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呪い天使 45 『呪人』

呪い天使45 『呪人』



帰り道、三日月に出会った。

会話の内容は衝撃的なものだった。


「伊藤・・・。鈴科・・・・鈴科はね・・・まだ病院よ・・・・・」


鈴科は今病院にいる。

一生抱える障害に毎日おびえながら。

いくら鈴科が僕に卑劣なことをしたと言っても、障害を持たせてしまったのは大きなことだ。

鈴科も背負っていくだろうが、同様に僕もその十字架を背負っていくんだ。

一生外れることのない、大きな鎖に繋がれたその十字架を・・・。

そしてもう一つの不安が胸をよぎる。


今まで僕を襲っていたのは・・・一体・・・・

僕は三日月を再度引っ張った。

近づいてくる、街頭がソイツを照らす。

僕はソイツが照らされた瞬間、その腕をつかんだ。


「・・・・・・・・・・・・・」


この、細い腕。

冷たい体。


後姿で、その顔が頭に映し出されるよう。

・・・コイツの顔は・・・・・忘れられない・・・。




「・・・・な・・・・・なんで・・・なんでだよっ・・・・う・・・うわぁああぁっっ!」




フサフサしてあと少し伸びればヘルメットになりそうな、その髪。

そして冷たい・・・目。




僕が右手に掴んだ彼女の手は、小さく丸まり、小刻みに震えている。

後ろで震える小さな彼女の顔には、既に涙が流れている。

そして、僕の目にも。




「・・・・水沢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




僕を襲い、追いかけ、精神的にダメージを与え続けたソイツは・・・

親友だと思い続けていた、そんな水沢だった。

彼は、下を向いていない。

こっちを向いている。

眼球に映る月の光がくっきりと見えるほどに、こっちを見ている。

僕がつかんだその腕を、彼は大げさに振りほどいた。



「ははっ・・・はははっ・・・!はははははっっっ!はっははっははっ!」



その声は響いた後、闇に消えていく。

しばらくその声はこだましているかのように繰り返される。

実は顔が水沢に似ているだけの人なのか、とも頭に疑問がよぎる。

足の先から頭部に向けて一瞬の内に鳥肌が立っている。

髪の毛が逆上したように上を向いてるとも錯覚させられた。



「なんで・・・なんで・・・・?なっ・・・・なんでなんだよっ・・・・!?」



月の光が反射した目で下から覗くように僕を見てきた。

別人としか思えない。




「・・・簡単に言えば、お前が最低最悪の人間だということに気付いたからだよ」



「嘘だ!そんなはずがない・・・!またそれも鈴科が嘘をついてお前を・・・」




驚きで息が乱れてるのだろうか・・・息が続かない。

息継ぎをしようとした瞬間、水沢は狙ってたかのように口をはさむ。

そして、言葉を並べ始めた。



「・・・

 『計画実行ノート』

 『都宮のお金を利用して遊び、さらに都宮のお金を無くす』

 『鈴科の靴をボロボロにして、僕と同じ状況にしてやる』

 『鈴科の机から教科書を取り出し、鈴科が僕の所へ寄って激怒しているときに三日月がこっそり教科書を戻す。』

 『鈴科のアドレスをネットに流す』

 『都宮と鈴科の物を無くし続ける』

 『そして鈴科に体育の時間、怪我を負わせる。』


  ・・・何それ?なんて言わせないぞ?」



「・・・・・・・・・・」



僕と三日月が二人でノートに書いた作戦である。

まさに水沢は僕たちの陰謀を見つめていたのだ。

ということは、跳び箱事件の後、僕と水沢が再び親友関係を戻した時から知っていたのだろうか?

