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ど変態たち

「可愛かったな」

とびきりの笑顔で笑っていた須々木を思い出しつつ、しみじみといった。

口元のにやけが止まらない。

「ああー、でも深葉のも見てみたいよな」

同じく、にやにやと笑いつつ名門が言った。

そして、深葉のおしゃれした姿を思い浮かべる。

「確かに」

と短く返した。

深葉も深葉で破壊力が高すぎる! 

と、僕が妄想にふけっていると名門が

「買う服を着てたら、ピッってできないんじゃね」

と首を傾げつつ、いった。

確かに一理ある。というか、常識だ。

それゆえ、すぐに深葉が気づくだろう。

「まあ、気づくんじゃないか? 深葉もそのくらいの常識はあるだろ」

「まあ、佐里は常識人だからな」

なぜか、彼女のことをよく知っているというふうに名門が言った。

なんだ? 唾つけてんのか?

だが、名門が常識人と言った時点でもうそいつは非常識のかたまりだと思うので、とても心配だ。

ストリップショーをやってたら、と考えるとやばい。

痴女になってしまうではないか。


現在、人の数はそこそこ増えており、一列に並べられた試着室の前にはかならず靴が置いてある。

ってことは、レジ前にもかなりの人がいるんだろう。


「やっぱ行ってくる」

そう短く言って、レジの方角を向いた。

驚いている名門の顔が一瞬視界に写ったが、お前はそこで呆けてろ。

なんて思いつつ、レジ前に向かう。


レジ前で服を脱ごうとしている須々木がいた。

最近はやりのロリビッチか?


会計の店員が、なにか言おうとしてあわあわとしている。

幸いなことに女店員だったが、服を買いに来た男どもが野獣的な視線を送っている。

今にも襲われそうだ。


嘘だろ。

気づくだろ。

服買ったことがないのか?

てか、脱ぐとしても試着室で脱げよ! 予想のはるか上を行く女だ!

あいつは自分の容姿に気づいてないのか!!


こんなことを数秒のうちに考えつつ、わーわーひたすらに騒ぎながら、僕が羽織っていた上着を須々木の上半身にかぶせ、試着室につれていく。


あまりに一瞬の早業にみんながすこしフリーズした後、あー、と残念そうな声が上がる。女店員が感謝したようにこちらを見つめてきたので深々と礼をかえす。

・・・ほんと迷惑かけてすいません。

そして、男どもをにらみつつ、すっぽりと小柄な須々木の上半身を隠した状態で署(試着室)まで連行する。

なんというか、TVで見る連行されてく犯人そのものだ。

そのとき、突然須々木が暴れだした。

手足を乱暴に振り上げている。

ちらりと下着が見えそうでほんとうに心臓に悪いし、女店員はあたふたとしているし、

男どもはチャンス得たりとばかりに近寄ってくる。


「馬鹿!お前の下着姿とか絶対破壊力高いって!」

あまりに暴れ方が激しかったので怒鳴った。

が、台詞がダメだったのか、須々木から怒鳴り返された。

「そんなことをいうあなたの方が連行されるべきです。ロリコンが!」

先ほどまでずっと見ていた男どもは自分たちがロリコンと気づき、がっくりと肩を落としていた。

ロリコンだとっ!!

「ついに自分のことをロリと認めたなあ! 」

奇異の視線が非常に痛い。

だんだん、まわりの男どもがバカップルをみる目になり、肩身がせまい。


無限かと思われた試着室にようやくついた。

「いいからこんなかで着替えてよ!」

そういって勢いよく試着室のカーテンを取っ払う。

あばれる須々木を抑えるため、須々木の方を見てばっかりだった。

よく考えれば最初に中に入っているか確認すべきだったが、靴がなかったので入ってないだろ、誰も。

その瞬間、男たちがげっと目をそらし、心配でついてきていた女店員がキャッと目を手でおおった。

なんだなんだ?

「二人で盛り上がってるとこ悪いのだけど」

深葉がやけに通る声ではっきりと言った。

「試着室で名門が着替えているわよ」

んな馬鹿な!

そう思い、試着室を見ると

トランクス一丁で服を手に持った名門がいた。

「てへ」

名門はいたずらがばれたガキ大将のような憎めない面をして、舌と下を出していた。


照れてんじゃねえよ。筋肉変態。

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