呪い天使 39 『遠出』
呪い天使39 『遠出』
オルゴールには、父さんの居場所が書いてあった。
父さんなら・・・母さんを助けることができるかもしれない・・・
僕は気付いたら身支度を済ませ、外に出て駅を目指していた。
駅に向かうはずなのに暗くなっていく道のりは既になれていた。
そんな街を踏みしめ、街燈に照らされながらゆっくり歩いてゆく。
田舎なのか都会なのか分からないこの街は、住宅街という言葉がピッタリだった。
駅に向かうのは久し振りだ。
タッタッタ・・・
やがて街は静かになり、僕の足音も響くようになっていった。
前と・・・同じ。
同じシチュエーション。
そんな夜は必ずやってくる、慣れてきそうで慣れてこない、あの・・・アイツが追いかけてきた。
タッタッタ・・・
タッタッタ・・・
タタッタタッタタ・・・
やつは突然現われる。
雰囲気で気付いていたがやはりアイツはやってきた。
全速力で駆け抜けてもソイツは僕を追いかける。
タッタッタ・・・
タタッタタッタタ・・・
手が・・・手が僕の肩に忍び寄る・・・
だめだ・・・・・・・足で負ける・・・・・。
タッタッタ・・・
タタッタタッタタ・・・
一瞬にして体中が鳥肌を立てる。
肩が冷たい・・・
タッ・・・・・・・・・・・・・・・
また・・・あのときと同じことを言う・・・
だめだ・・・。怖い・・・・・・・・・・。
でも・・・・・ここは・・・・・・・・・・・・・!!!
僕はふいに後ろを振り返りながら叫んでみた。
もうコイツがどんな奴かは見当がついている。
僕並に足が速いやつといえば・・・そして・・・・
こんなことをするのは・・・・
「鈴科ー!」
後ろを見たが、変わらぬ景色が広がるだけだった。
もう、肩から伝わる冷たさは無い。
恐らく鈴科は退院したんだ。
こう考えると恐れるものはただの鈴科・・・。
そう考えることにしよう。
今まで関係のない物音、人にさえ怯えていた。
得体も知れぬ不気味なあの冷たさに僕はやられていた。
もちろんあれが幽霊だなんて考えたことは一度もなかった。
ただ怖かった。
追われている、プライベートを知られている、襲われる・・・
今後の身に何が起きるかも予測ができない・・・。
そう、僕は怯えていたんだ。
だがあれは“鈴科”という敵の行動だと考えれば気が楽だ。
彼はそこまで馬鹿じゃない。
僕を殺すことはまず間違いなく無い。
することができるのは今のが限界だろう。
割と、子ども騙しだ。
たしかにあの冷たさと声には震えてしまうのは事実。
もちろん追われている、見られているのは怖い。
だけども気を楽にしよう。
その一心だった。
何も出来ない鈴科の限界の行動がコレ。
被害はない。
それくらい我慢できる。
僕はずっと思っていた。
これくらいならオバケが怖い、と同等のものだ。
そんなのはすぐに慣れるし、たいしたことはない。
実際のところ安心していたんだ。
そう・・・父のいる駅に着くまでは・・・。
この鈴科が僕の後ろを着いてきていることなど知らずに。
―――――――――――――――――
ようやく父さんのいる駅に着いたようだった。
もうこの旅でお金を全て使い切ることになる。
残りのお金は母さんの入院費、約一週間分だ。
それまでの間に父さんを探し、お金をもらい・・・
母さんを、救わなければならない・・・・・・
そして・・・夢にまでみたほどの・・・・僕の夢・・・・
もう一度家族3人で・・・・
僕は切符が出る場所を目にやりながら改札口を出た。
あとは住所を見ながら細かく調べ上げるだけ。
この場所は一言で言うと広い。
真っ暗な時がそう感じさせているのかもしれないだろうが、少し目を凝らせば遠くまで見える。
だが都会というわけでもない。
しかしながら会社はいくつかあるようなそんな場所。
緑は少しだけある。
きっと朝は会社員が大勢、電車に乗るに違いない。
ゆっくりと僕は住所を調べていった。
どうやらマンションのようだ。
この夜遅く、人の姿は見られない。
車もない。
信号機は気にする必要もないが僕は念のため止まっておく。
信号待ちの僕の指は、歩行者のための黄色くて押す部分が赤いボタンに触れていた。
すぐに信号が黄色へと変わり、赤になる。
歩き出した。
もう少しで見つかりそうなところで僕の足は止まってしまい、住所とのにらめっこが始まった。
父のマンションはなかなか見つからなかい。
途方にくれ、僕は意味もなく住宅街の中を歩いていった。
そんなとき事件はおきてしまった。
僕は、本当の恐怖を知ることになる。
ガァ――――――――――ッッッ!!!
大型トラックが僕に目掛けて走行してきた。
襲いかかる恐怖。そして希望。