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初恋こじらせ王子4

※河合視点

 俺はクラス男子を代表して、ある極秘ミッションを遂行するために、この原宿ツアーに参加している。

 そのミッションとは、拗らせまくっている大和の初恋を後押しして成就させてやろうというもの。

 同じ男として、また友達として力になってやりたいと思うし、とにかくとばっちりを受けたくないクラス男子の総意でもある。


 今回の任務遂行にあたって、川越達に協力を要請したのだが、あいつらとは意見が合わなかった。 

 

『俺達の中の誰かが、高岡さんにうっかり好かれたりでもしたら、どーすんだよ!』

『ナイナイ。大和を超える男子なんてこのクラスにいないじゃん』

『無理にくっつけようとして、大和くんがフラれたら、それこそどーすんのよ! 失恋がきっかけでまた不良に戻ったら困るでしょ?! 今は、温かい目で見守りつつフォローしていく、それがベストなの!』

『あの、愛美さんは今のところ学校に馴れるのに必死で、恋愛する余裕なんてないと思うんです』



 そりゃ、お前らは余裕だよ。

 女なら恋敵になることはないし、高岡さんの友達なら尚更大和の敵になるはずがない。

 河崎のやろう、鼻で笑いやがって。


 しかし、高岡さんが大和のベーコンを食ったのを見て、俺は確信した。

 二人が好き同士であることに間違いはない。

 恋愛する余裕がないとか、マジ意味わからん。

 

 食べ始めてすぐ、高岡さんが食べれないと言い出して、二人はパンケーキをシェアし始めた。

 女は好きでもない男の服なんてまず身に着けたりしないし、食いもんのシェアなんて絶対ムリだ。

 

 

 あとは自覚だけだな。  

 大和が自覚して高岡さんの気持ちを確かめさえすれば。

 そう確信した俺は、大和の自覚を促すべく誘導尋問に入ったのだが。



「家族なんだ、心配するのは当然だし、これほど愛美を愛おしく思うのもそのせいだったんだな。俺、ワケがわからなくてずっとモヤモヤしてたけど、やっとわかってスッキリしたよ。俺、愛美が可愛くてしょうがないんだ。目の中に入れても痛くないって、きっとこういうのを言うんだろうな。愛美は、嫌か? 俺がそんなふうに思うの迷惑か?」


「ううん、迷惑なんて! 私、一人っ子で、ずっと兄弟がいたらいいのにって思ってたし、それに、そういうことなら、少しくらい甘えちゃってもいいのかなって。私、大和くんに世話をかけるばかりで何も返せないでしょう? だから、ずっと申し訳なく思ってて、でも、自分だけだと失敗ばかりで、」


「甘えてくれていいんだ! 申し訳ないなんて、思わないでくれ。家族なんだから、甘えていいんだよ。それに、俺、愛美に甘えられるの、・・・どっちかっていうと、好きっつーか、嬉しいっつーか、」



 なんで、こんなことになってんの?

 大和が自分の気持ちを自覚して、高岡さんに告白さえすればミッション完了だと思ったのに。

 思ってたのと、なんか違う!!


「ちょ、ちょ、ちょっと待て!! ちょっと待て!!」


 俺は大和の告白を軌道修正するべく、間に割り込んだ。


「なんだよ」


 大和はせっかくのいい雰囲気を台無しにされて、不機嫌だった。

 いや、同じ男として、口説いている最中に割り込んで申し訳ないとは思うよ?

 無粋なことだってしたくないさ。

 だけど、これが突っ込まずにいられるか!!


「家族ってなんだよ?! おかしーだろ! 素直に彼女でいいじゃねーか!」

「彼女? 彼女って何だ? 女って意味か?」

「それ以外にあるかよ」

「馬鹿にするな。女はこの世に山ほどいるが、愛美は一人しかいないんだぞ? 彼女なわけないだろう!」


 ええぇ?


「なんでそーなるんだよ! 大和は高岡さんのこと好きなんだろ?」

「当然だ。家族だからな」


 もう、マジわかんねぇ。

 俺は頭をかきむしりたくなった。


「だから、その家族ってなんだよ?!」


「家族は家族じゃないか。この世で最も大切にして守るべき者だ。お前にだって家族はあるんだから、わかるだろう? 俺は愛美を心より幸せにしてやりたいと思ってる」 


「・・・・・・」


 家族がこの世で最も大切にして守るべき者?

 幸せにしてやりたいって・・・


「えっと、高岡さんを幸せにしてやりたいって思うのは恋愛じゃないのか?」

「だから、そういう浮ついた軽い気持ちじゃねぇっつってんだろ」 

「でもさ、」

「もう、ごちゃごちゃうるせーぞ、お前は!」


 やべ。

 大和が怒り始めたので、俺はひとまず口を噤んだ。

 だが、大和の生い立ちを知って、なんとなく恋愛感情をこじらせている原因がわかった気がする。


「わかった! わかったから! もう一回だけ確認させてくれ」

「なんだ」

「大和は高岡さんの事を、恋愛対象ではなく実の妹のように思っていると、そう言うのだな?」


 こいつは初恋だけじゃなく、シスコンもこじらせてた。

 大和は首をひねって考える素振りを見せる。

 やっぱり、はっきりと区別されてるわけではないんだ。


「そうだ。愛美は俺にとって、双子の妹のように愛しい存在だ」


 双子の妹ねぇ・・・

 俺は、真偽を確かめるために一計を案じる。


「なら・・・高岡さん、もうそれ食べない? 俺がもらっても構わないかな?」

「え? あ、うん」 


 俺は高岡さんの了承を得て、残したパンケーキに手を伸ばす。


「何をする」


 すると、案の定、大和が俺の手首を取り阻止してきた。


「何って、別に大和の彼女じゃないんだから、いいだろ?」

「いいわけねーだろ!」


 一瞬、殴られるかと思って思わず身をすくめたが、大和は俺を殴る代わりに、高岡さんの残したパンケーキを自分の口に詰め込んだ。

 





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