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契約

『大学の図書館で待っています』



そういう朝奈さんからのラインがきていた。美女に呼び出されるなんて羨ましいと思われるかもしれないが、俺はいまからその美女に契約書を書かされるのだ。


人気の少ない図書館に足を踏み入れる。今日は大学の授業が休みだ。


朝奈さんが俺を呼び出した場所は、図書館にある個室のスペース。区切られた小さい部屋に、長机と椅子だけが置いてある。個室トイレより少し大きいぐらいのサイズだ。事前に予約すれば誰でも使える。


俺は2号室と書かれた部屋の扉を開けた。



「……おはよう、柏木君」


「お、おはよう、朝奈さん」



朝奈さんの雰囲気にひるんでしまう。朝奈さんの様子は、まるでこれから戦にでも行こうかという殺気立った感じで椅子に座っていた。机にはなんだか厳つい感じの文章が書かれた書面が置いてある。



「この契約書にサインしてもらってもいい?柏木君。ちゃんと説明しようか?」


「い、一応説明してくれると助かります……」



あんまりにもそれっぽい契約書だったので説明をお願いした。椅子は一つしかないので、俺は立ったままで朝奈さんの話を聞く。



「まあ、私がそれっぽい文章を書いただけだから法的な効力なんてないのだけれど、これは私が本気だってことの証明で書いたの。契約の内容は前も話した通り、活動の様子を見せるから私の秘密を皆にばらさないこと。皆っていうのは大学の人だけじゃなく全人類ね」


「……はい」



個室といっても、隙間は空いているので声は通る。そのため色々ぼかして説明していたが、とりあえず朝奈さんが本気だってことは伝わった。



「ちなみに、もし柏木君がバラしたら……」


「バラしたら……!?」



朝奈さんがにっこり微笑んだ。本当に怖い。笑ってるのに殺気が出ている。目だけが笑っていない。



「私が全力で柏木君の大学生活をぼろぼろにしてあげる。例えば、柏木君に襲われたーって言いふらす……とかね」


「ひっ……!?」



恐ろしすぎる。朝奈さんの言うことなら皆信じてしまうだろう。朝奈さんは大学で広く名が知られているし、そんな人にそんな噂を流されたら俺の平穏な大学生活は終わりを告げるに違いない。


朝奈さんは恐怖に震える俺を見て、これは効果があると確信したようだ。ふふっ、と笑い声をこぼして契約書を俺のほうに差し出した。ご丁寧にペンも添えて。



「サイン……してくれる?」


「は、はい……」



俺は契約書に『柏木 篤』としっかりサインした。朝奈さんは俺のサインをしっかり何度も確認する。パシャりとサインした書面の写真も撮っていた。



「じゃあ、よろしくね柏木君。またラインで収録日を教えてあげるから」


「あ、ありがとう」


「契約……守ってね?」



朝奈さんはにっこりと殺気立った笑顔を見せた。俺は全力で頷く。


今日から俺にとって、朝奈さんのイメージはゆるふわ清楚女子ではなくなった。俺にとって朝奈さんは、殺気放つ系女子だ……。

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