邂逅、そしてやらかした。
初投稿です。誤字脱字のオンパレード。
例えば、俺が特殊能力を持った超人だったとする。でも、漫画や小説のように、厨二っぽい偽善的なこと叫んで世界を救ったりはしない。
例えば、俺に可愛い幼馴染、可愛い妹、可愛い先輩がいて、ラッキー助平体質だったとする。でも漫画や小説のように、そのうちの誰かといちゃついたりはしないし、間違い起こしたりはしないだろう。
それくらい、俺は全てにおいて無関心を貫き通す。だってめんどくさいじゃないか。
もう家でゴロゴロ寝ていたい。それができればもう何もいらない。
しかし、カミサマは残酷なようで、こんなもん欲しい奴にやればいいのに何を思ったか、ある特殊能力を授けてきやがった。
「おもちゃを実物にする能力」
メルヘンチックだがかなり凶悪だ。
明らかに渡す相手を間違っている。
なんてったってウチには戦車、戦闘機、戦艦、銃、etcそりゃもういろんな兵器がある。怖くてやったことないが、あの特徴的な3つの羽のマークの付いたおもちゃに向けて発動したらどうなることか…解除も自由だが、俺のことだ。誰かにムカついて報復とかやりかねない。カミサマはもう人類を切り捨てたのか。まぁいい、寝よう。
…あ、ダメだ。まだそのムカつく張本人が目の前にいたんだった。捻じ曲がった角、大きな黒い羽…顔は可愛い部類に入るだろうが、さすがにこれは襲ったら後が怖い。何が怖いって多分これコスプレだ。
「私と一緒に、魔法少年になろうy…」
「その発言は白い化け兎の専売特許だ。まさかこれから、どこぞの魔法少女よろしくおぞましい何かと戦えっていうのか?」
「話が早いですね。でも、アニメみたいな展開はありません。相手は王家に仇なす反乱部隊ティ◯・フィナーレなんか使いません。奴らを率いるは我が国軍元帥。劣勢の私達は、こっちの世界から傭兵をスカウトする計画を立てた次第です。」
「で?何故俺なんだ本物を呼べばいいだろう?仲間は?戦闘はどんな規模が予想されている?」
一体何なのだ。素人捕まえて兵士にでもするつもりか。そしてなんで俺は乗り気なんだ。彼女は古いパーカッション式のリボルバーを突き付ける。
「いま死にたくなかったら、我が親衛隊として死ぬまで働け☆」
半ば無理やりな宣言とともにその子は消え、入れ違いに数人の友人から同じ内容のメールが来た。
「お前の名前とともにわけわからんこと言って消えて行った女はなんだ?」
クッソメンドクセェ。
いいや、近くのファミレスに集まろう。
「どういうことだ?俺らはどこぞの軍隊にでも召集されるのか?しかもなんだよあのメルヘンチックな能力は。」
なんだ全員が同じようなやり取りをしてるんだな。
「おもちゃ化兵か?」
「上手くない。それに〜化の意味が違う。」
あぁあ痛い痛い10人近い男が一体何を話しているんだ。
「でもなんで僕たちだったんですかねぇ。リアル兵士呼べばいいじゃないですか。」
「わっかんねw」
店員が近づいてくる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員に近かった2人が彼女の腕を掴んだ。
「何故!?」
動揺しながらもメニューに紛れ込ませた地図を示す悪魔。さすがに俺たちをなめてもらっちゃ困る。
「地図か。日本ではないな。」
店員…もとい昨日の悪魔が地図を使い状況の説明を始めた。なんで俺らはついていけるんだよ…
噛み砕くと、明朝0700に反乱軍の都市襲撃があるらしい。それを迎撃せよというのが俺たちの任務。敵はこっちでいう1800年代の武器を使っている。弓矢に刀にマスケットか。武装じゃこっちがチートだなwただし、兵力の差はとんでもなかった。正規軍の残存兵力は、歩兵一個中隊分しかない。人がいないから、武器弾薬は腐るほどある。俺たちの弾薬等消耗品は、「チカラ」でなんとかなるそうだ。
「武器はいいがその他は?流石に暗視ゴーグルみたいな装備品のおもちゃはないぜ」
