呪い天使 27 『心折』
アドレスがネットに撒かれる・・・
呪い天使 27 『心折』
鈴科からの暴動。
ざわめいてる中、たった一人、違う行動をする影があった。
僕の机の中にあるノートを手に取りそれを読んだ。
後にその行動が、僕たちを狂わすことになる。
・・・赤いインクが滲んだ先にある言葉は
『鈴科のアドレスをネットに流す』
『都宮と鈴科の物を無くし続ける』
『そして鈴科―――――』
行はそこで途切れている。
それを見たそいつは、慌てて机の中にしまい、必死に震えを止めていたそうだ。
翌日
鈴科の携帯のアドレスはネットに広がった。
全く関係の無い、見たこともない人からメールがきた。
メルマガ、荒らし、サイト紹介など、さらにはチェンメまでまわっていた。
ほんの一瞬で鈴科のメールはいっぱいになった。
しまいには携帯が作動しないまでに溢れてしまった。
学校でそれを確認した鈴科は授業が始まるたびにトイレに駆けていった。
知らない間に時間はたって、すぐに昼食の時間がきた。
そのとき鈴科は保健室で昼食を取っていた。
顔は崩れ、目線は途方にくれ、下しか見ていなかった。
鈴科は、心臓が重くなるのを確実に感じていった。
一方僕らは心臓が軽くなっているのを実感していた。
昨日からどんな掲示板にも書き込んだかいがあった。
そして授業中にもずっとコピペ文を張り続けた。
ここまでになるとは想像もしていなかったが、鈴科が苦しんだので完全に花丸ものだ。
もちろん―――鈴科が保健室やトイレに駆け込んでいるうちに最後から二行目を実行するため、
鈴科の机をあさりては物を捨てていた。
もちろんバレないようにだ。
人が多いときは水筒を零すだけで十分である。
そして三日月はそのノートのその行に赤い“×マーク”をつけた。
僕と三日月は笑い合った。
あと残すは二行だけ。
というかその一行は今のようにいつでも行っていることなので正確に言えばあと一つだけになる。
明日の体育の時間で全てが終わる。
二人とも冷汗がふいに出てきていた。
・・・あと少し・・・・あと少しで決まる・・・・・。
いろんな意味で激しく鳴る心臓の音を沈めた。
僕たちは最後から二行目の都宮と鈴科の物を隠す、無くす、壊すを続けていった。
そろそろ都宮のお金もどうなるもんかと思ったが、
僕たちの交友費を無くしているだけあってそこまで被害が大きそうには見えなかった。
その証拠に都宮の物を無くしてもその次の日あたりで新しいのが買われているのだ。
なんという経済力だろう。
だが引っかかる点がいくつかあった。
鈴科だ。
彼の教科書もまた、一日当たりで新しいものに買い替えられていた。
確かに鈴科は一応はお金持ちだが都宮ほでではないし、
水筒で濡らされたが頑張れば使えるような教科書・・・もしも僕だったら絶対使い続けているような教科書まで、
全て新品になっていたからだ。
普通そこまでするのだろうか?
確かに後ろに暴力団がいるとはいえ・・・。
普通ならば、お金よりもまず、時間を惜しむはずだ。
新しいものを買う、その時間が面倒くさいはずだ。
なのに何故だろうか?
その理由は僕たちには解けなかった。
その日の放課後。
僕と三日月はまた一緒に帰っていた。
今回は方向は違かった。
向かう先は、オルゴールの専門店だった。
「こんにちわー。」
「おおっ!オルゴールは直ったよ。」
「わぁ・・・!ありがとうございますっっっ!」
オルゴールは完全に直っていた。
匂いも音も変わらず、昔と同様に輝いていた。
お金を取り出し、オルゴールを手にした。
「オルゴール直ってよかったね。」
「あぁ。うん。壊された時はどうしようかと思ったよ。」
「でも直ってよかった〜。」
「ほんとほんと。」
僕たちは変わらぬ景色を観賞し、毎日のように同じ道でお別れの手を振った。
「あ・・・。オルゴールのお釣り間違えてる・・・・・・はぁ・・・・・」
クルッと一回転して足の向きを変えた。
三日月が歩く姿が遠くに見えたが、流石に迷惑だろうと僕は独りオルゴール店に戻ることにした。
オルゴール店についた僕は店につくなり手を膝に置き、乱れた息を戻していた。
体力的にもあるが精神的にもだ。
独りで時間を過ごすことの辛さを知った気分になった。
「あ・・・店員さん・・・お釣り・・・間違えていて・・・」
「おっ、伊藤君か。悪い悪いっ!ごめんな!」
「いえいえ。」
「そうそう・・・さっきの可愛い子はアレかい?」
店員はやらしい目つきで僕に笑いかけた。
「アレ・・・ですか・・・・?」
「悪い悪いっ」
「いえ、いえ・・・。」
「話が変わるけどもよ、君は家族思いだねぇ」
「え・・・なんでですか・・・!?」
別に否定したいわけではないが、なんとなくこっ恥ずかしいものがあったのでこんな返答になった。
「いや、家族写真らしいものがあったし、その写真の裏に手紙みたいなものがあってな。ま、読んでないけどな。」
一瞬固まった。
鳥肌が立ったのに気づいた。
今、何と言ったのだろうか?
『手紙』と言いはしなかったか?
・・・初見だ。
この何年かの間それに気付かなかった。
写真は貼りっぱなしで大切にしていたから気付けなかったのだろう。
僕は店員の言葉を完全に無視してバックを店内で広げだした。
そして手にしたオルゴール。
――――――
僕はその写真をめくった。
『評価感想お待ちしています。』