第8話処遇とその後の凶報
第8話
処遇とその後の凶報
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司祭長や計画に加わった信徒達を見せしめに処刑する事は可能だったが、そうすると市民達の反応は良くないだろとの判断からサザニエルからの追放処分にする事が決定した。
聖輝教会自体には何も罰を与える事はしなかった。
一部の者達の暴走で教会全体での企てではなかったからだ。
次の教会長には副教会長であった司祭に委任した。
彼は最後までこの計画に反対して居て部屋に軟禁されて居た様だ。
計画に参加した者達は聖輝教の教えを曲解して信奉して居り、魔族とは相容れない思想を持って居たが、この新たに教会長に就任した司祭は魔族にも理解を示し手を取り合い助け合う事を説いた。
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あの後追放処分を受けた司祭長と信徒達は軍を派遣した都市へと向かったが、そこで捕らえられて処刑された。と風の噂で聞いた。
都市の領主だった貴族家も没落して新たな領主が任命された様だ。
そして都市の防衛に必要な人員が半減した両都市をミラーゼが放って置く筈も無くすぐさま第二師団が出撃し二つの都市を陥落せしめた。
こうして一連の騒動は治った様に見えた。
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数日後
前に落とした二つの都市の内一つから急使がやって来た。
「何があった?」
「はっ!都市内に不穏分子の残党が居ないか徹底的に調査をして居りますと、怪しい者達を発見し数日かけて尾行し調査を行いました所クロだと判断致しまして、その者達のアジトと思われる場所を二個小隊で急襲した所問題なく制圧出来たのですが、其処には隠し通路があったらしく偶々地下の隠し部屋に居たメンバーが怪しげな魔道具を発動させた所、魔道具を起点にして大量の不死族が発生しまして都市は混乱状態です」
聞いた内容は思ったよりも悪かった。
「だが、都市には連隊規模の部隊が駐留して居たはずだが?」
「はい。確かに連隊規模の部隊が駐留して居ますが、不幸なことに不死族の最初の攻撃で指揮官である連隊長が斃れられ更に不死族の数は増え続け都市の外壁を壊し外にも溢れ出して近隣の都市に向かわれました。近々この都市にもやって来るでしょう。現在確認出来てるだけでも数万規模に及びます。何とか生存者は都市内の砦に篭って居ますが、食料も心許なくいつ迄持つかは不明で御座います」
はぁ、一難去ってまた一難か。
しかも最初の難よりもこちらの方が数倍厄介極まり無い。
「この事は第二師団長のブラッド少将には伝わっているのか?」
「はい。其方にも早馬を送りました。他にも軍団長閣下の元にも送っています」
「そうか、わかった」
「ファル。現在すぐに動かせる兵はどのくらいだ?」
ファルは手元の資料を見ながら動かせる兵員を報告する。
「はい。殆どの者は休暇で都市外にいる為現在すぐに動かせる人員は我々竜神族総勢87名に竜人族123名、蜥蜴人568名、〜〜〜締めて総勢3千強です」
執務室に新たな報せを持った兵が駆け込んでくる。
「失礼します!不死族と思われる大群がここサザニエル目指して進んでいます!目測で凡そ1万ないし2万はいるとの事です!」
不死族は隊列を組んでいる訳でもない為に数えるのが非常に困難な為に正確な数はわからない。
「御苦労。すぐに厳戒態勢に入る様に各所に指示を出せ。市民にも避難所に避難する様に呼び掛け怪我人やパニックを起こさない様に監督しろ」
命令を受けた兵は敬礼して走って行く。
「ファルすぐさま各指揮官を会議室に呼んでくれ。それとカカロム子爵も呼びたまえ」
「わかりました。その様に」
ファルは一礼して執務室を後にする。
ヴルストは急使に向き直り「すまんが、聞いての通りだ。先ずは先に迫り来る不死族共を蹴散らしてから救援に向かう」
そう言ってヴルストは椅子から立ち上がり会議室へと向かう。
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主要なメンバーが揃ったところで会議を始める。
ファルが進行役だ。
「先ずは今現在起きている状況を御説明致します」
「現在我々の都市であるサザニエルに向けて数万規模の不死族が群れをなしてここに襲来して来て居ます。幸い足は遅くここに到着するまで後半日程度の猶予があると推測されています。不死族の構成は確認出来ているだけでもゾンビ、グール、スケルトン、スケルトンビースト、ミートマンです。此処までで何か質問はございますか?」
ファルが会議室を見渡すと誰も手を挙げずに先を促す。
「では、続けさして頂きます。この不死族の発生場所は第二師団が占拠していた農耕都市の一つの【トーラン】です。原因は不穏分子であった聖輝教会の者達が我々に対する反旗を翻す為の活動拠点内です。第二師団は迅速に対応してこのアジトを急襲し制圧したまでは良かったのですが、アジト内には隠し通路がありそれを降って行くと隠し部屋がありまして、そこには怪しげな祭壇があり一人の反逆者が祭壇の上に鎮座していた杯に魔力を通すと、突如として魔法陣が浮かび上がりそこから大量の不死族が発生致しました。この杯について何か心当たりのある方はいらっしゃいますか?」
ファルが問いかけるとカカロム子爵が挙手する。
会議室内の視線が自然とカカロム子爵に集中する。
「では、カカロム子爵御説明願いますか?」
「ふむ。承知した」
カカロム子爵は席を立ち説明する。
「先ず始めに言っておくが、これは噂話程度の話だと思ってくれ。儂自身この話は御伽噺にしか聞こえんからな。これはサザニエルの聖輝教会のあの元司祭長から聞いた話だが………」
とカカロム子爵は話し始める。