“隊長”が聞いた。そりゃそうだ。俺たち貧乏サバゲーマーがそんな高いものを持っているわけない。
悪魔が答える。
「それはこちらで用意します。戦闘服もこちらで、ただし迷彩効果はないものなので期待はしないでください。その他は適宜おしらせください。できるだけ用意できるようにいたします。」
なんだ?昨日の去り際とはえらい差じゃないか。
「っても初陣前が、安いファミレスのドリンクバーとは俺たちらしいねw」
そう言って一旦家に帰った。
明朝0500僕等は見慣れない建物にいた。
ホールのようなところで200人程度の西洋風の甲冑を纏った兵士が整然と並んでいる。ある種の美しさを感じた。ここまで追い込まれながらも士気は高そうだ。しかし俺たちはこの戦争の概要が全くわからない。まぁ一傭兵がそんなこと気にする余裕はないが。
コスプレ悪魔が演説を始める。
「お前たちは(ryである!その刃をもって敵を地獄に叩き落とせ!」
「おうじょさまぁあああぁぁあ!!」
兵士が一様に涙を流す。「王女様」?あぁ納得した。あの傲慢さと外面の良さはこれか。
「今回より我らに強力な援軍が(ry」
俺たちのことだ。
隊長以下
10人の名前が紹介される。兵士たちはその度に期待を寄せているような表情を見せるが、実戦経験は彼らの方が断然多い。というよりこちらはゼロだ。
…おっと話が終わったようだ。寝るな馬鹿者、王女様が鞭を装備なさったぞ。
「全軍!戦闘開始!」
「戦闘に当たって何か要望は?」
「いえ、特にありません。しいてあげればこの軍服がカッコ良すぎることですかねw」
「ナチスの武装SSよりかっこいいじゃないか」
「隊長は?」
「うーん、どこでもいいから、“日の丸”をつけてくれないか?」
“日の丸”という言葉に禍々しい格好の王女を除くその場の全員の背筋が伸びる。
「どういうことだ?」
王女に聞かれ、
「日本の兵士が戦うために、背負わなければならないもの」と説明した。
そうして、王女は傭兵部隊全員の背中に大きな日の丸を描いた。
濃紺の背中に大きな日の丸。
かっこいいじゃないか。
「“日の丸”部隊だな!」
おい王女様、あんたそんな無邪気に笑う方だったか?
俺の中で貴女のキャラが一向に定まらない。
「にしても、かっこいいねぇあの娘」
「お前Mだろ」
彼女が去った途端にこれだ。
まぁ男が集まったんだ。そんな会話になるのは目に見えていた、が、しかし、これから戦闘だろう。緊張感がないな、俺たち。かくいう俺もこれから人を殺すのに何も抵抗がない。実物化した銃を点検する。大丈夫だ。新品同然!
隊長によって3つの班に分けられた。王女防衛の三人。SMGやPDWを持ったやつが配属された。俺もここだ。隊長含め五人が戦闘班、つまり前線部隊。残り二人が狙撃手とスポッター。陽動にも目を光らせてくれる奴らがいると助かる。
「よし、日の丸部隊!作戦開始だ!」
「サーイエッサー!」
おどけた返事だが、敬礼は自衛官に教わっただけあってみんな綺麗だな。
護衛のついでだ。情報を仕入れておこう。
「王女様、いいたくなければ構いませんが、この国の王は?」
「死にました。反乱により処刑。」
彼女はなんら表情を変えずに言った。
「…アレ?それもう革命終わってね?」
嫌な予感が…まさか…
「…はい。実を言うと今私たちがレジスタンスってことに…」
え?じゃあこっちは瀕死にもほどがある状況。敵は反乱軍ではなかったのか。そうするとかなり状況が変わる。正規軍ならある程度命の保証はしてくれるだろうがこちらは後がないレジスタンス。
「あのサァ、こっちはあんたらのために戦禍に飛び込もうってしてるのに、当のあんたらがそんな虚構にまみれてちゃあ戦えないんだけど。傭兵なんていつ裏切られるかわからないんだし。それに雇い主がもう後がない元王家。報酬は元から期待しちゃいないが、状況が全く説明と違うんじゃお話にもならない。」
「裏切ったりなんて!」
王女も声を荒げる。
