネに栄光あれ!」

「ファラオと風の神に祝福を!」

「エジプトの繁栄は、ヌビアすべてに流れ込む!」


その叫びは、アニバの城門を越えてナイルの水面に反響し、大地を震わせた。ラムセス王は誇らしげに頷き、一人ひとりの族長に深く目を向けた。


「余は、ここに残る者にも、遠くに帰る者にも告げよう。エジプトの繁栄は、特権ではない。余はこの富を、北から南へ、そしてクシュの最果てまで届けるつもりだ。だからこそ、そなたたちにも期待している。地を耕し、水を引き、民を導け」


族長たちは胸を張り、拳を胸にあてて応えた。


「御命、しかと承りました、ファラオ! 富の奔流は、我らが魂も潤します!」


やがて、白帆を高く掲げた王国の船団が、ゆるやかなナイルの流れに乗って動き出す。船には、ラムセス王の遠征軍とともに、第五軍団「アカーネ」の基幹を担う約二千のヌビア・クシュの戦士たちが乗り込み、勇ましい表情で故郷に手を振った。それを見送る民の中に、ある老族長がつぶやいた。


「これぞ、新しき時代の門出よ。エジプトとヌビア、そしてクシュを結ぶ、神と王の誓い――」


その声は、まるで風に乗って、アカーネという名の旗のもと、次なる運命を告げていた。アニバの港に停泊していた王国の船団が、ついに出航の時を迎えていた。茜は普段のヒッタイト風の神装束ではなく、軽装の外套をまとい、用意された自分の乗船へと向かっていたが、その姿がヌビアの民に見つかった瞬間――


「アカーネ様に栄光をーっ!」

「我らが第五軍団、アカーネに感謝をッ!」

「風の神の名に誓い、忠誠を尽くします!」


大地が揺れるような歓声が、南ヌビアの民から、そして北ヌビア、クシュから集った者たちの口から一斉に飛び出した。


「うへぇぇぇぇ……」


思わず内心で呻く茜。しかし、こういう場で真顔に戻ったら、それはそれで後々面倒になる。


「ありがとー……ねー……」


そう言いながら、手を振って笑顔をつくる。顔はにこやかに。しかし心の中では――


(いやもうホント恥ずかしいからやめて!? “アカーネ軍団”とか正式名で叫ばないで!? 私、ただの歴女だから!?)


手を振るたび、遠くの見送りの民が歓声を上げ、笛や太鼓まで鳴り出す。祭りのような見送りに、とうとう茜の笑顔も引きつってくる。それでも船に乗り込むと、甲板の奥からユカナが顔を出した。


「いやぁ茜、人気者だねぇ。ふふっ、見てたよ? 顔が引きつってた」


「……もう無理……穴があったら入りたい……」


「この船には倉庫があるから、そこにでも?」とミラナが軽口を飛ばす。


「やめて! 本当に隠れに行きそうだから!!」


茜が座り込むと、エンへドゥアンナが静かに微笑みながら口を開く。


「人の信仰とは、時として神を神たらしめる。

――風、帆を満たし、神の名のもとに大河を渡る時。

民は喜び、女神は恥じらう。それもまた祝祭なり」


「それ、今ここで詠む必要ある!?」


「神話にするには、今が旬ですので」


「やめてええええええええええ!」


そんなやりとりに、船上の空気は和らぎ、王都ぺル=ラムセスへの旅路が始まった。茜の名を冠した軍団と共に――彼女の知らぬところで、信仰と名声は着々と積み上がっていた。ナイル川をゆるやかに下る船の上。水面に反射する陽光はまぶしく、風は心地よく、空には雲ひとつない。船上では、茜と仲間たちが甲板に円を描くように腰を下ろし、恒例となりつつある「信仰と神力の集計報告」が始まっていた。


リュシアが戦況盤を手に、整った声で口を開く。


「今回も主は、ほぼ無傷で遠征を終えられましたね。神様業がずいぶん板についてきたようです。今回は初期勝利点150に加えて、勝利点Sランクの100が神力に加算され――」


