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呪い天使 34 『黒板』

不安は的中するものか


呪い天使 34 『黒板』



鈴科の御見舞いに行った人が、鈴科から何を聞いたか気になっていた。

僕の犯行を鈴科はその人に伝えたのだろうか?

そして感じるこの不安・・・。

だが不安とは裏腹に鈴科が病院にいないだけであった。

だけども増していく不安。


朝、御見舞いに来た人と偶然にも教室に居合わせた。


「お前・・・鈴科から何を聞いた!?」


「何も聞いてない・・・!

 病院に・・・鈴科がいなかったんだよ・・・ホントに・・・

 で、僕はみんなに告げたんだ・・・。いないって・・・・

 それで・・・みんな・・・・・嫌な予感を感じていたんだ・・・!

 鈴科が死んだんじゃないかって・・・・・・・・・・・・

 本当だ・・・!命をかける・・・!本当だ・・・!」



ふと―――僕は気づいた。

彼は、僕の問い詰めた内容に驚いていないこと。

たしかにびびっていはいた。

だが世間一般では僕は鈴科の被害者である。

僕の問い詰めはあたかも加害者のような内容であった。

それに彼は驚いていない。

さらに僕がクラス中の人に聞いた『鈴科の病院に行った?』という質問に、みんな黙りこくっていた。

むしろ睨む人も少々いたくらいだ。

それに三日月のクラスでは普通に鈴科の話題があったそうだ。

―――僕のクラスだけ・・・

いや、クラスではその日『鈴科はそろそろ帰ってくるんじゃないの?』と噂していたのだ。

だが僕はその話題に入れなかった。

つまり・・・―――――僕だけ。


黒板掃除をしている僕の足は震えだす。




『伊藤、死ね』




薄らとチョークの跡が見える。


昨日・・・僕と三日月が病院に行く前・・・クラスの人はほとんど残っていた。

普段は我先にと廊下に出るそんな連中がこの日だけは・・・

そしてこの黒板に書いた文字・・・。

何が起きているのだろうか?