そうだ・・・騙されていたのだ。

彼はノートの一番最後に書いてある跳び箱の事も、すべて、何もかも知っていたのだ。

では、三日月が言っていたように僕が犯人という噂は噂ではなく、事実としてクラス中に知れ渡ったのだろうか。

それなら全て分かる。

水沢がそのノートを見て、クラスにそのことを告げ、僕と三日月は凶悪犯と見なされ・・・

三日月は転校せざる得ない状況にたたされてしまっただろう。

・・・僕たちのすべては崩されたのだろう・・・・・。



「俺は知ってる・・・。お前らが鈴科に対して行った、イジメを」

「イジメじゃない!・・・し返しただけだ・・・・!」

「・・・・さて、鈴科は君に怪我をおわすようなことはしただろうか?」

「・・・最初に・・・」

「最初に殴られた?そが鈴科が背負うであろう障害とイコールでつながるのか!?」



・・・・・言い返せない・・・・・・・・・

ダメだ・・・・。僕は・・・・終わったんだ・・・・。



「そして都宮も言っていたとおり・・・お前は俺や都宮を裏で嫌ってたんだってな?」 



これは初耳だった。

そして身に覚えが無い。

上前が転校する丁度その時、気づけば水沢は知らずに僕らの前から消えていたんだ。

なのに何故・・・!?

これは鈴科の陰謀だと今初めて悟った。



「それは鈴科の陰謀だ・・・!ふざけるな・・・騙されてんじゃねーよっ!」


「またまた人のせいにしようと。・・・やっぱりお前は最低だよ。 でもこの話は本当に事実だよ? 上前の転校時、僕に告げた後、都宮は同時にこうも言った。


『私さ、由奈ちゃんとは仲良い今までいたいから一応伊藤とは一緒にいるね。』

『不本意だけど、由奈ちゃんとはさ・・・友達でいたいから・・・』


ってな。さらにこの前僕たちは表面上で仲良くなった時期あったよな? 鈴科が病院に運ばれた直後だ。 都宮はな、俺にそのことを一回も訂正しなかったんだよ ・・・・お前、本当に最低だよ。お前みたいなの・・・初めて見た」



都宮にも僕は嫌われていたようだ。

三日月もそうなんじゃないかと僕は被害妄想に襲われた。

三日月を掴んだ手を振り払い、手で体を押さえ始めた。

・・・三日月がどんな反応をとったかなど知ろうともしない。



「この行動は、確かに鈴科の意思にそったものだ。 『呪う、殺す』という言葉だ。俺はお前を精神的に追い詰めようと努力した。鈴科の仲間の暴力団一味と手を組んで。 勘違いするなよ、俺はこの行動を自らすすんでやったんだ。病室で動くことさえもできない鈴科に俺が提案した。お前が病院に行くことを目撃したという、俺とアイツが病院に行った時より前に御見舞いに行ってたんだよ。鈴科はゆっくりと折れそうな首を振ってうなづいてくれたよ。 ・・・俺は、人をこんなにも殺したいと思ったのは初めてだよ・・・」



僕が目撃した病院にいく人―――クラスでオドオドしているあいつ―――と・・・

そのもう一人が―――水沢だったのか・・・。

そしてその前から御見舞いに行っていたというのか・・・。

さらに、普通は『死んでほしいと・・・』とまでは、いかないのではないだろうか?

加害者になってもよいという覚悟さえもあるのだろうか?

もちろん水沢は手にナイフなど用意するはずもなく、僕の心臓は助かったが―――――

明らかに心は彼の目に押し潰されていて・・・

そして、死んだ。



「じゃぁな。」



水沢は消えていく。

闇へと消えていく。

一瞬のうちに彼は消えていった。

視界から消えたが、僕の胸のあたりに彼が居座り続けていた錯覚に襲われた。

ふと後ろを見ると、三日月はこういった。



「私はっ・・・う゛っ・・・うっ・・・・・敵じゃないっ・・から゛・・・・ねっ・・・っ・・・?」



『こんにちわ、0 〜マル〜です。ここまで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました。【呪い天使】を最終話までどうぞよろしくお願いします』

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