呪い天使 06 『不安』
物証が初めて現れた・・・
呪い天使 6 『不安』
・・・またか・・・・・
また僕の物が切られている。
体操着が、見事無残に切り刻まれている。
今回ははさみのようだった。
これはどう考えてもイジメだ。
こんなにも続けば先生だって信じてくれるはずだ!
さぁ先生・・・信じてくれますよね・・・?
僕の予想はそこそこ的中した。
ここまでいくと流石に先生も僕のことを多少信じてくれる。
水沢のおかげだった。
彼は朝、僕の体操着を見ていたし、その間ずっと一緒にいたことも証明してくれた。
「じゃぁ君のいっていた通り、靴も・・・・そうなのか・・・?」
ためらにながら先生は僕を少しだけ信用した。
これを機に僕は一気に自分を主張した。
「はい、そうなんですっっっ。このナイフもその日はじめて見たんですっっっ」
「そうか・・・すぐに水沢君と一緒に今日校長室へきなさい。」
「はいっっ・・・!!」
当然のことだが無罪が確定された僕は歓喜極まり、同行してくれた水沢の制服にしがみついて、ろうかに座り込み・・・泣いた。
校長室では、僕の意見がすんなり通った。
僕はほとんどの事を詳しく説明した。
だが最も重要な事実が頭にひっかかり、口から出てこようとしない。
鈴科のことだ。
今のところ、校長との会話の中で鈴科という名前を一切出していない。
不自然に人の気配さえ感じられない廊下でのあの出来事が、先生・・・否、他人に伝わるのをこの口が拒んでいるのだ。
『こんなんじゃないからね』
この意味ありげな言葉、不敵な笑みが脳裏から一切離ようとしない。
今後も鈴科は僕へのいじめを続けるだろう。
僕は鈴科が犯人だと公になろうがならまいが、彼が今後誰に対してもイジメをしなくなるようになればいいと思っていた。
しかし、少しでも先生が鈴科を疑わなくては彼の悪行は止まることもないだろう。
だから僕はこう言った。
「・・・別に思い当たる節はないんですけどね・・・・・・うーん・・・
あ・・・えぇ・・・と・・・人を疑うのは好きじゃないのですが・・・ ・
鈴科君が僕を恨んでも仕方無いですよね・・・生徒会のことで・・・・・
あっ・・・も・・・もちろん証拠なんてないですけど・・・」
先生は真剣に聞いてくれた。
そして鈴科君の行動も良く見ているよ、と助言もしくれた。
「では、伊藤君も水沢君も持ち物には気をつけるように。」
「はい」
そう答えた後ドアを開けて外に出ると同時に妙な胸騒ぎが走った。
人の気配がドアの前にしたのだ。
気のせいなのだろうか?気のせいだと信じたかったが、その気配に鳥肌を立たせていた事実に否定ができなかった。
放課後、僕と水沢と都宮は一緒に帰ることになった。
真相、恐怖、傷の跡・・・全てを話した。
そして二人は僕を助けてくれるといった。
僕はすっごい安心して、家に帰った。
家では僕が先生に頼んだだけあって親には伝わっていた。
母は無言で笑ってくれた。
僕の不安は一気に消えていった。
これ以上心配させる物か・・・。
親が辛い思いなんかしちゃいけないんだ・・・。
バック、教科書ノートを念入りに確認した後床につき目をつぶった。
次の日は、流石に何もおこらなかった。
鈴科は何を考えているのだろう?
そういう疑問の中はチャイムは鳴り響く。
そっと後ろを向く僕・・・
また僕を見て不適に笑うのだろうか?
先生に問い詰められた彼がそこにはいるのだろうか?
犯行を恐れる気持ちを抱いて、足を震わせているのだろうか?
後ろを向いたまま僕は固まる。
後ろには鈴科がいなかった。
無遅刻無欠席で有名な鈴科だった。
彼は昔、 『記録のために頑張らなきゃね』と目を輝かせていた。
なのに何故・・・。
風邪?いや、誰かから聞いた話だが、彼は風邪をひいたことがないと言う。
少なくとも多少の熱が出ても学校に遅刻せずに登校していたことは事実らしい。
では何故・・・?
もしかして・・・
また、鈴科の不敵な笑みと僕への暴行が頭のビジョンに映し出された。
僕は何かを予感した。
家を荒らそう・・・とでもしてるのか・・・?
まさか・・・
まさか・・・・・
今日は親は家にいるんだぞ・・・!?
何を考えているんだ・・・!?
朝の会は終わり、僕は職員室に走った。
「先生っっ!ちょっと電話かしてください・・・・!」
・・・プルル・・・・プルル・・・・・
・・・・プルル・・・・・プルル・・・・・
・・プルル・・・・プルル・・・・・
・・・・・・・・プルル・・・・・・プルル・・・・・
・・・・・プルル・・・・・・・プルル・・・・・
電話は同じ音を繰り返し流すだけだった。
不安が募る・・・