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罪作りな男5

※河合視点

 俺の言葉を受け入れ、無事帰還を果たした大和は高岡さんに謝りに行き、二人は仲直りした。

 俺達はこれで元サヤと胸をなでおろしたのだが、実際はそうならなかった。


 大和が高岡さんに極度に気を遣い、近寄らなくなったのだ。

 遠くから恨めしそうに眺めている。

 俺達が大丈夫だからと誘っても頑なに拒み、高岡さんが大和に近付こうとすると、逆に逃げてしまう。

 今度は、嫌われるのが怖くて近寄れなくなったらしい。

 誰だ、完璧な(おとこ)だなんて言ったのは!

 豆腐メンタルも甚だしいぞ!



 それでも、高岡さんが帰る時間(大和が高岡さんの体力を考えて予め決めていた)になると、付き添って帰るために渋々やって来る。


「これ、俺達全員から。パンケーキ奢って貰ったお返しだ。今日の記念になればと思ってさ。受け取ってくれ」


 じゃあな、と帰る挨拶をする大和に俺達はプレゼントを渡した。


「何だ? スマホケース?」


 俺は高岡さんのスマホケースに傷がついていたのを思い出し、みんなにある提案をした。


「うん。高岡さん」

「あ、うん」


 高岡さんがバッグから、真新しいピンク色のケースに入ったスマホを取り出し見せると、大和が驚きの声を上げる。


「あっ!!」


 よっしゃー!! 

 デフォルトが冷静な澄まし顔なだけに、大和のびっくりした顔は激レアで、俺達は大いに満足してニマニマした。

 サプライズは大成功だった。


「双子なら、お揃いじゃないとな! だろ?」


 大和はハッとしたように、高岡さんを見る。


「愛美、いいのか? 本当に、俺が、その、これを持っても」


「うん。さっきはごめんなさい。私ね、自分だって大和くんにいろいろ無理を言って困らせてるのに、大和くんばかりを責めるのはおかしいって反省したの」


「ありがとう、愛美。それに、みんなも」

 

 大和は、お揃いのケースに入った高岡さんのスマホと自分のスマホを並べて持つと、しばらくの間じっと眺め、そして、徐に破顔一笑した。





 高岡さんに双子のお墨付きを貰った大和は、すっかり自信を取り戻し、いつもの不敵な大和に戻った。

 その証拠に、高岡さんに転ぶと危ないからなとかなんとか言っちゃって、ちゃっかり手を繋いで帰って行く。 


 はー、やれやれだな。

 二人を見送りながら一息ついていると、川越に礼を言われる。


「河合くん、あの、今日は、いろいろとありがとう。助かった」


「ああ、別にいいよ、礼なんて。俺だって、大和のダチなんだし」


「それはそうだけど、助かったのは事実だし。だから、やっぱり、ありがとうね!」


「ん、あ、まぁ、わかった」


 ほんとに、康平を筆頭に同小の奴らって、マジ大和が好き過ぎるぜ。

 

 ・・・・・・


 でも、まぁ、な。


 


「それにしても、大和があんな面倒くさい奴とはね。マジ驚きだワ」


 と、同じように見送っていた河崎が隣で呟いた。

 確かに俺も驚いたけど、河崎は大和をクラス男子の中で一番高く評価してたから、さぞかしショックを受けたことだろう。

 女々しいほどの豆腐メンタルを披露されて、幻滅したに違いないと思ったのだが。


「でも、人間っぽくていいよ。大和って何しても神がかってるじゃん? 私達とは比べものにならないくらい大人だしさ。でも、今日は親近感が湧いたし、鈴ぴょんの気持ちがちょっとわかったかも。だって、あんなに喜ぶなんてさ、」


 河崎も俺と同じように思ったらしい。


「わかる! だよな! 俺、もう、あんな顔見せられたら、何でもやってやりたくなるっつーかさ、」


「まったく」


 プレゼントに顔を綻ばせる大和は無邪気な子供のようで、俺はすっかり魅了されてしまった。



「あんなに可愛い顔で笑うなんて、反則ですよね! あっ、私のくせに、すごい上から目線の発言でした! ごめんなさい!」


 谷口が話に入ってきて、自分で自分の発言に突っ込みを入れ、いつものように謝った。

 

「クスッ、謝らなくていいよ。本当の事だもんな」 


 ペコペコ謝る谷口に普段の俺ならイラっとくるところだけど、大和にすっかり毒気を抜かれてた俺は、谷口に対しても優しい気持ちになる。

 すると、川越が俺に向かって言った。


「じゃあ、カラオケ行く?」


 え?


「いいねー」


 それに、河崎も同意した。

 どういうことだ?


「麻耶も行くよ!」

「は、はいっ!」


 俺が誘っても、カラオケに行く時間はない!って言ってたのに。


「河合、行くよ?」


「お、おう!」


 

 その日、カラオケでは歌よりも大和の話で大いに盛り上がった。







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