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山奥の模型 船

作者: 松川正郎
掲載日:2021/06/29

「どうやら今回も失敗だ。」 

「全部が台無しだ!」


彼は怒り口調で、ため息と独り言を、つぶやきながら、ほそい木の棒を、刃で削る。

山奥の田舎にある、川の横に小さな家に、手のひらサイズの船の模型を、作って売る男がすんでいた。

名は高嶋ケイスケ、五六歳。ケイスケは、この作業をやって、約三年になる。

出会いはたまたま、地元の子どもが、壊れた船を治してほしいと、頼まれたからだった。

手にとって治していくうちに、細かく作られた細い柱など、手のひらサイズにおさまる、この大きさに興味を惹かれてしまった。

また幼い頃から、細かい作業をするのが、得意でもあったからだ。

七つ目に取り掛かっていた。壁には、ノコギリや金槌などが、吊るしてあり、地面には木のクズが、散らかっている。ヤスリで磨いた粉などもおちている。

ヤスリで、表面をととのえ、鉛筆の後などを、消していく。

煙草を口にしながら、製作途中に、あるミスに気づいた。

船底の板を、裏表反対にはってしまっていた。見た感じは、気にならないが、ケイスケにはこれが心の中で、大きな傷ができる程に許せなかった。

完璧主義の彼には、失敗が人生にとって、苦痛で我慢できないことだった。

昔から、変わらずの癖のようだ。


ケイスケはぼーと、外の方の森を眺めた。

今は雨。

梅雨の季節に入った。

薄暗い、畳の部屋の中は、ジメジメと肌から意識、頭に伝わっていく。

雨音とカエルの鳴き声が、部屋中に響く。

心の中は、失敗で頭いっぱいであった。




ケイスケは、散歩に出ることにした。

家の門をすぎると、まだ雨はやんでなく、地面は荒れているため、水溜りが目立つ。

よそみなどをしていると、下駄もろとも、足をくじいて、滑って、ドロで汚れてしまうだろう。

そんなことを、考えながら、家からあるいて、6分ぐらいで、商店街についた。

ここの商店街は、山の湧き水が豊富なため、和菓子屋が多いことで有名だった。

よそからの旅行者が、よく、この辺りを歩いているのが、目立っていたが。今日は雨のため、歩いてる人は少なかった。なにせこの山奥の田舎は、この時期がくると、よその町とつながる道は、土砂などで通れなくなることが、毎年のことであった。

ケイスケは、発散のため、よくこの辺りを散策する。

なによりの行きつけは、仙豆菓子 という、おもにおはぎが有名で、よく売れていた。

だがケイスケは、おはぎではなく白玉を好んでいた。見た目は白玉と水だけの地味な感じだが、その地味さがいい。

最近は、見た目が派手なものを、よく目にするが。ケイスケは、この控えめさが好きでもあった、また味はなにより、砂糖水が爽やかなあまさで、白玉が口の中をなめらかに滑る感じが、たまらない。こんな梅雨の時期は、なにより、重く暑苦しいジメジメした、空気の中を、ゆっくりと、わすれさせてくれる。

ケイスケは、食べ終わった後、家にもどることにした。

普段は、晴れていたらもうすこし、この辺りを歩きたがったが、今日は雨のため、早く帰ることにした。



ケイスケは、道に注意しながら、家に到着した。そのあと、昼寝などをして、作業に取り掛かることにした。

時刻は午後三時すぎたころ、昼寝から覚めた。あとちょっとで夕方になるが、外の方を見ると、空の明るさは昼間と、変わらないかった。

作業に取り掛かった。先程の、裏表反対の板をどうするか、考えたが、そのままにすることに決めた。

すこし気になって、仕方がないが、壊れたりすることでもなかった。一度、似たような失敗することが多いこともあったため、取り掛かっていた、途中の船を、苛立ちをたてながら、壊してしまうことが、多かった。

船が完成するまで、三ヵ月はかかった。

いざ完成すると、清々しく気持ちがいい。タコ糸が乱れることなく、綺麗にはってあり、細い柱が、約一ミリ、二ミリぐらいの太さが、たまらない。

まずケイスケは、設計図をかかない。イメージ図を、描くのが苦手だからだ。描いたとしても、メモ程度ぐらいだった。

主に、図鑑にのっている写真を、参考にしていた。

また、実物を写真に撮りにいくこともある。ところでどんな船作ったか、それは主に、中世ヨーロッパの、船を作っていた。それに彼は、実際にはない、船を作ることにこだわっていた。といっても、特に違いというものは、わからない。だが彼には、他人にはわからないところに、こだわっているんだろう

さっきまでは、ミスで落ち込んでいたが、なんだかんだでケイスケは、ものすごく満足なものだった。

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