割れ鍋に綴じ蓋3
「愛美さん! ごめんっ! 本当にごめんっ! 愛美さんの事、私、好きだから!」
「え、るみちゃん?」
るみちゃんと私は同じグループだけど、活発で明るいるみちゃんは他のグループの子達とも仲が良い。
グループの中でも鈴ちゃんとはとても仲がいいけど、私や麻耶ちゃんとは、鈴ちゃんに頼まれて仲良くしてるって感じだったから、すごく意外だった。
「あー、あの、愛美さん! 違うんです! そんなつもりじゃ決してなくて! ごめんなさいごめんなさい」
そして、いつ来たのか麻耶ちゃんは私の足元にうずくまっている。
「私もごめんなさい。愛美さんについ甘えてしまって」
鈴ちゃんもやって来て、私に頭を下げた。
「ううん、私の方こそごめんね。迷惑ばかりかけてるから、みんなが嫌になっても仕方がないと思う」
「嫌になんてなってない!」
「違うんです!」
「そうじゃないのよ。愛美さんの迷惑なんて大した事ないし、何も悪くない。悪いのはむしろ私達の方で、」
「そうに決まってるじゃない。ごちゃごちゃ言い訳しないで、はっきり人身御供にして悪かったって言ったら?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
林田さんがやって来ると三人は黙ってしまった。
「愛美さん、ごめんね。もっと早く声をかけてあげられれば良かったんだけど、私、恐がられてるみたいだったから、話しかけづらくって。でも、いくら鈍くて耐性があるからって、人身御供にするのは間違ってるわ!やり過ぎだし、かわいそうよ。今までイジワルしてた私が言うのもなんだけどさ」
えっと、今、かわいそうって言った?
林田さんは私を庇ってくれてるの???
林田さんが何に怒ってるのか全くわからないけど、お昼休みのあれは睨んでいたんじゃなくて、私を気にかけてって事?
嫌われてると思っていたから、すごく嬉しい。
「あの、林田さん、人身御供って?」
「第一、潰れたらどうすんのよ。代わりになる人なんていないんだからね!私達には愛美さんがどうしても必要なの。なら、助け合わなきゃ。でしょ?じゃ、そういうことで、よろしく!」
「あの、林田さん?」
林田さんは言うだけ言うと、宮沢さんと一緒にさっさと教室を出て行った。
「ったく、勝手な事言いやがって」
知らぬ間に、河合くんが傍に来ていた。
林田さんが出て行くと、今度はクラスの委員長がやって来て私の前に立つ。
「高岡さん、今日はありがとう。クラスを代表してお礼を言うよ。高岡さんのおかげで、今日はとても平和だった。とは言え、僕達も林田が言ったように、高岡さん一人に押し付けるのはおかしいと思っている。ただ、大和は高岡さんにかなり執着してるから、完全に引き離すのは難しいと思うんだ。だけど、度が過ぎた付き纏いについてはみんなで抗議する事を約束するよ」
ずっと何を問題にしてるのかわからなかったけど、委員長から名前が出て、ようやく大和くんの話だったのかと理解する。
「あと、大和の取り扱いは難しいからって、河合や副委員長に任せきりだったのも反省してるよ。悪かったな。これからは、誰かだけに負担をかけないよう、大和についてはクラス全員で考えていこう」
委員長は、鈴ちゃんに向かって言った。
クラス全員で考えていこうだなんて、大和くんは一体何をしたんだろう。
「みんなが結束してかかれば、何とかなるさ」
「そうよ、みんなで立ち向かうべきよ!」
他のクラスメイトからも声がかかる。
結束して立ち向かうって、どう言う事?!
まさか、不良を公言している大和くんがクラスの人に暴力を振るったとか?!
ううん、そんなわけない。
あんなに優しい大和くんが暴力なんて、考えられない。
たとえ、もしそうだったとしても、きっと何か事情があるに決まってる。
状況が理解出来ず、不安ばかりが拡がっていく。
「そういうわけだから、高岡さん、耐えられなくなったら言って。みんなで必ず守るから」
だから、そういうわけってどういうわけなの?!
お願いだから、ちゃんと私にもわかるように説明してよ!
「あの、大和くんがどうかしたの?」
付き纏いがどーとか言ってたけど・・・
大和くんの何が問題なのか、こわごわ委員長に尋ねてみる。
「なんて説明すればいいのかな」
ところが、委員長ははぐらかしてしまって、らちがあかない。
だから、私は鈴ちゃんに助けを求めたのだけど。
「重い、でしょ?」
だから、何が?!
重いって何?!
そんな一言だけじゃ、全然わかんないよ!
「重い?」
私が鈴ちゃんに聞き返すと、河合くんが鈴ちゃんの代わりに答えた。
「そう、大和の愛は地球よりも重いんだ」