「主殿、かなり神力が貯まりましたな!」とガルナードが嬉しそうに頷く。


「……現在、主の使用可能神力は636となっております。そろそろ大幅な軍備増強のタイミングかと」


「主殿、これはまた…楽しみですな。しかもこちらは一切損耗がない、まさに理想的な戦いでありました」


「いや、今回はたまたま運が良かっただけでしょ。流石に次は、たぶんもっとガチで来るよ、敵が。想定だと自らの生存を賭けた異民族の侵攻への防戦だろうからね」


茜がため息まじりに肩をすくめると、アルタイが気楽に言う。


「まぁ、次はちょっとヤバそうだよな。生存を賭けた異民族って、命賭けて突っ込んでくるからな。でも主なら、なんとかするんじゃね?」


「……なんとかしなきゃいけないから、今回はちゃんと神力使って補強するの! 投石機も量産するし、弓兵も整備するし!」


そんな真面目な話をしていると、突然ミラナが前のめりになって割って入った。


「で? でで? 神力の加算は? 信仰による収入は? 私、今回かなり貢献した気がするの!」


「いや、ミラナさん…収入って…信仰ですよ?」とユカナが微笑みつつ突っ込む。


「信仰でも収入でも、どっちでもいいの! 問題は数よ、数! 私にどれだけ来たのか、リュシア、早く教えて!」


リュシアは少し呆れたように頬に手を添えたが、すぐに冷静な口調で答え始めた。


「ぺル=ラムセスを中心に、主への信仰が劇的に拡大。主には追加で140、ユカナ様に60、ミラナ様に60が付与されました。さらに、ヌビア地域では主に70、ユカナ様・ミラナ様にそれぞれ30。クシュでも同様の数字が加算され――」


「それって、すごくない!? 私、どんどん信仰集めてる!」


「……まだ終わっていません。さらに、ヒッタイト王国にも主のこの時代への降臨が伝わったようで、そちらで主に50、ユカナ様とミラナ様に20ずつ信仰が加算されています」


リュシアはまとめた数字を読み上げた。


「結果、主が個人的に持つ神力が415、ユカナ様が213、そしてミラナ様が160に到達しました」


「やったああああああ! 神力160よっ! アラッタ王国の分を足せば、私の恒常的信仰点260! ついに私は、押しも押されぬ上位神! 信仰バブル到来! ユクアに見せてやりたいわ、この私の生まれ変わった姿!!」


「……あのさ、それが残念神なんだよね……」


茜が冷静に呟くと、ミラナは突如として両手を合わせて祈り始める。


「アカーネ様、どうかこの私の今後の同行のための契約更新を……!」


「却下。今回まだ何もしてないでしょ? 口だけじゃ、テラ様に掛け合えないよ?」


ユカナも横から加勢する。


「そういえばミラナさん、何か功績ありましたっけ? …って、私もだけど」


「あるある! この時代に来るとき、私の神通力で王の目の前に降臨したことで、ラムセス王との交渉、早く進めれたじゃない! あれって功績でしょ!?」


エンへドゥアンナが静かに首を振る。


「それは茜の機転があってこそかと。ミラナ様は……その、神話的背景要員としてしか働かれていませんよね」


「うそぉ!? じゃあ私の存在意義って……!」


茜は肩をすくめて言った。


「一応上位神なんだからさ、ちゃんと役に立つことやってよ。そしたら、テラ様に契約更新を掛け合ってあげてもいいけどね」


その言葉に、ミラナは一転して真顔になる。


「ま、まぁ…まだ時間はあるし…これから私が本気になれば……!」


「残念神? それって……ただのニートの台詞なんだけど……」


その言葉に、船上はしばし笑いに包まれた。笑いの余韻がナイルの風に流れていく中、リュシアがひとつ咳払いをして、戦況盤を改めて手にした。


「ところで主。今回の補強方針について、そろそろご判断いただけますか?」


「……うーん、今すぐってわけじゃなくて、いったんぺル=ラムセスに戻ってからで良いかな?」


茜は甲板にごろんと寝転がりながら返す。


「それにさ、今回の遠征で“私の軍団”が出来ちゃったわけでしょ? ってことは、訓練とかも、しないとダメなんだよね? 今回の補強って、そっちの進行具合に合わせる方が良いと思うんだよね」


「主殿のご判断、ごもっともにございます」


ガルナードが頷く。


「第五軍団アカーネに配属されるヌビアやクシュの戦士たちは勇敢ではありますが、集団戦においては未熟。武装も簡素で、装備の質においても劣っております。訓練と装備の強化は必須にございます」


「訓練はともかく、装備の話になると金がなぁ…」


と、アルタイが腕を組む。


「とはいえ、それは主がなんとかするんだろ?」


「……え? 何それ私がやんの!? 訓練はともかく、装備はエジプト王国が準備してくれるんじゃないの?」


驚きの声を上げる茜に、リュシアが淡々と返す。


「主、何を今さら言っておられるのですか?第五軍団“アカーネ”なのですから。実際にこの時代に存在している神格が軍団名の由来である以上、神自らが準備を担うのが自然かと。それに、アカーネ神殿の財は余っておりますので、活用すべきです」


