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崩れて落ちていく


 気づいたときには遅かった。いや気づく気なんてなかったくせに。

 口の中は、甘いあまい砂糖の味で満たされる。リリィは嬉しそうに笑う、いつもの笑い方で。食べられているのにそんな顔で笑うものだから、わたしはさらに混乱していく。


「サラ、そろそろ補修して。これ以上はなくなってしまうわ」

「補修………したら、リリィは消えるの?」

「いいえ、私はこのままよ。前より多く砂糖を使って、元の大きさにしてくれる?」

「そんなこと………」

「大丈夫よ、少なくとも暴れたりはしないから」


 うろたえながら、今までリリィにしたことを思い出して罪悪感にかられながら、補修のための砂糖を用意する。後悔するくらいならやらなければよかったのに。いまさらながらの後悔をしながら、砂糖で彼女を形成した。



 久しぶりに元の大きさまで戻ったリリィは初めて会ったときのようだった。きれいなあめ玉は優しくこちらを見て、さらさらとした繊維はきらめいている。どこまでもしろい肌は扇情的で、すぐにでも舐め取りたい気分だ。最初にあったときのように、わたしの胸は鼓動を早めた。

 と、同時にわたしがやらかしたあれやこれを思い出して、それをリリィ本人から覚えていると言われたことを思い出した。胃から何かがせり上がってくる。グッとこらえてリリィを見た。


「初めて会ったときのようね」


 まるで心すら読み取られてしまうかのようだ。ぼんやりと、リリィに手を伸ばす。ざらりとした感触は、はじめに触ったときと一緒だった。これは―――わたしが好きになったリリィだ。そう、直感した。


「ねえ、サラは私が好きよね?食べちゃうくらいだもの。………取り込んで一緒になるのと、またこうやって少しずつ減らして、また増やして、減らしてって繰り返していくの、どっちがいい?」

「………リリィはそれでいいの。どっちにしたってリリィは、痛いでしょう怖いでしょう。わたしがやったこと、怖かったんでしょ。わたしが怖くないの?わたしを恨んでるんじゃないの」


 崩壊するように、あふれ出した言葉は止まらない。


「ねえリリィはリセットされるたびに、補修されるたびに、何を考えてたの。ぜんぶ覚えてるなら、知ってたなら、なんで忘れたフリを。わたしを責めないで、わたしに笑いかけるの。なんで。なんで、なんでなんでなんで!」


 リリィがゆらいで、目の前の景色すらうまくつかめない。目に薄い膜が張ってゆらいでいるせいだ。拭っても拭ってもきれいになることはない。次から次へとあふれ出して止まらないからだ。言葉はもうつっかえてしまって、出てこない。出てくるのは嗚咽ばかりだ。なんて情けない。

 自分のしたことに責任が持てないでいる。わたしが泣く資格なんてありはしないのに。


「サラ。私も好きなの、サラが。だから憎いなんて、怖いなんて思ったことはないわ。記憶に関しては………そうね、もう少し経ったら教えてあげる。わからないままの方が幸せってこともあるのよ」


 ざらざらとした手がわたしの頭を滑っていく。あまいあまい香りがわたしを占めていく。

 初めて重ねた唇はとても甘かった。


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