呪い天使 24 『信否』
まずは都宮に仕返すことができた・・・
呪い天使24 『信否』
僕と三日月は都宮を突き落とすため、都宮の金を利用しようとした。
ある日だった。
「お父さんに・・・・これ以上は使うなって・・・お小遣い止められちゃって・・・」
それは僕たちが生唾を飲んで待ち焦がれていた言葉だった。
笑いが絶えられなくなった。
隠す必要もなくなった僕たちはその結果に満足して甲高く笑った。
「金を返せ」と吠え続ける都宮を背に、僕らは笑いながら教室を出て行った。
「長い付き合いだったね。」
「まぁそこそこ楽しめたんじゃない?」
「ね。いつもは全然あんなにお金つかえないもんね。」
「そう・・・。元をたどれば都宮が悪いんだ。」
「うんうん。気にすること無いよね。都宮が自分で払ったんだから。」
「うん。・・・・・・そして・・・鈴科も・・・・」
「もう、準備はできてるんでしょ?」
「あぁ。できてる。」
すでに外に出ていた。ふとあちこちで下校する生徒が見える。
都宮が今どうしてるのかを考えると心がウズウズして歩きがスキップになっていた。
都宮と僕はその話ばかりした。
僕と都宮は昔の暖かな笑いから、黒い笑いになっていた。
それを友情と確かめ合ってしまった。
最初に三日月と一緒に帰ったときの笑いと今の笑いの変化に僕たちは知る余地もなく、笑うことをやめなかった。
外でバックから表紙に『計画実行ノート』と書かれているノートを一冊出した。
手には赤いペン。
とうとうこの日がやってきた。
僕と三日月はノートを見た後向き合って笑った。
わざとらしくペンを二人で持ってみた。
馬鹿らしい行動だったが僕たちは今有頂点にいるからそんなことは気にしない。
『都宮のお金を利用して遊び、さらに都宮のお金を無くす』
×
そろそろ辺りは薄っすら暗くなってきた。
空を見上げれば電柱に乗っている鳥が影となって見える。
ハトなのかスズメなのかそれともカラスなのか、そんなのはどうでもよかった。
でも目に映った鳥を見つめてしばらく立ち尽くしていた。
それらが飛び立つまで僕たちはそこにいた。
そして手元にある時計を確認した後、向いていた方向と真逆の方向に歩き出した。
学校が見える。
上履きしか見えない下駄箱から靴を取り出した。
そしてまた二人で歩き出した。
誰もいない、教室の方へ。
都宮はというと、学校の教室の中にいた。
そこにもう一人、鈴科がいた。
「鈴科っっっ・・・・やられた・・・・くそっっっ!」
「・・・あいつらも、動き出してたか。」
「何・・・それ?」
「まぁ・・・何となくわかってたんだよ。じゃぁ、いつも通りネタとかあるか?」
「えぇ・・・。この漫画・・・。これは賞とりそうな力作だよ・・・」
「今さら罪悪感に襲われたか?」
「まさか。破り甲斐がありそうだね・・・って。」
「じゃぁ先生いるか見張っててくれ。」
「分かった。」
都宮が駆け足で廊下に出て行った。
恐る恐る都宮は階段を調べにきた。
・・・――――――っっっっっ!!!!!
