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第6話 サザニエルの領主一家

 第6話



 サザニエルの領主一家


 ◆◆◆◆◆


 また数日間時間を掛けてサザニエルに戻ったヴルストは魔術によりある程度回復した元領主の元へと向かう。



 サザニエルは落ち着きを取り戻し人間達も普通に家の外に出て出歩いている。


 一時的に交易を禁止しているので商人などの商品は魔王軍が買い上げたりてし何とか回している。



 近いうちに防衛都市ガルツから手配した行商人達が来る予定だ。


 初めは怖がって居たサザニエルの住人も魔王軍が規律正しく優しく接するので徐々に打ち解けて行っている。


 第四師団は人間の近親種の種族が数多在籍しているのもその理由だろう。



 だが、中には彼らを侮蔑する一部の住人が居る。


 人間領には奴隷制度と言うものがありその中には人間以外にも近親種が含まれて居る。



 人間は犯罪奴隷や借金奴隷以外はあまり居なく殆どは近親種で亜人と呼ばれる彼らが大半を占めている。



 彼らは別に犯罪を犯したとかではなく、人間よりも下等な生き物として扱われている為に見つけ次第捕獲されて無理矢理奴隷にされる事が多い様だ。



 幸いオーキテスト王国は犯罪奴隷以外認めて居らず、更に南部は防衛上の理由もあり奴隷は極力排除している。



 南部は魔族領と隣接している為に厳しく管理しているとは言え奴隷達が情報を流して居たりしたらたまったものでは無いからだ。



 その為に差別的な人間は少ないが、それでも地方から流れて来た人間や、宗教上の理由で亜人を下に見ている人間は居る。


 それが軋轢を生む原因になるので差別的な言葉は禁止して居り破れば魔族、人間関係なく処罰する旨を発表した。



 そのお陰もあり表立って言うものは激減した。



 ◆◆◆◆◆


 第四師団本部である元領主の館の近くにある診療所に居る元領主ことオーキテスト王国子爵のザカエル・ド・カカロムに会う。


 カカロム子爵の病室の前には屈強な獣人の虎人族の兵士二人が腰にシミターをさし腕を組んで監視兼護衛をしていた。


 二人の兵士は此方に気付き敬礼をして来たので答礼する。


「カカロム子爵は中に居るな?」


「はっ!いらっしゃいます。ドラーク閣下」


「わかった。中に入るぞ」


 護衛の蜥蜴人の戦士と秘書官のエルフ族の女性を引き連れて中に入る。


 病室にはベッドに包帯で巻かれたカカロム子爵と妙齢の女性とカカロム子爵と同年代の女性二人に小さな男の子が居た。


 多分三人はカカロム子爵の妻と娘と息子であろう。


「体調はどうだカカロム子爵」


 声を掛けると先程まで家族と和やかに会話していたカカロム子爵は顔を強張らせて緊張した面持ちで「体調はだいぶ良くなった。それで儂をこれからどうするつもりだ?儂のことはどうなっても構わんから、家族と住人には危害を加えないで貰えないだろうか?」



「心配はいらん。住人は元より貴殿ら家族にも危害は加えんさ。すまないが色々と制限は付けさせて貰うが、問題なく此処で暮らしていける様に手配しよう。カカロム子爵には体調が万全に戻り次第この都市の維持のために尽力して貰えないだろうか?魔族と人間には少なからず軋轢がある。その為に統治する上で貴殿の力が必要だ。力で抑えることは出来ようが、俺はそれを望んでいない。どうだろうかこの都市のそして住人の為と思って力を貸してはくれぬか?」


 カカロム子爵は暫く考えた後に「わかった。住人と家族に危害を加えない事を条件に協力しよう。

 だが私はオーキテスト王国に使える子爵だ。協力はするが王命などにより裏切るかも知れんぞ?」


「ふっ。その時は受けて立とう。それに貴殿は回りくどいのは好きではなかろう?

 それに今もそんなに正直にそんな事は普通は言わぬものよ」


 ヴルストが笑うとカカロム子爵も笑う。


「儂の体調が万全になるまで娘を使うと良い。娘のルルナは政務を手伝って貰っていたからある程度の問題は処理出来るだろう。良いな?」


「なっ!?父様!?私にそんな大役を!?」


「大丈夫だ。ルルナ。お前なら出来る。儂の側で学んだ事を活かすが良い。お前は頭の良い子だ。何が正解で何が間違って居るか気付ける筈だ。儂が戻るまで今暫く代わりを務めておくれ」



「そうよルルナ。貴女なら出来るはずよ」


「そうでしゅよ!姉しゅま!姉しゅま!は頭が良いんでしゅから出来ましゅよ」


 まだ幼く舌ったらず弟にまで言われてルルナは「わかりました。頑張ります」



 どうやら話は纏まったようだが、この家族は攻め寄せて来た我々魔王軍に何か思う事はないのだろうか?



「不思議な顔をされて居りますな?」


 顔に出て居たのだろうかカカロム子爵に指摘された。



「何、簡単な事ですよ。我々辺境で生きる民は元来適応能力が高く我々より強く我々を保護してくれる者には従順なだけですよ」


 気付けばカカロム子爵の口調は丁寧になって居た。



「まあ、それはそれだけ辺境が過酷な土地であった為ですがね。他の場所ではこうは行かないでしょう」


「そうか。助言感謝する。では早速で悪いがルルナ殿を借りて行く」


「ええ、わかりました。ルルナしっかりやるんだぞ」


「はい。父様。精一杯住人の為にも頑張りますわ」




 その後ルルナの尽力もあり市民からあげられて居た苦情や嘆願などを素早く処理して行き、数日後防衛都市ガルツから来た行商人達と交易を再開して少しずつ普段の活気を取り戻していった。



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