You just Wait.3
なし
キーボーの場合
高工務店勤務。
独身 30歳
みんなが俺っちのことを
キーボーという。
札幌で会社に勤めていたが
都会の喧騒がいやになり
辞めて
健二社長に弟子入り。
棟上げ式だか
なんかで
施主の健二社長の
幼馴染に連れられ
町のスナックに
キーボードを弾いてみれば
「北酒場」
「兄弟船」
一回聞いた曲は
なぜかキーボードで
弾けた
皆が驚く
しまった
もう少し
この才能で
薄野でなんとか
なったかな
その
キーボーが
「あの車じゃないすか」
「やけに蛇行運転してますね」
「あのあたり
あんなに滑りましたか
社長?」
「ダンプのライトつけて
ここだよって
教えてやりましょうか?」
キーボーが大騒ぎしている。
高 健二の場合
高家の次男
高 健二
今は亡き祖父も
同じく亡き
父も
大工だった。
兄は
「こんな田舎に住んでられるか、
何が大工だ」
と大学卒業間近に
父と
就職のいさかい。
それきり
家を飛び出し
何年も何年も・・
ついに
父の葬式にも現れず
故郷に錦を飾るまで
帰らないのか・・
年の6歳も離れた
自分は
高校後
祖父、父に弟子入り
兄が社長になって
戻ってくるのを
待つも
亡くなる前に
父が言った一言。
「健二、
今の家づくりは
プラモデルだ。
組み立てるだけ。
そんな家わあ、
つくるなよ」
最後の作るなよは
怒っていた。
組み立てる家はやめよう。
そう思った。
白い光がこちらに
向かっている。
午後の便で新千歳と
聞いていたが
こんなに時間がかかるとは、
やっぱ
都会もんはだめだ。
秘書はがたがた言っていたが
キーボーに迎えに
いかせればよかった。
事故でもおこさないと
いいが・・
30分後
どんな華奢な
ぼんぼんが
来るのかと思ったら
意外としっかりした男だった。
そんなやつに
なんだか思わず安心してしまった。
部屋を一通り案内し
暖房器具の使い方を説明し
「これだから内地のもんは」と
何度も口にでかかったが
我慢をし
別荘を後にした。
なし