呪い天使 08 『追憶』
鈴科は自分を無罪に仕立て上げた・・・
呪い天使8 『追憶』
そう、鈴科が遅刻した理由はここにあった。
鈴科がいない間に鈴科の仲間が僕の教科書を切り刻む。
せっかくここ最近、先生も鈴科に疑いの目をかけていたのに、
・・・鈴科が疑われることがなくなったんだ・・・。
しかも僕は強い感情をむきだしにしてしまった。
クラス中の全員が僕を細い目で見ている。
先生も、再度僕を疑い始めようそしている。
・・・もぅ・・・信じてくれるのは水沢と都宮だけどなった。
他は、全員敵だ。
家に帰る・・・。
なんで帰り道はこんなにも遠く感じるのだろう・・・。
過ぎ去るアスファルトの景色を見ながら、ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・。
・・・灯りのついた玄関について、僕はホッとした。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
バタン・・・
何もいわずに、部屋に入った。
机の奥底を無造作にあさる僕。
何かの感触に気付き、僕はそれをそっと取り出した。
それを手にとり、ハンドルを回した・・・。
タララララララ・・・ラララ・・・
・・・オルゴールだった。
そしてそのフタの内側には、僕たち3人家族の写真がある・・・
唯一残った父の写真、唯一父が渡した僕へのプレゼント・・・
このオルゴールの曲名は分からないけど・・・
すごく暖かくて・・・
そのひと時は僕を安心にさせた。
「お父さん・・・会えないかもしれないよ・・・もう一度だけ・・・会いたいよ・・・」
僕はそういいながら手に持っているオルゴールに滴が落ちるのを見てあわてて服で拭いた。
そして父さんの言葉をふと思い返した。
父さんの温かい言葉は、一つしか記憶にない。
だが、その一つは、背景から父さんの表情から、喋り方まで、全て鮮明に覚えている。
・・・・・・・・・・・・
【お父さんっ・・・なんでっ・・一緒にっ、暮ら、せないのっ・・・・?】
小さな頃の僕はわけも分からず泣いていた。
離婚の原因は子どもの僕にも理解が出来ていた。
性格の不一致。
僕は母さんも父さんも大好きだった。
しかし、ある日突然父さんと母さんは喧嘩をし始めた。
その喧嘩はあまりにも大きく、父さんと母さんは一生会わないような間柄になるまでお互いを嫌いあった。
・・・いや、どちらかといえば母さんの方が離れたい思いが強かったのだろう。
嫌でも聞こえてくる会話を密封された部屋で聞いていた僕にもどちらが攻め手なのかくらい知れた。
だが母さんも嫌いでなければ、父さんも嫌いでない。そして大好きだ。
僕はどちらの味方もできずに、子供を養うという面で母さんにひきとられたのだ。
【絶対、この子や私に会っちゃだめよ。】
そういった母さんは引っ越しの手続きを全て自分で行い、済ませた。
もちろん父さんは住所さえ教えてもらえなかったのだろう。
だから最後の日、母さんがトイレに入った隙に父さんはたった一つの言葉だけを僕に託した。
【雄・・・もうお別れだ・・・一生会えないかもしれない・・・
だが、それは嫌だ・・・我慢できない・・・
まだ少し先のことだが・・・高校生になったら生徒会長になりなさい・・・
お前の性格によく合っているし、たくさんの経験ができるはずだから。
そして会長になって県に名前を登録されてくれ・・・。
そうすればお前の居場所を突き止めることができる・・・。
高校に出向いて、お前にそこで再開だ。
分かったか?・・・お願いだ・・・俺は・・・それまでずっと待ち続けているからな・・・。
ごめんな・・・雄・・・こんなんでよ・・・・・・
信じてるからな・・・じゃぁな・・・・・・・・・・・・・・・】
・・・・・・・・・・・・
オルゴールを再び僕は回した。
そして知らない間に僕は深い眠りについていた。
父さんとの再会のため・・・僕は・・・