「そ、そうだけどさぁ……」


渋々起き上がった茜は、頭を抱えるように言う。


「じゃあ、とりあえずヒッタイト王国に連絡して、武器と防具を分けてもらうところから始めよっか。あそこ、武器の技術かなり進んでるしね」


「それがよろしいかと」


と、リュシアがすぐさま同意した。


「ヒッタイト王国の装備を取り入れれば、第五軍団はエジプト王国軍の中でも精強な戦力となるでしょう。民衆の信仰の面でも“神の軍”として強く印象付けられます」


「ふふふ…これはもう、神話の軍団ですね」


と、いつもの神界の紙を取り出したエンへドゥアンナがうっとりとした顔で詩を書き始める。


「“神の槍、神の旗を掲げ、アカーネの名のもとに戦う第五の軍――神話の章、ここに記されん”」


「……ちょっとあんたね、それ本気で書かないでよね? これ以上変な記録残されたら、私の胃がまた…」


茜が思わず叫び、またしても船の上に笑いが広がる。


****


数日後、ナイルの流れがゆるやかに広がる中、遠征を終えたエジプト軍の大船団は、ついに都ぺル=ラムセスの川沿いに到着した。水面を滑るように進んできた船から、ラムセス王を筆頭に将兵たちが次々と下船する。


「いざ、凱旋するぞ――!」


王の一声と共に、軍勢は整然と列を成し、徒歩で市街へと進軍を開始する。街路は既に人で埋め尽くされていた。民衆総出の熱気が空を震わせるかのように響き渡り、まさに凱旋行進にふさわしい熱狂に包まれていた。


「ファラオ万歳!ヌビアを制した英雄に栄光あれ!」


「アカーネ様に感謝を!南の風に祝福を!」


歓声が波のように押し寄せる中、王宮前の広場にはネフェルタリ王妃の姿があった。金色の装飾がほどこされた正装に身を包み、微笑みを浮かべながら群衆と兵たちに手を振る。とりわけ、茜に向けられたその笑顔は、温かみさえ感じられるものだった。


その視線を感じながら、茜は民の声援に応えるように、笑顔で手を振り返した。その人波の中には、別の一団の姿もあった。モーゼを中心とするヘブライ人たちだ。かつて過酷な労働に従事していた彼らも、今ではぺル=ラムセスで比較的穏やかな生活を営み始めている。モーゼは静かに、目を細めながら呟いた。


挿絵(By みてみん)


「アカーネ様を神として崇めることはできぬ……だが、それでも、あの方は偉大な導き手であり、我らを『約束の地』へ導くことも約束してくれている。これは…感謝を忘れてはならぬ存在だ」


それに続くように、周囲のヘブライ人たちもそれぞれの言葉で茜を称えた。


「アカーネ神殿だけは、我らにも施しを与えてくれる」「我らの信仰の自由を認めてくれる唯一の神殿だ」「我らの神とは違えど、あの方は偉大だ」


茜はその人々の姿を見つけると、満面の笑みで声をかけた。


「モーゼ! みんな! 無事戻ったよ! またアカーネ神殿に来てね!」


その明るさに、モーゼをはじめとする人々は温かな拍手と歓声で応えた。茜が凱旋の列の中で群衆に手を振りながら歩いていると、通りの一角から彼女を見つけたエジプト商人たちが次々と駆け寄ってくる。その顔は皆、喜びと興奮に満ちていた。


「アカーネ様! ご無事で何よりです。そして、南からの新たな富を、遠くクシュに至るまでエジプトにもたらしてくださり、誠に感謝しております!」


ひときわ声を張った年長の商人がそう言うと、周囲の仲間たちも一斉に深く頭を下げた。茜はその様子に笑みを浮かべながら、軽やかに手を振って応じた。


「あっ、みんなも来てたんだ! 今度また宴に呼んでよ? 今回もちゃんと無事に戻ってこられたし、ほら、少しはエジプトも潤ったでしょ?」


その言葉に、商人たちは顔を見合わせて頷き、誰からともなく誇らしげに声をあげた。


「もちろんでございますとも! アカーネ様の遠征は、ただの勝利ではありません。ヌビアを完全に制し、クシュにまで及ぶ商業路が開かれたのです。これは我ら商人にとって未曾有の繁栄の機会――」


「ゆえに!」


「アカーネ様の戦勝を讃える宴は、我らエジプト商人の誇りをかけて、盛大に開催いたします!」


その力強い宣言に、茜は内心で思わずガッツポーズ。


(よっしゃあ! またタダで美味しい料理にありつける! ああ、私って偉い! これぞ現代OLの知恵!)


