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呪い天使 30 『解放』

――――――


呪い天使 30 『解放』


都宮――――

鈴科を嫌がったその矢先に鈴科が怪我で運ばれて動揺している。

さらには鈴科を失い孤独になっていた。


僕、伊藤―――

鈴科の言葉、

「・・・たとえ死んでも・・・・呪ってやるからな・・・・・・・絶対・・・・殺してやる・・・・・・・」

これに恐怖を覚えていた。

だがある仮設を合理化することで僕の心は軽くなった。

『鈴科はトップなのだから暴力団に僕を殺すよう命じ、殺したら、鈴科に大きな責任がかかってくる。』

―――だから僕は殺されない。

そう信じていた。


三日月―――

彼女はあまり動揺をしていなかった。

そして今まで通り・・・むしろ喜んでいる。

昔に戻れたと意気揚揚だ。


そして今僕も―――意気揚揚に戻った。

三日月と同様。




・・・ある日。

僕は生徒会長の仕事をさせてもらっていた。

理由は鈴科がいないから。

これで僕の願いはすべて叶えられたような気がしていた。

父との再会は最終手段の紙一枚で解決したうえに、生徒会長の仕事で経験を学べる。

三日月も書記の仕事に就くことになり(この学校は生徒会が人気なく、いつでも誰でも書記と会計は入れるのだ)僕たちはますます日々を充実させていった。



しばらく、その生活が続いた。

全ては終わったんだ。

鈴科は消えた。

都宮もここ最近は大人しい。

僕たちへのイジメの気配がない。

さらに彼女は誰とも話している様子もない。

授業も度々しか出てこないし、顔を出したと思ったらトイレに生き、出たと思ったら目を赤く染めていた。

慰める仲間もいなく、休み時間も下しか向いていない。

ちょっと・・・・大人しすぎるような・・・・・・・・・・・・・


僕と三日月は、そんな都宮に同情をするようになっていった。

同情という言葉は不向きかも知れない。

彼女がいつしか鈴科に出会い、そうして僕たちをいじめるようになっていった。

だが―――それまでの都宮も僕は知っている。

元気で、差別なく誰とも話す事が出来て、ムードメーカーで、クラスの中心のそんな都宮を―――僕は知っている。

憧れだったくらいだ。

だから話しかけられたときはものすごく嬉しかった。

嫌がる気配もなく、僕と話してくれた。

もちろん話題が冷めることなく、都宮によって盛り上げられ、僕は笑い続けることができた。

ねぇ・・・なんで今の君はそうなっているの・・・?


三日月も、都宮の良さを知っていた。

そしてある日、僕は思い切って都宮に話し掛けてみた。


「・・・都宮・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・何・・・・・・・・・・?」

「鈴科も消えたんだしさ・・・また、やり直さない・・・ほら、仲良くさ・・・」


仲直りというものだ。

自分たちもあそこまでし返ししといてこんな理不尽な話はないだろう。

だが―――僕は戻したい。

鈴科のいないこの環境で一からやりなおしたい。

その言葉に都宮は表情を変えた。

しかしその表情は、良い表情ではなかった。


「今さら何言ってんだよ。こっちは危うく退学処分されるとこだったんだ。

 そっちが最初に私を裏切っておいて今さら・・・・・・・!」


「・・・・・・・・・・え・・・・・・?」


『退学処分』という言葉を僕は理解ができなかった。

いつ?何故?まさか僕のせい?

しばらくの沈黙が続いた。

状況を読み取ることが出来なくなっていた。


「どういう意味・・・・・?」

「・・・え・・・・・・どういう意味って・・・・・それは・・・・・」


都宮の歪んだ表情が、丸い表情へと変わっていった。

僕には、表情が戻ったとも感じられた。


都宮の説明で、僕と三日月は目を丸くした。

しばらくの間、体全体が固まっていた。


鈴科が全て話を仕組んでいたのだ。

写真をとったのが僕自身だという嘘もつかれていた。

僕と鈴科が仲間だと思い込まされている都宮がいた。

そして写真の後ろに飲酒した都宮がいて、退学処分されそうになっていた。

それからずっと、上前のお別れパーティーの時も都宮は敵だった。

だからオルゴールの情報提供をしていたのか。


「結局・・・・・全て鈴科が・・・・・」


都宮はふいに泣き出した。

声を荒げ、まわりも気にせず泣き出した。

ハンカチで顔を抑え、また下を向き始めた。

ごめんなさい、と何回も言っていた。

そんな都宮に僕達も謝り続けていた。

しばらくして都宮がようやくハンカチを下ろした。


「ごめんなさい・・・オルゴールのこと言ってたりして・・・・」

「・・・時雨は、悪くないよ・・・。」

「そうだよ・・・直ったしさ・・・!」

「私たちも・・・お金使わせちゃってごめん・・・」

「大丈夫だよ・・・!それくらい・・・!私の方、がっ・・・・!」


三日月まで泣いていた。

僕も目頭が熱くなったが必死に堪えた。

クラス全員の姿が消えるまで教室にいた。

最終的には、三人とも泣きつづけていた。


次の朝だった。


三日月がついに水沢に話し掛けた。

上から覗き込むように水沢に手を出した。

三日月は下ばかり向いている水沢に顔を近づけ、話し掛けた。

都宮のときと全く同じセリフだったが、水沢は三日月の手をとった。


「またさ、みんなで仲良くやろうよ。」


水沢の久し振りの笑顔を見た。

その笑顔は大きく上下に振られて

「うん」と叫んだ。

やっと全てが昔に戻った。

やっと終わったんだ。

4人で帰りながら話す様子は、紛れもなく本物の友人だった。

そして全員が本物の親友であると思ってるはずだと思った。

顔を見れば分かる。

全員の顔が昔と全く一緒だ。

水沢がやっと冗談話をするようにまでなってくれた。

鈴科さえ居なければ、僕らは最高だったんだ! 心からそう思って空を見上げ、神に感謝した。


勇気をくれてありがとう。



・・・もちろんそのときは気付く余地もない。

都宮が水沢を突き落とすために言った言葉を、訂正してないなんて。



勇気とは何に使うものだろう

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