You just Wait.2
「You just Wait.」 まあ、みてろよって意味らしいですぜ。
6年ほど前
急に
大学の様々なことが
すべていやになり
あてもない
旅にでた。
こういう時は
やっぱ
北に逃避行。
女でも
連れて逃げれば
もっと
気分も高まるところだが・・
こういう時に
ついてくる
女もいず。
連れて行こうにも
みんな逃げられ。
まあ
誘拐しないで
犯罪だけはしないでよかったわ。
高速を北上
青森までもう少しのところで
急に海が見たくなって
太平洋に
向かって針路変更。
ずっと山道を曲がり下りして
もう海まであと少し
というところで
大勢の人だかり
牧場での感謝祭。
車を止めて
歩いてゆけば
視界が開けた。
ちょっとした丘陵の先は
太平洋だった。
一人の男がいた。
ニッカボッカに地下足袋。
黄色の工事現場の
ヘルメット。
そして
ギターをかき鳴らしていた。
周りが引こうが何をしようが
物語をうたう
20歳くらいの青年。
彼は重いヘルメットも
びくともせず
人がいようがいまいが
とんだり
はねたり
うたう青年。
心がとても ひかれた。
終わって
自販機で買った
コーヒーを渡すも
「工事で働くのも
ギターを演奏するのも
同じ働くなんですよ。」
缶を開けてゴクゴク飲む。
「だから、
わたしはこのかっこうなんですよ。」
「芸事は
ひとにとげをのこして
別れてはいけない。」
「心に花をひとつでも
ふたつでもさかせて
あげなければならない。」
「わたしは
まだまだ半人前です。」
そういってわらった
礼儀正しい青年。
別れ際に
芸名を聞けば
AKIRAっていうんですよ。
笑顔さわやかに
名刺をくれた。
太平洋に出て
漁港で
波をみていた。
「働く」ってなんだろうね。
答えは見つからなかったが
東京にもどることにした。
なし