呪い天使 09 『目撃』
たった一言が僕を変えた。
呪い天使 09 『目撃』
再開するために、父さんとの約束を守るために・・・
僕は生徒会長がしたい。
良い経験ができる・・・とも父さんは言っていた。
そうだ・・・僕はすぐにでも先生から無罪を主張しなければ・・・・!
父さんごの思い出に浸った僕はすぐに眠りについていた。
次の日、僕は誰とも話さず一日を終えようとしていた。
都宮も水沢も、この状況はなしづらいらしい。
軽いアイコンタクトで会話して終わった。
そんな放課後だった・・・。
ある女子の高い声が廊下に響き渡り、僕の耳には更に大きく鳴り響いた。
思わず足を止め、そちらに目をやった。
少し興奮気味のその声は先生に向けられていて、どうやら講義をしている様子だった。
・・・そして彼女は、たしかに僕の名前を発していたのだ。
「先生、私見てましたっ!伊藤君の教科書を鈴科の友達、上前が切り刻むのをっ!
本当ですっ。見たんです・・・。あれは全部鈴科君の陰謀ですよっ!」
しばらくの間瞬きすることさえも忘れていた。
この事件を解決に導くために首を突っ込んだのはこの人が初めてだった。
名前は思い出せない・・・というより分からない。
この女子と会うのは廊下ですれ違う程度で会うというよりは見かけるだ。
いつも大人しめで謙虚な感じだ。
もちろん今のような大声を聞いたことがない。
むしろ話声も聞こえたことがないだろう。
そんな彼女が、僕のために声を張り上げてくれている。
「おっ、伊藤君ー!私、見たんだからっっっ!」
目撃情報提供者
「伊藤君、今、三日月さんから聞いたよ。上前君がやったらしいな。」
これだけですべてが変わろうとしている。
「そうだったんですか・・・。」
三日月 由奈 (みかづき ゆな)
名前はやはり初めて聞く。
改めて彼女の顔を見てもやはり大人しそうな人だ。
実はこの件に関して、目撃者が0というのはおかしいと思っていた。
誰かしら目撃したけどみんなこの件に関わりたくないがために口を閉じている、と僕は予測していたのだ。
そう予想してたものだから目撃者には全く期待をしていなかった。
だが三日月は違かった。
廊下で堂々と先生に抗議していたのだ。
先生も完全に三日月の姿に圧迫され、三日月の言葉を信じていた。
「伊藤君・・・本当に鈴科君が・・・・」
「・・・・いや・・・・・僕の口からは何も言えません・・・すみません・・・・」
「分かった。なにか言いたくない理由でもあるのだろう。
よし。じゃぁ、今日から色々調べるよ。気をつけて帰りなさいね。さようなら」
僕はこのとき笑顔になったと思う。
すっごい笑顔で・・・素の笑顔だった。
「伊藤、帰ろう!」
「あぁ、うん。」
大人しいと思っていが、それは偏見であった。
初対面の人・・・ましてや僕なんかの味方につき、さらには一緒に帰ろうと誘ってくれた。
そして何よりも、三日月は明るかった。
「あのさぁー、本当に見ていたの?」
「うん。私隣のクラスだけど見てたんだよ。」
「ありがとう。これで僕の無実が・・・・証明されたよ・・・」
「まったく先生も先生よね。普通は自作自演だなんて疑わないもんっ」
「そうだよね。普通は鈴科を一番に疑うでしょ。」
「ねっ!ははっ!本当に鈴科、これ以上こういう悪さをしないといいね!」
「うんっ!」
三日月とは自然と話があった。
ツボも多少重なり、会話が絶えることがなかった。
暗い夜道だったけど、僕たち二人の周りだけは輝いてたと思う・・・。
今日が一番・・・楽しい日だ・・・
明日はもっと楽しくなりそうだな・・・。
「じゃぁね!」
「じゃぁねぇー!」
僕はすぐに布団に入って、すぐに眠りについた。
親友が増えた。