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第4話 報告

 第4話



 報告


 ◆◆◆◆◆


 馬車に揺られる事数日。

 サザニエルから数日間の距離にある人間領オーキテスト王国最辺境に位置する防衛都市ガルツが見えてきた。


 防衛都市ガルツには現在軍団兵のほかに第二師団が駐留している。



 魔王軍は全部で八つの軍団で構成されて居り、軍団一つは四つの師団と軍団長の直轄の師団一つの計五つの師団から成りそこから師団がまた複数の旅団からと細かくなっている。


 魔王軍は所々近代化されて居りその最たる物が兵站のシステム化である。



 その為に魔王軍は途中の街や村などで態々略奪をしなくて良く効率よく部隊も編成され階級も細かく厳格にされている。



 一昔まえでは頭が良くても力が弱い魔族は下っ端であったが、その考え方も変わり頭が良ければ参謀になり作戦の立案などで功績を立てれば昇格出来る様になった為に、豊富な人材が集まり魔王軍はより精強へと変貌した。


 だがそれでもやはり、完全には払拭しきれなかった部分もあり未だに脳まで筋肉の脳筋と言われる力至上主義者が居り度々トラブルになる事もある。


 それに人間と近親種の者達を亜人と蔑む輩も少なからず存在する。


 そしてそんな荒くれ者達が多数所属する軍団が第二軍団で突破力、破壊力は軍団随一と言われているが、武官に偏り文官は少なく肩身の狭い思いをしている。



 第一軍団は軍団長が公正公平な人物である為にそんな人材は弾き飛ばされる。


 まあ、そこまで酷くなければ許容はされているが、第一軍団はエリート意識が高い為にそんな栄誉ある第一軍団に第四師団の様な亜人が多数所属する師団は相応しく無いのでは?と思っている者は少なからずいるがそれを口に出す者は居ない。


 過去それを口にした師団長が居たがヴルストが消し炭にしてやったからだ。



 普通なら軍法会議ものだが、そこはやはり魔族。負けた方が悪いとなりお咎めなしだ。


 まあ、軍団長から後で軽いお叱りを受けたがその程度だ。



 馬車に掛けられている第四師団の旗を確認した悪魔族の門番が敬礼して出迎えてくれる。


 第四師団は第一軍団の中でも数多くの戦果を挙げている為に尊敬されているのだ。


 門番の腕章を見るに軍団長直属の独立師団の者達だろう。


 今代の魔王は悪魔族出身の為に多数の悪魔族が魔王軍に在籍している。



 魔族は魔王が居ないと普段は各種族毎に各地の集落などで暮らしている。


 ◆◆◆◆◆


 都市の中へと入ると都市の中は魔族で溢れ返り活気に満ちて居た。


 この防衛都市は魔族が攻めて来た時に防衛軍を残して市民は近隣の都市に避難した為に、残った人間は軍人のみになった。



 そして彼らは徹底抗戦を掲げ誰一人逃げる事なく勇猛果敢に立ち向かって来た。


 そんな彼らの心意気を買って魔王軍も全力で戦った結果防衛軍は一人残らず全滅しこの街には魔族しか居なくなった。



 そして居なくなった住人の変わりに魔族達が住み魔王軍以外の一般庶民の魔族達も移り住んでいる。



 何故魔族と人間が争うのか?

 それは今から数千年も前の話になる。

 元々この大陸には魔族達しか存在せず種族毎に縄張りを決めお互い干渉せずに生きて来たが、別の大陸の人間達が住んで居た大陸が人間達の手により資源の枯渇化が進み人口増大による飽和状態になり新天地を目指して数多の船乗り達が旅立ち、その中の一行がこの大陸を発見した。


 だが既に大陸には先住民である魔族が暮らして居た。


 幸い魔族達は人間よりも強力な種だったが、互いに干渉せずに生きて居り数が少なかった為に、人間達は数による物量戦を展開して魔族達を辺境の過酷な土地へと追いやり今に至る。