僕たちが都宮を捕まえた。
叫ぼうとするその口を押さえつけ、都宮が咳をしたところで離してやった。
「ふざけるなよ・・・伊藤・・・・」
「ふざけてるのはどっちだ・・・?」
「何よ・・・ふざけるなっっっ!!!」
三日月が都宮の口を再度ふさいだ。
そして伊藤が都宮の目の前にこぶしを作って見せた。
そしてごめんね、と一言言って笑うと、都宮は大きく開いた目を戻し、動きを止めた。
「予想通りに事がすすむな・・・。」
「うん・・・。あと・・・ちょっと・・・・・・・・。」
コツ・・・コツ・・・コツ・・・・・・
どこからか音が聞こえてくる。
反対側の階段だ。
今の時間、いるのはおそらく僕と三日月と都宮と鈴科だけ・・・。
鈴科はおそらくその音は都宮だと思うだろう。
鈴科は今もずっと三日月の机をあさっているだろう。
あと少し・・・・あと少し・・・・・・・。
コツ・・・コツ・・・コツ・・・・・・
バサバサと机をあさる鈴科の目の前に、茂木先生がやって来た。
たった今、会議が終了したのだ。
鈴科は驚きを隠せずにいた。
茂木先生は落ち着いた威厳のある顔に変えていたが怒りを隠しきれないでいた。
そんな光景を僕たちは階段の影から見張っていた。
都宮は、目線だけ向けていて、まぶたは重くのしかかっていた。
「鈴科君・・・・・・・。まさか・・・いや・・・やはり君だったとは・・・
・・・信じられない・・・・。騙していたのか・・・
伊藤君のことも・・・全て・・・・・・・。」
「いえ、違いますよ、先生。三日月さんに悪戯されたと噂を聞いたので。」
「なんだと?」
「今日風の噂で聞いたんです。三日月さんが僕の私物を取ってるという・・・」
「まさか・・・。何が無いんだね?」
「数学2のノートです。」
「じゃぁ私が三日月さんの机を調べる。君は自分の机をもう一度・・・」
無論デタラメだ。
それに反応した三日月の顔が引きつっているのが分かった。
鈴科は自分の机を調べるふりをした。
茂木先生は念入りに三日月の机を探していたが、何も見つからなかった。
無論、鈴科の数学2のノートは無ければ、三日月の漫画も見つからなかった。
バダバダッ
鈴科が手を滑らせ奇麗に整頓された机の中身を全て落としてしまった。
茂木先生はすかさず鈴科に寄り添って机に戻そうとした。
膝を床につけながらゴミのように重なるノートを拾い上げた。
手際よくノートの大きさを揃え一冊ずつノートを手に重ねた。
手を伸ばしながらノートを一冊手に持ち上げたときだった。
茂木先生は手にあるノートの山を捨てた。
ノートはページがめくれて羽ばたきながら落ちていった。
一冊一冊が床にたたきつけられ、ノートはさらに散らかった。
茂木先生はすぐにノートの下にあったものに手を伸ばす。
鈴科の湿った手と重なり合いそうになる。
それを先に取った茂木先生は、鈴科を睨みつけた。
「・・・・・・・これは三日月さんの漫画ですよね・・・?」
鈴科の机の中に自分がまだ盗ってないものが入っているからだ。
鈴科は言葉を失った。
確かに先生が来る前、この漫画を三日月の机から探し出そうとしていたはずだ。
だがそれは三日月の机ではなく自分の机に入っている。
訳が分からなかった。
鈴科の口はかすかに動いていたが音となって伝わらなかった。
やっとでる声も、内容は伝わらないほどであった。
最後の最後に出た『違います』は全く意味の無いものだった。
「・・・生徒会の君が・・・やはり伊藤君を・・・ 最初の上履きも・・・。全部・・・君が・・・・・・・」
「違うんだっ、それは違うっっっ俺じゃないっっっ!」
「・・・・・・・・調子に乗るなよ、鈴科。これは犯罪だ。」
「違うっ!これは伊藤の罠だっ!騙されるんじゃねーよ。」
「・・・調子に乗るなといったのだが聞こえなかったのか?君を信用していた我々が愚かだった。今日校長に告げよう。」
「ふざけるなっ!なんで信じねーんだよ!クソがっ!」
茂木先生はその太い腕で鈴科の首元を掴んだ。
鈴科は必死に目で抵抗した。
茂木先生の手が鈴科を突き飛ばした。
大きな音とともに鈴科は倒れこみ、教室に響き渡る。
「君はそう言う人だったんだ・・・。・・・見損なった。」
「・・・信じろよ・・・・。ざけんじゃねぇよ・・・」
茂木先生は僕たちの目の前を通り過ぎ、職員室に戻った。
相変らずどこを見てるのかわからない都宮は、その場に座り込んだ。
しばらく僕たちはその場に立ち尽くしたが、物音一つとせず、廊下の光は消えていった。
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