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呪い天使 26 『陰謀』

さらにエスカレートする僕たち。


呪い天使 26 『陰謀』



いつもと変わらぬ朝だった。

僕の席には隣のクラスの三日月が堂々と横にいた。

また『計画実行ノート』を開いては二人で薄く笑いあう。


『都宮のお金を利用して遊び、さらに都宮のお金を無くす』

『鈴科の靴をボロボロにして、僕と同じ状況にしてやる』


これらにはすでに赤ペンで“×マーク”がつけられている。

まだまだ黒のボールペンの行は続く。


「・・・よし。今日はこれでよし・・・と。」


ざわざわと人が教室に入ってくる。

時計の長針が真下を指そうとしている。

三日月に じゃぁね、とひとこと声をかけて手を振った後まだ僕はそのノートを凝視した。

秒刻みに細かに動く針は、ついに12の方向を指しだした。

教室を出入りする人が増えている。

僕はその光景をちらっと見た後、すぐに目を下にやった。

いつものチャイムが鳴り、先生が教室に入ってくる。


「はい、学活を始めます。欠席は・・・無しと・・・。では次だが・・・」


ノートに目を奪われていたせいか、学活はすぐに終わった。

そのノートを閉じ、何も入っていない机にしまった。

さて、国語の時間だ。


・・・楽しみだ。


しかし授業が始まる、何分か前に事が起きた。

鈴科が僕の目の前にやって来た。


「俺の国語の教科書を返せよ。」


やはり来たか。

そう思いながらため息をついて、目の色を変えて見せた。


「人を疑うのは良くないんじゃないのかなぁ。」

「今さら何言ってんだよ。お前しかいないだろ?盗むのは。」

「人聞き悪いこと言わないでもらえますか?家に忘れた可能性はないのですか?」


わざと敬語にしてやった。

鈴科の形相がさらにひどくなる。

おいおい、そんなんじゃせっかのくのルックスが台無しだよ。

僕は至って冷静であった。


「俺が家に忘れるはずが無い。」

「その自信はどこから沸いてくるのですか?自尊心高すぎかと思いますが。」

「ふざけんじゃねぇぞ?」


―――――――――――――


いたっっっ・・・・・

思わず苦痛の声が漏れる。

鈴科が僕の顔面を殴りかかった。

なにか変な味がする液体が流れ込んできた。

・・・手も赤く染まってる。

当たり所が悪かったのだろう。

こんなのは生まれて初めてだった。

だが僕は顔は歪んでいても、心の中でそうあざけ笑ってやっていた。

暴力を公の場にして披露しているのだ。

・・・あいつ、人間いかれたな。

痛ぅっ・・・やっぱり痛い・・・・・


気付けば人だかりができている。

全ての人間が僕の周りにいる。

全て。

このクラスの人は全員こちらを向いている。

他クラスからの侵入なんて気づいていないだろう。

予定通りだった。


少し早めに先生がやってきた。

これも予定通り。

先生は叫びながら僕を背に仲介に入ってきた。


「皆さん!席に戻りなさい!誰かは保健の先生を呼んで!」


ほとんどの生徒が自分の席に戻り、先生は鈴科を抑えかかった。

やみくもに体を動かす鈴科も、先生の前では無意味な行動だった。

落ち着いた様子で先生が鈴科に状況を聞き入れる。


「俺の教科書が無いんだ。コイツしかありえない。あの靴もあの漫画も全て・・・全てコイツが・・・」


当然先生は僕がさっき言ってたことと同じことを言う。

鈴科の討論は無力にも朽ちた。

そこでクラスの誰か―――いや、鈴科の席に近い人が・・・トドメをさしてくれた。

このタイミングも完璧だ。

先生が来て一段落、落ち着いてから・・・予定通りだ。



「先生〜?鈴科君の机に国語の教科書入ってますよ〜?」



鈴科が慌てて机に走って向かった。

今までは誰もこの事件に手を出そうとしていなかったのに。

もうクラスは僕の味方だと確信した。

クラスの人気がほとんど無く、浮き者の僕だったからこそ一昔前までは誰も目撃情報を提供してくれなかったのだ。

今では違う。

鈴科の悪行が世間に浸透していっている。

それが例え僕と三日月がつくった偽りの情報だとしても。



「・・・・・・ははっ!ははっっ!伊藤、ばっかじゃねーの!?」



鈴科が陰気に笑い出す。

みんなの目が細くなってるのが分かった。

むしろ怖がっている者さえいた。



「俺に恥をかかせるために?俺に手を振わせるために?

 そんなために殴られるのを覚悟したのか。

 そんなことのために、血ぃ流してんのか?ははっ!」



鈴科の肩に先生の手が寄り添い、廊下のほうへ歩き出した。

もう、鈴科影斗は鈴科影斗ではなくなっていた。

さようならって、心の中で笑ってやった。

そんな僕も保健の先生に背負われながら保健室に向かった。


ざわめいてる中、たった一人、違う行動をする影があった。

僕の机の中にあるノートをじっと見つめていた。

その行動に、僕も誰も気付かなかったという。

そしてその手はノートへと伸び、表紙をめくった。

後にその行動が、僕たちを狂わすことになる。


『都宮のお金を利用して遊び、さらに都宮のお金を無くす』

『鈴科の靴をボロボロにして、僕と同じ状況にしてやる』

『鈴科の机から教科書を取り出し、鈴科が僕の所へ寄って激怒しているときに三日月がこっそり教科書を戻す。』


赤いインクが滲んだ先にある言葉は


『鈴科のアドレスをネットに流す』

『都宮と鈴科の物を無くし続ける』

『そして鈴科―――――』


行はそこで途切れている。



それを見たそいつは、慌てて机の中にしまい、必死に震えを止めていたそうだ。

この行動が後に―――――――

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