 ◆◆◆◆◆


 魔王軍の支配下になった都市の中を馬車で進みながら、窓から見える住人達の笑顔を見てヴルストは元人間(この世界とは違う異世界)だが彼らのためにそして自分の隠居生活の為にもこの大陸から人間を一掃する事に邁進する気持ちを新たに固めた。


 暫く進むと立派な石壁に囲まれた砦が見えて来た。


 顔パスで中に入り謁見の間に向かう。



 謁見の間の扉が開き中に入り跪く。


 玉座に座っている軍団長の横に立っている副官がヴルストの到着を知らせる。


「第一軍団、第四師団師団長ヴルスト・ドラーク少将が参られました」



「おお!来たか!聞いたぞ。僅かに一日で交易都市サザニエルを落としたそうじゃのう、ヴルストよ!」


 嬉しそうにまるで子供の様にはしゃいでそう述べるのは第一軍団軍団長であり魔王軍一の魔術師と名高い大賢者リザール・ブラボチェンコ・ゴモヴォスキー中将である。



 見た目は幼い子供だが魔王軍最古参の最高幹部の一人でもある。


「はい。部下達のお陰でございます」



「そう謙遜するでない。ヴルストよ流石は妾の高弟の一人でもある」


 鼻高々にリザールは告げる。


 彼女には沢山の弟子が居りヴルストもその一人だ。


 第一軍団の指揮官の殆どは彼女の弟子と言っても良いぐらいだ。


 魔王軍に所属して居ない弟子も合わせるとその数はゆうに千は超えるとも言われている。



「いえ、そんな事はありませんよ師匠」


 嬉しそうに笑いながらリザールは配下に命じて財宝の詰まった小箱を持って来させる。


「ヴルストよ。これは褒美じゃ。都市一つを落としたのに少なくてすまぬのぅ」


「やはり西部の戦線が危ういのですか?」


「うむ。脳筋な第二軍団の馬鹿共は壊す事しか考えて居ないのでな。手に入れた都市も殆どが半壊なのでその修繕費とさらに奴らは隊列も何も無く突っ込むだけなので、討ち漏らしも多くその残党共が各地でゲリラ作戦をしてこちらの補給部隊を襲撃するので溜まったものではないわ」


 鬱陶しそうにそうリザールは述べる。


「じゃが、近々その悩みの種も解消しよう。魔王様が第二軍団の所業に業を切らして第八軍団を投入して変わりに第二軍団を二個師団ずつ後方に下げて再教育して下さるらしいからのぅ」


 上機嫌にリザールは告げて手元のワインを飲み干す。



「そうじゃ、もう一つ報告があったな。同じく南部を攻めている第五軍団が鉱山都市を遂に攻略したそうじゃ。これにより鉱山都市と主の攻略した交易都市との間にある都市群は半ば孤立したも同然じゃ。他の都市は近々第二師団の者達に任せるのでヴルストはサザニエルの維持に力を注いで欲しい。サザニエルは交易都市じゃが今はその交易が満足に出来んでな。周辺の都市を平らげたらまた機能が回復するじゃろう。他の師団の者達にも出来る限り軍人以外の人間は傷つけぬ様に言ってるでな」


「ご感情ありがとうございます」


「なぁに妾も伊達に長生きはして居らん。人間の価値などは理解しているつもりじゃ」



「では、失礼させて頂きます」


「うむ。これからも精進せよ。ヴルストよ」


 深々と一礼してから謁見の間を後にする。



 外に出ると第二師団の吸血鬼の佐官が待ち構えて居た。



「ドラーク閣下少しよろしいでしょうか?」


「構わないが、何か用か?」


「はい。我が主人第二師団師団長のミラーゼ閣下がドラーク閣下をお茶会に招待したいとの事で、その御案内に参りました」



「わかった。せっかくのお誘いだ。行くとしよう」



 第二師団の佐官の後に続いて砦内を進むとサロンに案内された。





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