「じゃあ今までの死者数を言ってみろ。敵の反乱が始まってからだ。」
「革命が始まったのが1年前。当時の親衛隊員は208名。王が処刑された時に、親衛隊隊長と副隊長が処刑。2人が高齢で退役。現在204名。負傷により、3名が戦闘不能。いずれも復帰可能。戦死者はいません。」
…え?なんですと?一年間戦って戦死者ゼロなんて有り得ない。だけど嘘を言っているようにも思えない。なるほどそういうことか。さっきの謎が解けた。最後の部隊にしては士気が高すぎる。嘘を吐かれたことはそれ相応の対処を隊長と考えることとして、ここまでひどい戦力差で戦死者を出さない王家に忠を尽くす兵士の戦いぶりを見てみたくなった。
「了解しました。あなたを信用します。失礼致しました。」
まったく…酷い戦場だ。
隊長として、隊員の無事を最優先事項と考えていたが、そんな心配はいらないようだ。
戦闘開始直後、こちらの軍勢の数の上での劣勢が消え去った。キルデスレシオとかそんなものは存在しない。十倍はいるだろう敵は既に半数になっていた。本当に援軍が必要な状況なのか?…いや、必要なようだ。敵の援軍が次々送られてくる。もう最初にいた敵の2倍は倒しているはずだ。
スポッターから連絡。複数の敵部隊が王女に接近とのことだ。狙撃班はもう既に一隊を殲滅。直掩が残り二隊と交戦中。ほどなくして敵攻撃隊全滅の報が入った。しかしなんだ、急に敵が撤退を始めた。あぁ、この大軍は陽動か。本命はさっきの隠密部隊。
間も無く、帰還命令が出された。
「どう思う?」
「圧倒的な数の差ってところですね。」
「質はこっちが圧倒的なんだけどなぁ。」
隊で集まりデブリーフィング…というよりはこの戦況と政治的背景の話になった。どうせ報告といっても、「敵の大規模攻撃隊を壊滅、こちらの損害皆無。」としか言いようがない。そもそも正規軍でさえ負傷者が「転んで捻挫」の1名のみ。
「いくらこちらの練度が相手を凌駕しているとはいえ…いや、そもそも何故こんな数に差がある上で、圧倒的強さを誇る部隊のみが王女側についているなどという不自然な状況に?」
俺の問いには王女が答えた。
「それは、反乱軍の幹部がもともと軍部の幹部だったことと親衛隊が軍部から独立した組織だったことが関係しています。ち…王の隣国からの挑発に対する姿勢が弱腰すぎると軍部が反発。この国は国民皆兵を敷いていたため反乱が起こると全国民が軍部側についてしまったのです。」
「国を守る制度が裏目に出たってわけね」
「…」
王女が黙り込んでしまった。
「え?あ…申し訳ございません…皮肉るつもりなど全くなく…」
みんなの視線が痛い。
彼女はそのまま立ち去る。待って待って雰囲気ドツボなんだけど!おい誰かフォロー!
仕方なく(?)俺は彼女を追う。
しかし見当たらない。上に迷った。なんと大きく複雑な構造の建物だ…古い小さな教会だったはずだがこれも「チカラ」の一つだろう。都合のいい能力ですこと。自己主張の激しいドアを見つけた。明らかに他と比べて材質から装飾まで高価なことが素人目にもわかる。ノックしてみた。「誰?」と聞かれたので名乗る。追い返されることはなかった。中に招かれる。直ぐに謝罪をした。
「もう聞きました。」
と彼女はいう。沈黙。仕方がない。
「さっきの政策、お父さんが始めたモノですよね。察するに半ば強引に採決したものでしょう。隣国との関係悪化に伴い、あなたのお父さんは国を守る判断をした。しかし、軍部や国民は理解せず、報復をしないことを弱腰、売国だと非難した。そのままの流れでクーデターが発生ってところでしょうか。」
「国を守る」というところで彼女は下を向く。
「なぜそこまで?」声が震えている。
「そのくらい誰でも予想がつきます。」
世に名高き軍部の暴走ってヤツだ。
しっかし、どうしたらいいかわからない。悔しさとか、寂しさとか、怒りとか、そういう感情がむき出しになっている。
「その格好、やめていただけませんか?」
