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平和な日常を愛せ。

次の朝は、二人ともちゃんと記憶があった。あっただけに多少気まずかったりしたのはまぁよくある話だ。今日はゆっくり休むとしよう。

しかしそうは問屋が卸さなかった。バカップル二組が俺の部屋の前に居座っていたのである。なぜか少尉が加わっている。面倒だな…気にしないで、部屋に入ろう。いや、イケナイ方に出てきてもらおう。

「ジャマダヨ。」

素直に五人は道を開けた。

そして部屋に入る。と同時に鍵をかけた。

どうせ今日は部屋から出ないしいいやもう。寝よう。その日は何も起こらず終わった。平和っていいものだ。


翌日、城の敷地の一部を借りて射撃の練習。

小銃、拳銃、SMG、ショットガン、狙撃銃。設定されたノルマは簡単に超えたから余った弾で遊ぶ。しかし、G3系はよく当たる。ワンホールなんて簡単にできた。そのあとはテキトーに走り込んだり。やはり疲れるな。

そんな感じで何週間か過ぎた。王女は何度か俺の部屋に来た。と言っても部屋にはコーヒーメーカすらない。そもそもベッドと銃と時計と机。必要最低限しかない。むしろものが多いと床が見えなくなるのが俺。ものはないほうがいいようだ。何もない部屋で二人、何もすることがないからただだべっているだけ。そんな感じだ。

ある日、王女に銃の撃ち方を教えてくれと言われた。そういえば王女と初めて会った時ドラグーンを突きつけられたな。綺麗なエングレーブだった。そういえば少年にも銃の撃ち方を教える約束をしていたんだった。ついでだ、今日済ませておこう。

シューティングレンジとして借りている庭の片隅に行く。二人はもうすでにそこにいた。少年はニューモデルアーミー、王女はドラグーン。一応、同じリボルバーのシングルアクションアーミーとウィンチェスターM1873を持ってきた。試しにウィンチェスターを撃つ。久しぶりだが、結構的に当たる。レバーアクションが心地良い。速射で撃つ。弾を装填して今度はスピンコック。レバーアクションならではの様々なコックを楽しむ。すると、「はやくして」と少年に突っ込まれた。少々遊びすぎたようだ。

簡単に銃の扱い、構えと握り方、等を教える。少年は今まで銃を使ってきただけあってかなりセンスがあった。が、当の王女様は一向に的に当たらない。少年から使わなくなったショルダーストックを借りるが、それでようやく的の紙に当たった程度。尖頭弾を使わせてみたが結果は同じ。こちらはかなりセンスがない。何回か手本を見せる。すでに飽きてガンスピンを始めている少年。少年にはファストドローと連射を教える。タタタタタタッ、と心地よい音が響く。しかしどうにも当たらない。ドラグーンを借りて撃ってみる。シリンダーに火薬と玉を込める作業。面倒だがこの銃の醍醐味でもある。シングルアクションだから一発一発ハンマーをコックしながら撃った。五センチ内に集弾。銃が悪いわけではないようだ。もうこれは…ここまで下手だと誤射が危険だ。銃は俺たちに任せてもらおう。だがそれでも最後は全弾的の紙の中には収まるようになっていた。


王女が公務で街に出る事になった。街に入ったとたんに武装集団に襲われた。戦闘が始まる。幸い敵は銃を持っていなかったが、こちらの銃が故障した。なかなかジャムから回復できない。王女からドラグーンを借りるがもう戦闘は終わっていた。ジャムを治す。負傷者0、公務に支障はない。街を回って城に戻る。途中たくさんの人から声をかけられた。人気はあるらしい。そういえば敵側だった民兵もすぐ寝返っていたな。


「なんでジャムったのかなぁ…整備はしてたのに…」

「あの撃ち方はジャムるでしょ。反動逃がしちゃってるしただでさえPPKのエジェクションポートは小さいのに。」

「あー…まぁ急だったし…あーあ傷入っちゃった。」

確かに、初弾をかなり無理な撃ち方をした。ほとんど振り回して撃った。それでブローバックの反動エネルギーが逃げてしまったのだ。

と、そこへ王女が通る。

「あぁ王女様、職務を全うできず申し訳有りませんでした。」

「もういい。銃は直ったのか?」

「はい。大きな損傷はなかったので、簡単に整備するだけで治りました。」

「そうか、よかった。その銃には何度も守ってもらってるからな。王女として礼をいう。」

「へぇ…拳銃に王女様から直々に礼とは。」

「もちろん、カズたちもだ。いつもありがとう。」

王女は微笑む。

危ない。

公私混同しそうだ。


王女と一緒に城を歩く。今は修繕工事か建て替えるか協議中だという。一応フツーに生活したり、大規模な会議を開いたりするぶんには建物は平気だが、いかんせん外観の損傷が激しい。彼女としてはこのまま直したいようだ。城の中を案内してもらっているのだが、適当に紹介を聞き流す。覚えられない。

「聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。」

「嘘。じゃあ二階の西側物置の箒の数は?」

「…3本。」

「まだそこ行ってない。」

「おとといミラにパシられました。」

「オッケー次は…王の部屋。」

「じゃあお父様に挨拶してきますか。」

ゆっくりとドアが開く。

広い部屋の奥に大きな窓。

そして窓の前にあるこの部屋唯一のモノ。

豪華な装飾はないがそれでも威厳を保つこれは王が使う机。空のインク入れとペンたてに刺さった羽根ペンが置いてあった。

王女が机の引き出しを開ける。

「お父さんここにいつも……浮気相手の写真を入れてた。」

「…はぁ……」

「右側には鞭と縄があった。」

「お、おぅ。」

開けてみる。おい王様片付けとけよ。

「上の棚には怒ったお母さんに付けられた貞操帯の鍵が隠してある。」

…駄目だこいつ、早くなんとかしないと…

白い綺麗な紙を見つけた。インクが引き出しの中にあった。筆ペンに付けて走り書きする。

『ミラを俺にください。』

その紙は彼女にばれない様に鍵がかかっていた引き出しに隙間から滑り込ませた。一通り見て回ったが、記憶にあるのは王の部屋と二階の西側物置だけ。上出来だ。

「やっぱり覚えてないじゃないっ」

ミラは口を尖らせていたが、

「覚えてなきゃいけないところは元から覚えてるよ。」

「どこ」

「ミラの部屋」

「ばーか」


「そういえば、即位した時に開ける引き出しがあるんだった。鍵持ってきたのに開けるの忘れてた。ちょっと一緒に来て。」

…あっ…









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