しかしその顔はあくまで涼やかに、礼儀正しく微笑みを浮かべたまま。


王宮前の広場は、すでに押し寄せた民衆で埋め尽くされていた。ヌビアからの凱旋の報に胸を躍らせたエジプトの人々は、ファラオの登場を今か今かと待ち構えている。やがて、高らかに響くラッパの音と共に、ラムセス王が広場に姿を現した。王が壇上に立つと、辺りはぴたりと静まり返る。空気そのものが張り詰め、ファラオの声が響き渡るのを待っているかのようだった。


「民よ――よく聞け。」


ラムセス王の声は朗々と、王国中に轟くように響いた。


「この度、余はヌビアへの遠征を行い、南の地を流血なく平和裏に従えることに成功した。さらに上流、クシュの地においても、我がエジプトの威光と繁栄の兆しを示すことができた。」


ざわ…と民衆がどよめく。既にぺル=ラムセスには伝えられていたが、クシュにまで、ファラオの力が届いたという事実がラムセス王自らが語った事で、皆の胸は高鳴った。


「これにより、エジプトの繁栄はナイルの源まで広がろう。そして――」


ラムセス王は、壇上から一歩前に出て、群衆の熱気を見渡した。


「この遠征において、アカーネの力なくして成功はありえなかった。アカーネは、ヒッタイトとの和を結び、エジプトに繁栄をもたらした女神であり、今回もまた我らに未来をもたらした。」


群衆から、自然と感嘆の声が漏れる。


「ゆえに、余はここに宣言する!」


ファラオの声が、一段と高く空を突き抜けた。


「南と北の魂を束ね、神の風を掲げる第五の軍団を設立する。――そしてその名を、〈アカーネ〉とする!」


その瞬間、広場は雷鳴のような歓声に包まれた。


「アカーネ様に栄光を!」


「エジプト王国万歳!」


「第五軍団アカーネ、万歳!!」


民の声は波のように広がり、建物の壁に、空に、ナイルの水面にまで反響するかのようだった。王妃ネフェルタリも驚きつつも微笑み、視線を茜に向けて小さく頷く。茜はその声援を背に、(うわぁ……これはもう、完全に逃げ道ないやつだよね…)と内心で頭を抱えるような思いに襲われていた。しかし民衆の視線と歓声を前に、今さら仏頂面をするわけにもいかず――彼女は渾身の作り笑顔で、手を振る。


「アカーネ様ぁぁあ!!」


「女神アカーネよ、我らと共に!」


(あー…もうだめだ……)


そんな思いとは裏腹に、振られた茜の手に応えるように、歓声はさらに大きくなっていく。茜は、果てしない歓声の渦の中、笑顔で手を振り続けながら、内心では冷や汗ものの状況整理を始めていた。


(……補強。訓練。神殿管理。ヌビアとクシュの戦士達への武装調達。あと、モーゼたちのカナンへの案内もあるんだよね……)


祭りのように盛り上がる市民の姿を横目に、茜の頭の中ではすでにタスクの山が崩れかかっていた。次の戦いに備えた兵の再編と増強だけでなく、第五軍団アカーネの育成と武装の調達も急務。そしてアカーネ神殿の管理、モーゼ達の約束の地への案内まで含めれば、自分の仕事はもはや社長なみで、普通のOLが対応するレベルを遥かに超えていた。


(私の名前の軍団なんて作られちゃったんだから、そりゃ私がちゃんと見なきゃって話になるよね……くっ、こういうのが「逃げ場のない名誉」ってやつなんだよ…!)


リュシアの冷静な顔が思い浮かび、「当然です」とでも言われそうな気がして、茜は思わず苦笑いした。


(でも、やらなきゃね…。せっかく信じてくれる人がいて、期待してくれて、私の名前で軍団まで動くんだもん。中途半端じゃすまされないか――私が、この軍団をちゃんと育てなきゃ)


彼女は、胸の奥で静かにそう決意した。喧騒の中でふっと覚悟の炎が灯る。そしてもう一つ、現実的な問題が脳裏をかすめる。


(それにしても、やっぱり手が足りない……神殿の事務処理、神殿管理、軍備調達、物資調達…ぜんぶ私ひとりじゃ到底無理。こうなったら……あの残念神達も、そろそろ本気で働かせるしかないか)


ミラナやユカナの気怠そうな顔を思い出し、茜はにやりと口の端を上げた。


(うん、残念神には当然として、あの子にも「働かざる神、祀るに値せず」って言ってやらないと…)


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