僕の頭は混乱しだした。


そして学校が始まる20分前。

都宮がドアを開ける。

僕にとっては当然幸運なことだった。

すぐに僕は黒板を指さす。

眼は見開いたまま。

口は―――閉じたまま。


都宮は口を押さえて驚き出した。


「・・・何これ・・・・・・」

「わからない・・・書かれていたんだ・・・・昨日・・・」

「昨日はすぐに帰っちゃって・・・でもみんな残ってた・・・・・」

「・・・・・何を話していたんだろう・・・・・・・・・・」

「伊藤は悪くないのに・・・鈴科が偶然タイミング悪く事故で怪我しただけなのに・・・」


都宮もその事実を知らない。

でも、彼女はこの教室の裏で起きていることも知らないようだ。

否、裏というよりは表なのかもしれない。

そしてあいつが堂々と教室に戻ってくる。

僕は鬼の形相となり彼の元に歩み寄っていった。


「お前・・・今から少しトイレに来い・・・ただ質問したいだけだ・・・」

「ぅ・・・っ・・・うん・・・」


都宮の顔も見ることなく僕はトイレに行った。


「お前・・・本当に鈴科が病院から消えてたのか・・・?」

「ホントだよ・・・それは間違いなく・・・今病院に調べても同じだよ・・・」

「昨日、放課後残っていたか・・・?」

「ううん・・・用事があったからすぐに帰ったんだ・・・。」

「・・・証明できるものは?」

「ある・・・!これ・・・!これだよ・・・!地元の病院・・・!」


病院の診察券には診察時間が書いてある。

その時間から照らし合わせてすぐに帰ったようだ。

僕たちよりも早く。


「じゃぁ、クラスは今、鈴科や僕のことをなんと噂している?」

「してないと思うよ・・・!ただ、鈴科がいないのは死んだんじゃないか―――ってことくらいで・・・」

「嘘だ。つい最近、クラスでは鈴科はそろそろ復帰するのでは?と俺の耳に入ってきたが。」

「・・・ありえない・・・・・!僕の周りでそんなこと言う人は一人も・・・」


その後何度も問い詰めたが結果は同じであった。

もう彼からの情報収集は諦めることにした。

どう考えても嘘を吐いているように見えない。


でも今分かることは一つ。

僕はクラスの人に裏から嫌われている。

何故かは分からないが―――。


もちろん、すぐ分かることになる。

今日、この日に。


1分前。

30秒前。

10秒前。

5秒前。

3秒前。

1秒前・・・チャイムだ。


変わらぬ様子で先生が教室に入ってくる。

当然黒板消しの罠などの刺激はないので一日は至って静かに始まる。

そして先生の話は終わったようだ。

同時に皆立ち、同時に頭を軽く下げた。

そして先生は僕にこういう。


「ちょっと校長室に来なさい。」


不安がピークに達している。

貧乏ゆすりに紙一重、というくらいの震え。

その足をゆっくりと持ち上げる。

校長室までの距離がやたら長く感じる。


「・・・伊藤君。」

「はい・・・・・・」

「昨日・・・クラスのある人から聞いたよ。」

「・・・誰ですか?何をですか・・・?」

「誰かは言えないが・・・、単刀直入に言う。あの跳び箱は君が仕組んだことなのかな?」

「・・・はい?なんですか・・・それ・・・」

「そうある人が言っていたんだ。『間違いなく伊藤君の仕業だ』と。」

「・・・根拠なしに・・・・・」

「だが、その前に君が跳び箱を崩しているし、マットもずらしている。

 そこから少しバランスを崩させたりできるものじゃないのかね?」

「・・・だから証拠がないと・・・・・!僕はやってません・・・!」

「しかし・・・他の人も私の所に来るのだよ。『あれは伊藤君だ』って。」

「・・・デタラメだっっっ!」


僕は眼を大きくつぶり頭を抱えて下を向いた。

何故・・・ばれているのだ・・・?

何故人々が敵にまわっているのだ・・・?


「とりあえず、お話を聞くためにお母さんにも話させてもらいます。」

「・・・それは・・・・・・・・」

「悪いが既に話している。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「別に君にやましい点がなければそれだけのことだよ。これから調べることにする。」


調べても大丈夫だ・・・。

僕がやったという事実は見つけられないし証明できない・・・。

だが・・・今気にかかるのはクラスメートのことだ・・・。

何故・・・何故・・・くそぉっっっ・・・・!


クラスに戻ると辺りは急変していた。

もうオープンである。

ひそひそ話のオンパレードであった。

聞こえる。

聞こえないないように話しているふりしてるがこれは間違いなく聞こえるように仕掛けている・・・。



『伊藤が鈴科の怪我をさせたんだろ・・・?』

『つい最近まではアイツの前ではばれないようにしていたけどいいのかよ』

『先生に今呼ばれたんだしもういいだろ。』

『わざわざアイツの前で【鈴科はそろそろ治る】とか適当なこと言ってたのにな。』

『鈴科が病院から消えた理由が、伊藤からの怪我があまりにもひどいから―――だなんて知らせたくないからな。』

『鈴科、可哀想だよな。きっとその怪我について伊藤にだけは知らされたくないはずだぜ。』

『あいつ・・・最低だよな・・・故意的に人を怪我させるとか・・・』

『あ・・・・あいつ戻ってたよ・・・ははは・・・!』



聞こえる。

僕は聞こえて聞こえないふりだ。

聞くふりなどできない。

固まる。

ペンまわしをしようとして落としたペンは拾わない。

紙に絵を描き始める。

消しゴムは使わない。

耳はシャットダウンできない。

嫌でも聞こえてくる。

・・・落としたペンを拾った。



クラス全員が敵にとなっているのに僕は気づいた。

再び都宮と上前と水沢は僕に話しかけづらくなったのか、その日は話すことが無かった。



三日月と帰る時・・・。

僕は三日月に相談していた。

今後のこととか、そして・・・


「なんで・・・なんでバレたんだろう・・・」

「わからない・・・それとも・・・推測・・・?」



僕たちは何も知らない。

『ラストが近づいてきました。これからもどうぞよろしくお願いします。』

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