唐突な俺の言葉に、答えはない。俺も王女を見ていない。
「聞きました。この国の偉人の言葉ですね。『王は民を守る者。民に刃を向ける者は悪魔である。』民を守らんとする貴女が悪魔とは思えない。」彼女がこちらを向くのがわかる。目ぇ真っ赤になってるんだろうなぁ…
「それに、せっかく国を取り戻したのに指導者が悪魔ではカッコがつかないでしょう。」
少し沈黙が続いた。またやらかしたかなぁ…
「俺たちは貴女の親衛隊、日の丸部隊です。この名は王女が直々にくださったものです。俺たちは、あなたの下で戦います。」
そう言って俺は部屋から逃げるように出た。
次の日、俺たちに下りたのは敵拠点制圧。建物内に隠密侵入、そのまま敵を全滅させることが目的だ。今回は室内戦がメインのため編成が変えられた。突入班は王女付きだった5名と前線部隊にいた1人。狙撃班には比較的ロングレンジの銃を使う2名が加えられた。G3、M14、M24全て、狙撃銃かその銃の狙撃専用タイプがあるほどに精度はいい。スポッターだった奴もG3SG1を装備している。彼等は四方から拠点を囲み、俺たちを援護する。そして突入班は王女から敵指揮官を射殺、出来るだけ兵には攻撃するなと制限が設けられた。加えて俺たちが王女側の人間であることを宣言しなければならない。敵陣のど真ん中でその宣言は怖い気もするが、王女曰く「指揮官討ち取れば何もしてこない」らしいので早急に対象を捕捉、撃破しようと思う。暗くなってから作戦が開始された。敵は照明を持っていないので潜入はかなり楽だった。哨戒もご丁寧に松明を持っているからやばくなってもすぐ狙撃班が撃破してくれるはずだ。建物に入りツーマンセルスリーセットに分かれる。俺の班は誰にも見つからないように最上階へ。目標視認。ラッキィ一人だ。状況報告。スナイパーはSGとM14の奴が援護可能とのこと。目標に近づき喉にナイフを当てる。
「動くな。所属と階級を言え。」
「…」
答えない。
少しナイフを押し込む。首を血が伝う。
「…第5騎士団、少佐だ。」
少佐か…あまり反乱軍内での地位は高くないな、殺すか。首にナイフを突き立てる。あぁ嫌な感触…骨は切れないから銃で撃つ。バディがサプレッサーを持っていて助かった。他の2班がホールを制圧したとの情報が入った。首を持って向かう。ホールに入った瞬間、敵兵士の顔が一斉に歪んだ。そりゃそうだ。さっきまで偉そうに踏ん反り返っていたやつが首だけになってるんだから。
隊長が高らかに宣言する。
「いまこの瞬間よりこの要塞は王女のものとなった。不平不満大いにあろう、大変結構だ。なんなら今ここで貴様ら全員で我々の首を落としにきてもよかろう。しかし、こうなる覚悟のある奴に限る。」
そう言って先ほどまでここの司令官だった首を掲げる。彼らは騎士ではあったが侍ではなかった。全員がこちら側へ寝返ることになった。要塞ごと武器弾薬人員まで手に入れることができた。なるほどそういうことですか王女様。後から来た親衛隊の奴らに要塞の簡単な地図を渡し、引き継ぎ完了。我らが王女の身許へいざ参らん。
簡単に報告を終えると、いつ準備したのやらパーティが始まっていた。拠点一つ落としただけで大げさな気もするが悪い気はしない。やったことは完全なる悪行だが、それでも王女が笑っているのが嬉しかった。王女がこちらを向く。急だったからごまかしようがない。王女がこちらへ向かってくる。そして俺の腕を掴んで…拉致られた。監禁場所はあの高価なドアの部屋だ。部屋に入った途端彼女が暗い表情になる。
「手を、握っててください。」
俺は従う。差し出された左手と俺の右腕を重ねる。
「実は、もう一つだけ黙っていたことがあって、これは、騎士団の人も何人かしか知らないことで…」
明らかにおかしい。焦っているのか、余程言いづらいことか。ただ黙って聞くことにする。
「王家で私だけが処刑を免れたのも、このせいで…。…私、王位継承権を失っていたんです。」
ただいま猛烈に反省中にございます