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呪い天使 25 『同然』

自分に非がないのに責められる気分はどうだ?


呪い天使25 『同然』



鈴科の机の中には三日月の漫画があった。

確かにこの漫画を先生が来る前に盗もうと企んでいたものに違いないが、鈴科には身の覚えのないもの。

それを茂木先生に見られた鈴科は誤解を解こうと必死になっていた。

もちろんそれをまったく茂木先生は聞き入れようとしない。

体育が終わった後、僕たちが三日月の漫画を鈴科の机に入れて置いたのだ。

もちろん都宮に見せたあの漫画は、ただの情報のネタであってそれは今手元にある。

だから三日月の教室の机には漫画なんて入っていない。

鈴科を陥れるためだけに描かれた漫画が鈴科の机に入ってるだけ。

その漫画を帰りに郵便局に出した。

夢が叶うことを、心から臨んだ。


『悪に染まる天使』


そんな題名の少女漫画を出した。


次の日の放課後だった。

鈴科は授業に参加していたものの、ずっと下を向いていた。

生徒会室にも行かず、仕事に手をつけなかった。

噂はクラス中に広がり、いつのまにか鈴科のまわりに人は消えていた。

都宮の机には誰もいなかった。

都宮さえもいない。

下駄箱を見たが、来ている様子がなかった。


そんな様子を、僕と三日月は心から喜んでいた。

何度かハイタッチをしてみたりした。

今日も笑いが耐えない。

お楽しみはここからで、やっぱりいつもの放課後だった。


下駄箱で鈴科が青ざめる。

偶然そこを通りかかる生徒は驚いた。

全く一緒であった。


全く一緒の光景だった。

鈴科の靴は履けないくらいボロボロになっていて、そばにはあまり見ないようなナイフが置いてあったからだ。


職員室に走り出す生徒が現われたが、鈴科は止めるに止められていなかった。

唖然として下駄箱の前で立ち尽くす鈴科の口が静止しているのが分かった。

僕たちは野次馬に混ざって一番後ろの列に並んで、それを観覧した。

口元をつりあげて、僕と三日月は手をつないだ。

二人とも汗をかいていたが、それを感じさせなかった。


先生が小走りでくる。


「帰りなさい、帰りなさい。」


定番の言葉で生徒を帰らそうとする。

僕たちも、すんなり帰ることができた。

でも僕たちは帰った振りをして、植木鉢の後ろでひっそり観覧することになった。

激しい心臓の鼓動が止まらない。


「先生っ、違うんです。」


鈴科のようやくでた一言であった。

もちろん相手にされない。


「どうせ君が・・・自作自演したんだろ?昨日の後にまたこれだ。信じられるはずが無い。」


この学校は自作自演が好きだなぁ。


「全部、違うんです・・・昨日も・・・今日の靴も・・・」

「ふざけるな。そうやって伊藤を苦しめたのか。生徒会長を変えなくてはな。」

「そんな・・・違うんです・・本当に・・・違うんです・・・」


さすがに鈴科は泣くにまでいたらなかった。

だが当初の強い声と権限、それらを微塵も感じさせてくれないそのしゃべりは、

鈴科を別人じゃないかと疑わせるほどのものであった。

「違うんです」と繰り返しつづけても先生は疑い続ける。

鈴科はとうとう逃げ出した。

また先生が

「待て」という。

そのあと先生はボロボロになった靴を軍手をつけた手で持ち、職員室に運んだ。

僕たちも同時に帰った。



大丈夫、ちゃんと指紋はふきとったから。



僕は三日月の家にお邪魔した。


「初めてだね・・・。」

「あぁ、うん。」


部屋にはテーブルが出され、ノートを取り出した。

そして始めに二人で握る赤のボールペン。

また“×マーク”をつける。


『鈴科の靴をボロボロにして、僕と同じ状況にしてやる』


×



といっても鈴科を廊下で殴る、という無茶はしないことにしていた。

その後黒いボールペンを僕は握り、必死になって書きつづけた。

数分経ち、ノートは汗で滲んだ黒い文字で埋め尽くされた。


「・・・・・これで、いいんじゃないのかな?」

「うん。すっごくいいと思う。」



また二人は笑い合った。

同じ事を何回も話した。

でもそれだけで面白く感じた。


そしてたった一言がこぼれる。




「楽しいね。」

「うん。」



『物語は折り返し地点にたどり着いたようです。これからもどうぞよろしくお願いします。』

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