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朝奈さんの家へ

『11月7日に収録をします』



家のベットでのんびりしていると、朝奈さんからのラインがきた。俺は慌てて返信する。



『了解です。どこに行けばいいですか?』



……既読はついたが返信がない。まあ、待とう……と思ったら数分後に返信がきていた。



『私の家』



そりゃそうか、収録なんて家以外でできるわけない。スタジオ借りるでもしないと。


……マジ?俺は11月7日に朝奈さんの家にお邪魔するのか?え?現実?





当日。俺は朝奈さんに指定された駅で待っていた。時間のちょうど十分前。意識してる勘違い男と思われたくなかったので、普段と大差ない服装(綺麗目)で挑む。朝奈さんが一人暮らしだということだけは、前から知っていた。


俺はめちゃめちゃ緊張していた。朝奈さんの家に一人で行くということ。『ゆかなん』さんの収録が見れること。その二つのクソでかイベントが同時に襲いかかっているのだ。緊張するなという方が無理な話だ。



「こんにちは、柏木君」


「あっ!?こっ、こんにちは、朝奈さん!」



朝奈さんが背後から話しかけてきた。朝奈さんはいつものような、ゆるふわ系の格好だ。とても可愛らしい。俺はそうとうキョドッてしまった。



「じゃあ着いてきて、柏木君。こっちだから」



朝奈さんに言われるがまま着いて行く。朝奈さんが先導して、俺がうしろを歩いていた。無言だ。気まずいぞ、何か話題はないか……。



「……朝奈さんって、関西出身だったんだ?」


「うん、京都に住んでたの」


「へぇ〜……京都いいよね」


「うん」


「……えーっと……」



やばい、会話が続かない。



「……なんかごめん朝奈さん。無理やり家に行くようなことになって……」


「あ、うん。えっと……ごめん。私も緊張してて。まさか初めて男の人を家に呼ぶのが、こんな形になるなんて……」



朝奈さんの一人暮らしの家に乗り込む、初めての男が俺なのか。



「なんかほんと申し訳ない……」


「い、いいの。柏木君は契約を守ってくれればいいから。気にしないで」



少し路地に入ったところのマンションが、朝奈さんの住む家だった。オートロックの番号を朝奈さんが打ち込む……打ち込まない。番号を押す所の前で、突っ立ったままの朝奈さんが俺の方を振り向いた。



「あの、柏木君。後ろ向いててくれる?……一応」


「あ……わかりました」



俺が朝奈さんにいかに信用されてないかが、どんどん浮彫りになっている。……心にくるな、これは。


俺が朝奈さんに背中を向けている間に、番号が打ち込まれていく。扉が開くと、朝奈さんが俺を呼んで招き入れた。2階の203号室。それが朝奈さんの住んでいる所だった。俺と朝奈さんが扉の前に到着する。



「柏木君、ちょっと扉の前で待っててくれる?」



そういって朝奈さんは家の中に入っていった。がちゃんと閉められた扉は、しっかりと鍵のかける音がした。俺が勝手に、家に入ってこないようにするためだろう。


サークル活動では仲良くやれてたと思ってたんだけどなぁ……。あんまり熱心じゃなかったとはいえ、一年同じサークルで活動していてこの信用の無さ。うーん、泣ける。


まあでも、この場合は朝奈さんがしっかりしてると言うべきなのだろう。恋人でもない男と一人暮らしの家で、二人きりになろうとしているのだから。俺はそうやって、なんとか自分をなだめた。


ガチャっと扉が開いて、朝奈さんが半身だけ外に出した。



「柏木君、ちょっと後ろ向いてもらっていーい?」


「え?う、うん」



俺は言われた通りに後ろを向いた。俺の手首に朝奈さんの柔らかい手の感触が伝わり、ドキッとする。朝奈さんが後ろから、俺の両手首を掴んで俺の背中側に持っていった。そのまま何かで手首をぐるぐる巻きにされる。


え?



「あ、朝奈さん?一体何を……」


「ごめんね、柏木君。もうちょっとじっとしててね」



ちらっと後ろを見たところによると、どうやら俺の手首はタオルでぐるぐる巻きにされていたらしい。さらに朝奈さんはタオルの上から紐を巻いてゆく。俺の手首は全く動かなくなった。



「朝奈さん、これは……?」


「ごめんね、柏木君。信頼してないわけじゃないんだけど、一応ね……襲われたら困るし」



な、なるほど。だがこの絵面を他のマンションの住人に見られたら、流石にやばくないか。手首の縛られた男を、部屋に招き入れる女子大生の図はあまりにも変態的だ。


俺はこのやばい状況を打破するため、急いで朝奈さんの家に入ろうとした。が、その動きを朝奈さんに背中側からガシッと腕を掴まれ止められる。



「まって、柏木君。まだ部屋の方を向いちゃダメ」


「え?」


「これ、つけるから」



朝奈さんがそう言うと、俺が質問する前に視界が真っ黒なアイマスクで覆われた。


……目も塞がれるの?



「これでよし。じゃあ、どうぞ柏木君」



どうぞって言われても……。見えないし、腕は縛られてるし。


絵面の変態度合いだけが増してしまった……。

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